院長インタビュー

地域に必要とされる医療を提供したい-市立敦賀病院の取り組み

地域に必要とされる医療を提供したい-市立敦賀病院の取り組み
米島 學 先生

敦賀市病院 事業管理者

米島 學 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年07月04日です。

市立敦賀病院は、1882年に福井県敦賀市に県立敦賀病院として開設されました。1955年に市立病院となり、現在に至ります。

もともとは急性期医療や感染症医療が中心の病院でしたが、現在は時代の変化に合わせて回復期まで幅広い医療を提供しています。

開設から130年以上の歴史を持つ市立敦賀病院では、現在どのような取り組みを行なっているのでしょうか。院長である米島 學先生にお話を伺いました。

​市立敦賀病院ご提供

市立敦賀病院は、敦賀市における地域医療の中核となる病院です。地域で人口約8万人を抱える当病院は、福井市内までは1時間ほどかかるため、市内の救急搬送の約7割は当院に運ばれます。

また、地域の開業医の数も少ないため、一般的な疾患にはすべて対応できるように病床332床・診療科21科を構え、さらには訪問診療や訪問看護などにも注力しています。

私が当院の職員に常に呼びかけていることは、「この地域で唯一の中核病院だから、来院される患者さんをすべてみよう。」ということです。つまり、地域が必要としている医療を当院が提供しよう、と話しています。

高齢化社会を迎え、この地域でも回復期医療へのニーズが高まっています。それを踏まえて、2014年10月に地域包括ケア病棟を開設しました。急性期病棟は2週間ほどの在院期間であるため、特にご高齢の患者さんに喜ばれています。それに加え、地域包括ケアシステムの確立へ向けて、訪問診療や訪問看護にも注力しています。

敦賀市のように病院が少ない地域では、さまざまなことに取り組む必要があると考えています。一般的な疾患は、ほぼすべて診療できること。それが当院の強みだと思っています。

当院では、志の高い職員が多いと感じています。先にも述べた通り、敦賀市の最後の砦となる病院ですので、地域のことや患者さんのことをよく考えてくれる職員が多いように思います。

2018年4月時点で8名の日本看護協会認定の認定看護師が在籍しております。現在は、訪問看護の認定看護師を養成中です。特定看護師も3月に誕生し、非常に頼もしく感じています。

さらに、さまざまなチーム医療を行なっています。緩和ケアチームでは、医師や看護師、管理栄養士、薬剤師、リハビリテーションスタッフなどが連携して2週間に一度、対象の患者さんのいる病棟を回っています。

各病棟には緩和ケアの責任者であるリンクナースがおり、緩和ケアチームと情報を共有しています。患者さんとご家族の同意が得られれば、退院後の在宅ケアについてもお話をしています。

退院カンファレンスのご様子 市立敦賀病院ご提供

そのほか、2017年に活動を始めた認知症ケアチームなどもあります。認知症ケアチーム設立にあたり、感染対策チームも同様の活動を行っています。看護師のなかから希望者を募って、日本看護協会における認知症認定看護師の資格を取得してもらいました。認知症の患者さんがいらしたときにはどうしたらいいのか、専門知識のあるスタッフが各病棟を回ってアドバイスをしています。

経営という観点では、4年前に各部署の代表者を集め、「医療の質・経営改善推進室」という部署をつくりました。患者さんから頼られる病院とは何か、職員が働きやすい職場についてなど、知恵を出し合い、よりよい病院となるよう話し合いを行っています。

また、CS・ES(患者満足・職員満足)委員会の有志が部会を立ち上げ、管理職や医師を含めた他職種でのワールドカフェやグループワークのイベントを開催しています。そして新人研修でもワールドカフェや、院長とのランチミーティングを企画し、開催しています。結果的に、良好なコミュニケーションを築くことになり、ESがあってこそCSにつながると考えています。

ワールドカフェのご様子 市立敦賀病院ご提供
院長とのランチミーティングのご様子 市立敦賀病院ご提供

敦賀市には開業医が少ないため、当院が地域に赴き、訪問診療を始めており、院外での活動も積極的に行なっています。

公民館などで開催する出前講座も多く行なっており、医師以外の医療従事者も講師として出向いています。そのほか年に一度、市民公開講座や病院フェスタを行なっています。病院フェスタでは、医師による健康相談のブースを開いたり、血圧や骨密度を測るブースを構えたりして、市民のみなさまにご参加いただいています。

当院には、敦賀市内の救急患者さんの約7割が搬送されます。患者さんのなかには、重症の方も多くみられます。そういった急性期の患者さんを診て早く一人前になりたいと思っている若手医師は多いと思います。しかし、彼らには「決して焦ってはいけない。」と伝えています。

技術を身につけるのは、半年や1年遅れても構いません。それより大切なことは、医師としての根本的な考え方を身につけて、根を張った医療を行うことです。

ベテランの医師に追いつこうとしても、経験の差もあるため、難しいのは当然です。ベテランの医師になくて若手の医師にあるのは患者さんと向かいあう時間です。まずは患者さんのところに伺い、同じ目線で話をしてください。そして、ときには患者さんに触れてほしいと思います。特にご高齢の患者さんは、先生に手を取って接してもらうことが治療だと思う方もいらっしゃいます。焦らず、慌てずに、患者さんに向き合い、よい医療を提供してください。

当院における今後の展望は、現在と同じ「地域に必要とされる医療を行う病院である」の一点に尽きます。

これまでも、急性期病棟の一部を地域包括ケア病棟に変えたり、地域の在宅医療の不足を補うために訪問診療や訪問看護に注力しています。敦賀市における地域包括ケアシステムの構築に向けて今後さらに積極的に関与していきます。

各部署もそれぞれ、地域に必要な医療について常に考えながら医療の提供に取り組んでいます。当院は今後も地域医療に貢献できるよう、スタッフ一同努力してまいります。

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