院長インタビュー

患者さんの立場に立った医療を提供したい-福井県済生会病院の取り組み

患者さんの立場に立った医療を提供したい-福井県済生会病院の取り組み
登谷 大修 先生

社会福祉法人恩賜財団済生会支部 福井県済生会支部長

登谷 大修 先生

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この記事の最終更新は2018年05月31日です。

福井県済生会病院は、1941年に恩賜財団済生会福井診療所として開設されました。1950年に50床に増床し、現在の名称に改称。現在は460床、24診療科と12のセンターを構えます。2017年1月には回復期病棟(地域包括ケア病棟)を開設し、急性期から回復期まで幅広く医療を展開しています。

「患者さんの立場で考える」ことを理念として掲げる福井県済生会病院では、現在どのような取り組みが行われているのでしょうか。院長である登谷 大修先生にお話を伺いました。 

画像提供:福井県済生会病院

福井県済生会病院は、全国に約100か所ある社会福祉法人 恩賜財団済生会の病院のひとつです。

当院ではさまざまな医療を取りそろえており、全身CTをいち早く導入した実績もあります。そのため、地域の医療機関から検査の依頼をされることが多く、それが病診連携を始めるきっかけとなりました。

2004年には地域医療支援病院に指定され、多くの医療機関と連携しながら、地域住民のみなさまの健康を支えています。

地域連携として、当院では以下の取り組みを行っています。

  • 二人主治医制
  • 福井方式
  • 遠隔画像診断サービス
  • 顔の見えるスタッフ連携

二人主治医制では、かかりつけ医と済生会の医師が主治医となり、互いに連携しながら継続的に治療を行います。普段の健康管理等はかかりつけ医に相談していただき、入院や治療などが必要になった場合は、当院を受診していただきます。この連携により、患者さんが不必要な検査や投薬を受けずに済みます。

また福井方式では、登録いただいた地域の開業医が当院の手術室や機器を用いて、手術・お産を行っています。当院の最先端の機器を用い、かかりつけ医に治療をしてもらうことは、患者さんの安心につながります。さらに、地域の開業医と顔の見えるスタッフ連携を深めています。勉強会・講演会の実施や連携パスの作成、当院の認定看護師の派遣などで、専門的な知識の習得のお手伝いをしています。

当院の最大の強みはがん診療です。診療科を超えて各分野の専門職が協力して治療を行う集学的がん診療センターを構え、精度の高い放射線治療機器であるIMRT(トモセラピー)も導入しています。緩和ケアや在宅医療も行っており、患者さんをトータルでサポートする体制を整えています。

画像提供:福井県済生会病院

疾患の治療以外では、仕事の継続・再就職の支援、がんの親を持つお子さんのサポート、患者さん同士で支え合うピアサポートの会の支援なども積極的に行っています。就労に関しては、がんになったことで会社を辞めないで済むような支援や、また再就職に向けた相談対応や支援を、ハローワーク福井や福井産業保健総合支援センターと協力して進めています。

がん哲学外来
画像提供:福井県済生会病院

特徴的なのが、がん哲学外来を行っていることです。これは順天堂大学教授の樋野興夫先生が提唱されたもので、専門家が患者さん本人やご家族と対話します。がんであったとしても、前向きに人生を送れるようにサポートいたします。

我々の目指すがん診療は、「つらくないがん診療」です。患者さんの体と心に、できるだけ負担をかけないように、さまざまな面から支援を行い、「がんになったら最初に行く病院」を目指しています。

画像提供:福井県済生会病院

当院では、医療者と患者さんの情報の認識のずれを減らし、患者さんが少しでも安心して生活できるよう、専門の相談窓口を設置しています。「よろず相談外来」では、院内でのあらゆる疑問や相談をお受けしています。医療ソーシャルワーカーが常駐し、診療についての相談、生活費・医療費などのお金の心配事、訪問看護・介護保険サービス等の制度の紹介など、苦情も含めどのような相談でも一括してお聞きしています。

そのほか、当院には以下の相談窓口を設置しています。

  • 入退院・検査説明センター
  • がん相談支援センター
  • 肝疾患相談支援室

国立がん研究センターの認定を受けたがん相談支援センターは、集学的がん診療センター内にありますので、がんに関してのご相談がある場合は足を運んでいただければと思います。また、肝疾患相談支援室では、福井県唯一の「肝疾患診療連携拠点病院」として、肝疾患に関するあらゆるご相談をお受けしています。相談内容によっては、日本肝臓学会認定の肝臓専門医や専門スタッフなどが対応いたします。

画像提供:福井県済生会病院

当院では、早い段階から、「疾患・症状別外来」という体制をとっています。具体的には、脳神経センター、内科・外科総合外来、生活習慣病外来からなっています。

「お腹が痛い」という症状は、患者さんの立場から考えると、果たしてどの臓器に原因があるのか判断ができないことがあります。その場合、ご自身で内科か外科かなど診療科を選ぶことは難しく、結果的に患者さんを迷わせてしまうことになります。このようなことを防ぐために、何かあれば「内科・外科総合外来」を受診してもらう体制をとっています。

また、この体制は医師にとってもメリットがあります。たとえば、脳神経センターでは脳神経内科の医師と脳神経外科の医師が隣合わせた診察室で診察を行っています。内科の担当医一人では判断が難しい場合などは、外科の医師と連携して、患者さんの症状に対応することが可能になります。

救急医療というと、救急車での搬送というイメージがあると思います。しかし、現在当院が力を入れているのは、患者さんご自身に救急外来へお越しいただくウォークイン型の救急医療です。療養型病院を退院し、ご自宅で療養している患者さんが頼れる救急です。

福井県は3世代同居の家庭が多く、また自家用車の保有率も高いため、何かあった際にご家族が患者さんを連れて来院されることが多いです。「救急車を呼ぶほどじゃないけど心配」、というときにお越しいただくことも多く、当院の救急患者さんの数は増加傾向にあります。

画像提供:福井県済生会病院

当院は、予防医療にも力を入れています。地域の高齢化が進み、「健康に長生きしたい」という意識を持つ方が多くなり、当院の健診センターの受検者数も増えてきました。

きめ細かなサポートを行うことで、地域の健康長寿に寄与できればと考えています。

画像提供:福井県済生会病院

当院は、女性を総合的に診療する「女性診療センター」を設けています。以前は、女性の患者さんはがん患者さんもお産の方も、産婦人科の外来で一緒に受診されていました。がんで不安を抱える方と、新しい命を喜ぶ方、異なった感情の方が同じ待合室にいるのでは、患者さんが安心して医療を受けられないのではないかと考えました。そこで、まずは産科と婦人科を別にしました。

また、女性の患者さんにとっては泌尿器科や肛門科など、男性と一緒に受診するには抵抗がある診療科もあります。そこで、泌尿器科も含め、乳腺外科やメンタルヘルスケアなど、女性に関する診療科をすべてワンフロアに集めた女性診療センターを開設しました。

職員は、医師以外サポートスタッフもすべて女性です。特定の病気だけでなく、女性の全身を診る外来として機能しています。

当院では、性暴力救済センター・ふくい「ひなぎく」を2014年から開設しています。通常、性暴力などの被害者の方には警察や行政が関わることが多いのですが、それでは心身の問題をすべて解決できません。

そこで福井県では、当院が被害者の方に対する最初の窓口となり、まず産婦人科の医師や医療ソーシャルワーカーなどが対応します。心や体に関するご相談を伺い、そこから行政や法律関係の専門家につなぐというシステムになっています。

私は「医療はチームワークだ」と考えています。仲間を大切にすれば、自分が大切にされます。そして、チームワークが円滑になれば、患者さんにとってもよい医療ができるようになります。

また、「患者さんの立場で考えるように」とよくいいますが、私はそれが自分自身の幸せにもつながると思っています。人に何かをしてさしあげるということは、人間の幸せのなかで基本となるものだと考えているためです。「自分が患者だとしたら、どう感じるか」、「自分のためだと思って、患者さんのためになることをしなさい」ということは、職員には常に伝えています。職員をはじめ医療に携わる方には、ぜひ患者さんの立場に立ち、患者さんに寄り添う医療を提供してほしいと思っています。

当院が1番に提供したいと思っているものは、「安心」です。日本で1番優しい病院になり、何かあったら相談してもらえる病院で在りたいと思います。

患者さんが抱えているお悩みは、病気による痛みやつらさだけではありません。社会的な問題やご家族に対しての思いなど、その要因はさまざまです。当院は、そのような悩みをすべて受け入れる病院を目指したいと思います。

福井県済生会病院があるからなんとかなる。そして、福井県済生会病院があってよかった、と思ってもらえるように努めてまいります。

受診について相談する
  • 社会福祉法人恩賜財団済生会支部 福井県済生会支部長

    登谷 大修 先生

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