院長インタビュー

福島の高度医療・救急医療を担う一般財団法人太田綜合病院 附属 太田西ノ内病院

福島の高度医療・救急医療を担う一般財団法人太田綜合病院 附属 太田西ノ内病院
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この記事の最終更新は2018年01月26日です。

福島県郡山市にある一般財団法人太田綜合病院 附属 太田西ノ内病院は、福島県中・県南地区の高度急性期医療を担う総合病院であり、救命救急センターでは年間5,300件以上の救急搬送を受け入れています。

地域がん診療連携拠点病院にも指定されており、肺がん胃がん大腸がん、肝臓がん、血液悪性腫瘍をはじめとした悪性疾患の診療に携わってきました。また、新生児集中治療室を有する地域周産期母子医療センターとして、2016年度は約700件以上の分娩を扱いました。37科の診療科を展開しており、専門医の先生方が幅広くそろっている同院では、横の連携を重視したチーム医療を実践しています。

120年以上にわたり地域密着の医療を提供している一般財団法人太田綜合病院附属 太田西ノ内病院の取り組みについて、病院長の新保卓郎先生にお話を伺いました。

写真提供:太田綜合病院附属太田西ノ内病院

一般財団法人太田綜合病院は、1895年に初代院長 太田三郎が、郡山市中町に太田医院を開設したのが始まりです。太田綜合病院の附属病院の一つである当院は、1975年にいまの西ノ内の地で診療を開始し、当初は、内科系・精神科の小規模な病院でした。

1989年に附属太田記念病院の外科系診療科および救命救急センターなどを移設増築し、高機能な総合病院にリニューアルしました。その後、救急部門の拡充をはじめ、循環器・呼吸器・血液疾患分野のセンター化や臨床研修病院・災害拠点病院としての設備拡充を図りました。さらに2013年に内科系外来スペースを広くし、ICUや周産期部門の拡充整備をした6号館をオープンし、みなさまからのさまざまなニーズに応えられるよう、病院機能を拡大してまいりました。

現在、一般病床1,036床、精神科50床、合計1,086床を有する非常に大きな病院です。職員数は医師155名、看護師856名を含む、全部で1,666名の職員がおります(2017年4月1日現在)。

この福島の地で長い歴史のある当院ですので、親子2代にわたって当院の職員という方もいらっしゃいます。

1981年に民間病院としては国内で初めて設置された救命救急センターは、福島県中・県南地区をカバーし、県人口の3分の1ほどにあたる約70万人が対象人口です。第3次救急医療施設として、集中治療室(ICU)10床、救急治療室(HCU)30床を備え、24時間体制で救急医療にあたっています。2016年度の救急患者数は20,948名で、救急車受け入れ台数は5,175件です。集中治療室(ICU)と救急治療室(HCU)の利用者数は7,410名で、1日あたり20名以上の患者さんが利用されていることになります。救急搬送されて来られる患者さんの疾患はさまざまです。

当センターは、ドクターカーを導入し、ここ数年の間は、年間約180回程度緊急出動しています。救急隊・消防本部の要請により、重篤な症状の患者さんのところに医師・看護師が駆け付け、迅速な高度医療を提供することにより、患者さんの救命や後遺症の軽減に大きく貢献しています。

当院のドクターカーは消防署の救急車に比べて大型の車両になっています。それは、大地震などの災害が起きたときに緊急医療援助のために被災地に行って活動することを想定しているからです。

被災地では、自己完結型の医療援助が原則です。医薬品のみならず、自分たちの食料や衣料品、寝袋なども自ら持参し、時には車中泊しながら医療提供できるような装備を備えています。これまでに、熊本地震、中越沖地震、阪神淡路大震災などで医療救護活動を行いました。

写真提供:太田綜合病院附属太田西ノ内病院

当院は37科の診療科と14のセンターを設置し、それぞれにおいて専門的な医療を提供しています。当院のセンターは、「センターシステム」を採用することで、多職種によるチーム医療を可能にし、また疾患に対してさまざまな角度からアプローチができるようにしています。

たとえば、消化器センターでは、消化器内科と消化器外科が互いに協力し合い、消化器疾患(食道がん胃がん大腸がん)や肝胆膵疾患(肝がん、胆道がん、膵がん、膵のう胞性腫瘍、胆石症など)を、診断から治療までシームレスに行うことを重視しています。

また、循環器センターでは、循環器内科医と心臓血管外科医がチームを編成し、心臓病(虚血性心疾患不整脈心不全等)や大血管(動脈解離、動脈瘤等)の病気の検査・診断から治療・手術まで一貫して行っています。

各センターにおいて、内科治療や外科治療といった垣根をなくし、患者さんが納得できる治療法を選択できるよう心がけています。2016年度の一日あたりの平均患者数は、入院約700名、外来約1,500名でした。これからも、患者さん一人ひとりに向き合い、地域のみなさまから信頼される病院を目指したいと思っています。

当院は、2006年から地域がん診療連携拠点病院に指定されています。肺がん胃がん大腸がん、肝臓がん、血液悪性腫瘍をはじめとしたさまざまな種類の悪性疾患にも携わってきました。手術(外科療法)・抗がん剤を使う化学療法・放射線療法などを組み合わせて行う集学的治療と、痛みや苦しみを和らげる緩和ケアの2軸による診療体制をとっております。

当院では、高難易度の手術をはじめ、専門医を中心にチームワークによる手術を行い、全力で患者さんの治療にあたっています。また、内視鏡手術を導入することで、できるかぎり傷を小さくして、身体への負担軽減を目指しています。また、知識や経験に基づいた多数の外科治療を通して、若手外科医の育成にも積極的に取り組んでいます。

写真提供:太田綜合病院附属太田西ノ内病院

より高度ながん治療が行えるよう、2018年3月の稼働を目指し、腫瘍集学治療センターが新しくなります。放射線治療装置(リニアック)は最新のもの(TrueBeamSTX)を、新しい放射線治療棟にはバーチャルスカイライトを導入しました。天井に設置されているモニターに本物さながらの空の眺めを映し出し、快適さや心の安定、そして活力などのリラクゼーションが期待できます。

また、通院患者さん用の回復室の設置や、車いすでも利用しやすいトイレや水飲み場の設置、待合室・廊下を広くするなど、患者さんにより優しい施設になります。

緩和ケアとは、がんなどの病気に罹患されている患者さんやご家族の身体的および精神的つらさを緩和する医療です。患者さんの生命やQOL(生活の質)を大切にして、少しでも自分らしい日々を送れるように、患者さんとご家族を支援します。

当院の緩和ケアチームは、医師・緩和ケア認定看護師・薬剤師・栄養士・理学療法士・臨床心理士・ソーシャルワーカーがそれぞれの専門性を活かして、患者さんやご家族に適したケアができるよう、チームで取り組んでいます。主にがん患者さんが対象ですが、それ以外の疾患でも苦痛の緩和が必要と判断されたときにはいつでもご相談ください。

当院では、がんに関する相談支援や情報提供を通じて、患者さんとご家族が安心して治療に臨めるよう、支援する目的でがんサポート室を設置しました。

インターネットが普及した現代は、あらゆる情報があふれており、その情報を患者さんたちが正しく見極め、理解することは、とても難しくなっています。また、医師による通常の診察のなかでは、患者さんにしっかり理解していただくための時間が限られています。がんサポート室を開設した背景にはこのような理由があります。

がんサポート室開設時間中は、看護師・ソーシャルワーカー・薬剤師・栄養士・臨床心理士が交替で常勤しており、ご相談内容によっては、医師と連携して対応します。室内には国立がん研究センター発行の資料や書籍などを展示しており、インターネットもご利用いただけます。また、定期的にサロンを開き、患者さん同士の交流を深めていただいております。

これからの医療が抱える課題は、優れた医療人の育成だと思っています。当院の特徴は、多数の医師が出身大学や診療科の壁を取り払い、患者中心の医療に努めていることです。

初期研修医も、福島県立医大のみでなく、東京医科歯科大学、東京大学など全国から受け入れており、2017年11月現在、26名の初期研修医が仲間とともに切磋琢磨し、基本的診療能力を磨いています。

さらにほぼすべての診療領域で十分な数の指導医がいますので、研修医一人ひとりに対する十分な指導が可能となっているといえるでしょう。

当院は、これからの医療に貢献できる優れた医療人を育成します。

当院では「生命の尊厳・平等な人間愛」という基本理念に基づき、丁寧な心のこもった医療をどなたにでも提供します。また、優れたチームワークでの高度な医療、質の高い医療を提供します。

職員一同、患者さんとともに歩みながら自らも医療人としての誇りを持って成長し、よりよい医療が提供できるようにします。そして、地域の病院や診療所、その他の関係諸機関との連携をより発展させ、地域のみなさまが健康で充実した日々を送れますよう応援したいと思っておりますので、これからもよろしくお願いいたします。

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