院長インタビュー

地域医療と教育現場─ふたつの柱で地域に貢献する宮崎市立田野病院

地域医療と教育現場─ふたつの柱で地域に貢献する宮崎市立田野病院
近藤 千博 先生

宮崎大学医学部附属病院 コミュニティ・メディカルセンター 教授、宮崎市立田野病院 院長

近藤 千博 先生

この記事の最終更新は2018年06月21日です。

宮崎市立田野病院は、宮崎県宮崎市田野町で医療提供に尽力しています。もともとは田野町の公立病院だった同院は、平成の大合併で田野町が宮崎市と合併したことで宮崎市の公立病院となっています。また、指定管理者制度では宮崎大学が指定され、公立病院でありながら大学病院の管理する施設であるという特徴があります。今回は同院が行っている学生教育と地域医療について、宮崎市立田野病院 院長 近藤千博(こんどうかずひろ)先生にお話を伺いました。

病院外観(宮崎市立田野病院よりご提供)

宮崎市立田野病院は、1948年4月に田野村直営診療所として開設し、地域への医療提供に尽力しています。その後、診療科の新規開設、病床数の増加を行ってきました。1991年4月には、当院の隣に田野町介護老人保健施設「さざんか苑」(現・宮崎市介護老人保健施設)を開設し、病院と介護老人保健施設での連携を行いながら、地域医療の発展に力をいれています。

開院から一貫して公立病院として、地域のみなさまが安心して地域医療を受けられるように、日々努力を重ねています。そして現在は、2006年に行われた宮崎市と田野町の合併にともない、「宮崎市立田野病院」の名称となっています。

カンファレンスの様子(宮崎市立田野病院よりご提供)

2015年4月より、指定管理者制度による宮崎大学の管理・運営のもと病院運営が開始されました。指定管理者制度とは、地方公共団体が設置した公の施設の管理や運営をその地方公共団体が指定した法人や団体が管理、運営を行う制度です。当院は、その指定管理者に宮崎大学が選ばれ、公立病院でありながら宮崎大学の附属病院の一部となっています。

そのため、当院の職員はみな宮崎大学に勤めていた職員で構成されています。このことがきっかけで、宮崎大学医学部附属病院にコミュニティ・メディカルセンターが発足し、当院がコミュニティ・メディカルセンターとして地域医療の提供を引き続き行うこととなりました。

宮崎大学が運営・管理を行うこととなり、当院の在り方にも変化がありました。もちろん、地域医療に貢献することは変わりありません。そのうえで、地域の病院としての側面を持ちながら、宮崎大学医学部に在籍する学生の教育の場にもなりました。以下の項目では、当院が行っている教育現場としての取り組みと地域医療のお話をいたします。

学生実習─救急対応(宮崎市立田野病院よりご提供)

当院は宮崎大学医学部の地域医療の実習の場として学生の受け入れを行っています。1週間の実習期間では、問診や採血、訪問診療を現役の医師や看護師とともに行い、地域医療の現場がどのようなものなのかを体験してもらいます。

問診や採血は患者さんの同意のもと実施していますし、医師や看護師がそばで指導しながら行います。実際の地域医療の現場を学生のうちから体験することで、地域医療へ関心を持ってもらい次代の地域医療を担っていく医師を目指すひとつの経験になればよいと思います。

学生実習─外来診療(宮崎市立田野病院よりご提供)

また、地域医療の担い手や患者さんを総合的に診療することができる医師の存在は、今後とても重要になってくることが考えられます。特に、高齢化が進む昨今では、医師の得意分野での診療以外に総合的に診療するちからが重要です。

 

ご高齢の患者さんは救急搬送で伝えられた外傷や疾患以外にも複数の疾患を持っている可能性もあります。さらに、退院後に施設への入所や訪問診療を受けることになった場合にも患者さんのさまざまな状態を考慮して診療する必要があると思います。そのような場合にもしっかり対応していける医師を目指すためのひとつのきっかけになればよいと考えています。

学生実習─採血
学生実習─採血(宮崎市立田野病院よりご提供)

医学部生だけでなく、宮崎大学医学部の看護学科の学生の実習の受け入れも行っています。また、近隣の看護学校の学生も実習に来ます。

医療従事者の育成機関の一部として、今後も学生実習を実施していきます。

当院の病床数は42床であり、そのうちの33床が地域包括ケア病床として稼働しています。そのため、回復期医療の提供が中心になっています。地域の医療機関と連携を取り、急性期医療が終わった患者さんのリハビリテーションなどの提供を行っています。たとえば、宮崎大学医学部附属病院で急性期医療を受けた患者さんが当院に転院して、リハビリテーションを行い、社会復帰を目指しています。

また、入院や通院でのリハビリテーションだけでなく、在宅診療や訪問看護なども行っています。

2006年4月より在宅支援チームを設置し、在宅支援の強化を図っています。訪問看護や訪問介護など、患者さんのご自宅へ医療従事者が訪問するサービスは発達してきています。ご家族は働きに出なくてはならず、1日中介護をすることも難しい場合が多々あります。そういったときには、ぜひ在宅支援を積極的に活用していただきたいと思います。当院も在宅支援には積極的に力を入れており、地域の医療機関との連携も密接にしていますので、お気軽にご相談ください。

また、当院は24時間往診に対応できる体制を整えています。在宅医療を受けている患者さんが夜間などに具合が悪くなった場合でも、オンコール医師がいますので、安心して在宅支援サービスを受けてほしいと思います。

当院は地域に根差した地域医療を積極的に行っています。地域医療は、今後の日本においてとても重要になってくる分野だと思います。高齢化が進む近年では、ご高齢の方の診療も多くなることが予想されます。そのようなときに、自分の得意とする分野だけの診療ではなく、患者さんの症状を総合的に診療できる医師が地域医療を支えていけるのだと思います。もちろん得意な分野をみつけて、努力していくことも大切です。

宮崎大学医学部附属病院の一部でもあるため、大学での研究や診療から地域医療や介護、看取りまで幅広い医学領域を学び、実践できる環境でもあります。

ぜひ、地域医療を支えていってほしいと思います。

当院は地域に根差した医療の提供のほかに、将来の医療従事者の教育現場でもあります。学生たちが地域医療の実習を行えるのは、地域のみなさまに多大なご協力をしていただいているからです。スタッフ一同、地域のみなさまのご協力にとても感謝しています。

今後も地域のみなさまに愛され、頼りにされる病院を目指していきます。

また、地域のみなさまの健康維持に貢献できるように、特定健診の積極的な受診につながるような講演や広報誌を用いた啓蒙活動を行っています。

地域のみなさまに医療を提供しながら、健康維持にも尽力し、地域のみなさまに愛されるよう一生懸命がんばりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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