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22q11.2欠失症候群の治療と経過
22q11.2欠失症候群は、染色体の異常によって発症する生まれつきの病気です。赤ちゃんのときから重い心臓の病気を合併している方は、主治医と相談して適切な治療を行うことが大切です。また、成長するに...
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22q11.2欠失症候群の治療と経過

公開日 2018 年 10 月 01 日 | 更新日 2018 年 10 月 23 日

22q11.2欠失症候群の治療と経過
中西 敏雄 先生

東京女子医科大学 循環器小児科 成人先天性心疾患病態学寄附研究部門 特任教授

中西 敏雄 先生

目次

22q11.2欠失症候群は、染色体の異常によって発症する生まれつきの病気です。赤ちゃんのときから重い心臓の病気を合併している方は、主治医と相談して適切な治療を行うことが大切です。また、成長するにしたがって発達の遅れがみられるため、小児科の医師や学校の先生などと相談しながら進路を決めていくことも重要です。

今回は、22q11.2欠失症候群の治療と経過について、東京女子医科大学循環器小児科 中西敏雄先生にお伺いしました。

22q11.2欠失症候群の治療

対症療法

22q11.2欠失症候群を根本的に治療する方法はありません。しかし、患者さんはさまざまな病気を発症する可能性があるため、実際に現れた症状を和らげる対症療法が必要となります。たとえば、副甲状腺の機能低下に伴う低カルシウム血症や、免疫機能異常による風邪のひきやすさなどが挙げられます。それぞれの対処については、小児科の先生とよく相談することが大切です。

手術療法

患者さんは、生まれつきの心疾患(ファロー四徴症*、大動脈離断症*など)を発症していることが多く、重い異常がみられる場合は手術が必要です。手術は、赤ちゃんのときから就学するまでの間に数回に分けて行われることもあります。治療後は通院しながら経過をみて、必要があれば再手術を行います。

その他、生まれつきの口蓋裂(上あごに割れがみられること)がある場合にも手術が検討されます。滑舌が悪くなる構音(こうおん)障害を伴うときは、発音を直すために言語発達の訓練が行われます。

ファロー四徴症…心室中隔欠損、肺動脈狭窄、大動脈騎乗、右心室肥がみられる病気。

大動脈離断症…大動脈(心臓から全身に血液を送り出す血管)が切断される病気。

薬物療法

22q11.2欠失症候群の患者さんは、成人してから統合失調症を発症することがあります。統合失調症とは、幻覚や幻聴、妄想などがみられる原因不明の精神疾患です。発症した場合は精神科での治療が必要となり、薬物療法が検討されます。多くの場合、親御さんが幻覚や幻聴に気づいたことが受診するきっかけになります。

療育的なケア

ほとんどの患者さんは精神発達・言語発達に遅れがみられるため、療育的なケア(障害による不自由を減らすトレーニング)が有効です。

ファロー四徴症の心内修復術について

22q11.2欠失症候群の経過は、大まかには心疾患の重さと手術の内容によって決まります。たとえば、患者さんの多くはファロー四徴症を発症して、「心内修復術」という手術を受けます。心内修復術とは、心室中隔欠損(心臓の右心室と左心室の間の壁に穴が開いた状態)を閉じて、右心室から肺動脈への通路を拡大させる手術です。

心内修復術を受けた患者さんのなかには、再手術の必要がない方もいれば、成人後に再手術を受ける方もいます。心内修復術を行ったあとの経過について詳しく解説します。

右室流出路パッチ拡大術-再手術が不要

右室流出路パッチ拡大術とは、パッチ(医療用のあて布)を使用して行う心内修復術です。使用されるのは、心室中隔という壁の穴を閉じるためのパッチと、右心室から肺動脈への通路を拡大させるためのパッチのみです。これらは、長期にわたり体内に留置できる素材であるため、多くの場合は成長してから再手術をする必要がありません。ただし、肺動脈から右心室への血液の逆流(肺動脈閉鎖不全)が高度だと、右心室が拡大して心不全になるため、再手術が必要となります。

ラステリ手術-再手術が必要

ラステリ手術とは、心臓の右心室から肺動脈までを、導管(どうかん)と呼ばれる人工血管でつなぐ心内修復術です。

ラステリ手術を行った場合、ほとんどの方は成人後に再手術が必要です。手術をしてから長期間が経過すると、導管の石灰化(カルシウムがつくこと)や狭窄(狭くなること)などが起こる可能性があるためです。また、肺動脈から右心室に向かって血液が逆流して、右心室の拡大が起こる可能性もあり、その場合は導管を取り換える手術が必要になります。

手術ができない場合-チアノーゼが残る

肺動脈低形成(肺動脈が正常な大きさまで形成されないこと)などが原因で、心内修復術を実施できないことがあります。肺動脈低形成がみられる患者さんは、側副血管(そくふくけっかん)と呼ばれる血管が大動脈から何本か伸びており肺に血液が供給されるため、生命活動を続けることができます。しかし、心内手術をしなければチアノーゼ(右心室から大動脈へ酸素の低い血液が流れ、爪や唇が紫色になること)が残ったまま生活することになります。

チアノーゼが残っていると、脳膿瘍(のうのうよう)*や心不全*を発症する可能性があります。低酸素血症が強い場合には、自宅で酸素吸入を行う在宅酸素療法などの対症療法が必要になります。

脳膿瘍…脳で細菌感染が起こり膿(うみ)がたまった状態。

心不全…心臓の機能が低下した状態。

22q11.2欠失症候群の経過とサポート

長期的な経過については報告がない

22q11.2欠失症候群の経過を長期にわたり調査したデータは報告されておらず、平均寿命は明らかになっていません。ただし、重い心疾患や精神疾患などを発症する可能性があるため、寿命については日本の平均を上回ることは期待できないと考えられます。

話したり歩いたりできるようになる

成長するにしたがって精神発達・言語発達の問題が出てきますが、周りのお子さんより少し成長が遅いと感じる場合でも、ほとんどの患者さんは話したり歩いたりすることができるようになります。療育的なケアを取り入れるなど、適切なサポートを行っていきましょう。

就学、就労が可能

心疾患の治療を乗り越えれば、保育園や幼稚園、学校へ通うことができるようになります。学校の先生と相談しながら、本人に適した学校や職業などの方針を考えていきましょう。普通学級に通うことが難しい場合は、特別支援学級などの選択肢もあります。

就労については、会社の障害者枠での雇用や作業所に勤めることなどが考えられます。患者さんができる仕事を探していきましょう。

社会生活に影響が及ぶことがある

22q11.2欠失症候群の患者さんは、コミュニケーションを苦手とする方が多いという特徴があります。また、統合失調症を発症した場合は、薬物療法で症状を抑えることはできても、勤めていた職場を辞めなければならなくなる方もいます。社会生活に対応するための支援や、周囲の理解が課題です。

ひとりで生きていく形を整えてあげることが大切

お子さんが22q11.2欠失症候群と診断されたら、まずは親御さんが病気についてよく理解すること、そして何より明るい家庭で大事に育ててあげるということが一番なのではないでしょうか。

大きな問題となる心疾患については、適切な治療を受けられるように、小児科の先生とよく相談していってください。治療の時期を乗り越えたら、学校の先生などと相談しながら、精神発達・言語発達の問題についてサポートしていきましょう。仕事については、お子さんができることを一緒にみつけて、目指したい方向に進んでいってください。

その他、社会からの支援として障害年金やグループホーム(共同生活援助)*などを利用することも考えられます。このように、親は成人した子どもがひとりで生きていけるような形を整えてあげることができます。

グループホーム(共同生活援助)…障害がある方の共同生活を支援する事業。

ご家族へのメッセージ

22q11.2欠失症候群は、生まれつきの心疾患から始まって、精神発達遅滞などのさまざまな症状が現れる難しい病気です。こうすれば治るという治療法がないため、生涯にわたる家族からの支援が必要になります。ご家族はできるだけ手を差し伸べてあげるということが大切です。

また、患者さんは子どものときに頑張って治療を受けて、大人になってからは必要なサポートを受けながら社会に出ていくことが可能になります。決して手を施せないわけではなく、さまざまな手立てが考えられます。そこで、医療関係者や、学校、行政を含めた社会からの支援を受けながら育てていかれることがよいのではないでしょうか。

 

22q11.2欠失症候群(中西 敏雄先生)の連載記事

循環器小児科の医師として、主に循環器小児科一般、カテーテル治療、成人先天性心疾患を専門としている。診療と研究、どちらにも尽力し、小児を含め心臓病の治療に数多く携わってきた実績をもつ。

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