院長インタビュー

地域の脳卒中診療を担い、地域を守る吉田病院の取り組み

地域の脳卒中診療を担い、地域を守る吉田病院の取り組み
吉田 泰久 先生

社会医療法人榮昌会吉田病院 理事長・院長

吉田 泰久 先生

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この記事の最終更新は2019年03月19日です。

吉田病院は兵庫県神戸市兵庫区に位置する病院です。同院は地域の救急医療のなかでも脳卒中の患者さんの診療を主に担い、急性期医療から回復期リハビリテーションまで一貫して提供しています。1952年12月の開設以来60年以上にわたり、脳卒中の診療を提供してきたため、救急隊員の方も脳卒中が疑われる患者さんを同院に搬送する機会が多くあるそうです。地域になくてはならない診療を担う吉田病院院長の吉田泰久先生に、同院についてお話を伺いました。

当院は脳卒中の救急患者さんを中心に診療し、急性期医療から回復期リハビリテーション、ご自宅への復帰を目標に一貫した医療、介護の提供に尽力しています。

当院で脳卒中の診療を開始したのは、1968年のことです。当時の脳卒中に対する治療はまだ研究の段階で、治療後は在宅復帰が難しい患者さんも多くいらっしゃいました。現在は、早期の治療やリハビリテーションを実施することで、ご自宅へ帰ることができる患者さんも多くなっています。

当院では、地域の脳卒中患者さんの診療をより専門的に行おうと、脳卒中センターを2004年6月に開設しました。当院の特徴の1つは、それぞれの診療科に所属している医師が多くの経験を積んでいることです。また、地域においても脳神経外科を開設している医療機関は少なく、今後も当院で担っていく必要があると認識しています。

吉田病院 外観
吉田病院 外観

当院は2012年に新たに回復期リハビリテーション病棟を開設したことで、急性期治療から回復期リハビリテーションまで一貫した治療を、院内で行えるようになりました。そのため、脳卒中の治療が一段落し回復期リハビリテーション病棟に移動した患者さんの容態が急変した場合でも、迅速な対処が可能です。

救急室での処置の様子
救急室での処置の様子

脳卒中の治療は、医師が中心となって力を尽くすだけでなく、看護師やリハビリテーションスタッフなど多くの医療従事者との連携が必要です。当院では、当院在籍の救急救命士が救急隊員や近隣の医療機関からの連絡を受け、患者さんの状態や発症から何時間が経過しているかなどを聞き出して、医師へ報告します。医師や看護師は救命救急士からの情報をもとに、搬送される患者さんに必要と思われる治療の準備を開始します。このように、多くの職種のスタッフが迅速に治療を開始できるよう連携することで、患者さんを受け入れて治療を開始するまでの時間が大幅に短縮できます。当院では、患者さんを受け入れてから、30分から45分ほどで急性期血栓回収治療(カテーテル治療)を開始しています。
 

血管内手術の様子
血管内手術の様子

当院は脳卒中ケアユニット(以下、SCU)を救急室の隣に開設しています。SCUとは、急性期治療を必要とする脳卒中患者さんを専門に治療する病室です。2019年1月現在、当院にはSCUが12床あります。

患者さんが入院すると、すぐに言語聴覚士による嚥下機能の評価をします。脳卒中の患者さんのなかには、嚥下障害がみられる方もいらっしゃいます。患者さんの嚥下機能をしっかりと評価することで、誤嚥のリスクを減らすようにしています。

当院では、脳卒中の治療後、当日からリハビリテーションを開始しています。特にリハビリテーション内容の充実に努めていて、ロボットスーツHALや川平法と呼ばれる促通反復療法など、先進の神経リハビリテーション技術を導入しています。

ロボットスーツHALは、装着者さんの体を動かそうとする意思を感知して、歩行動作をアシストする自律動作支援ロボットです。体を動かすときに皮膚表面に流れる微弱な生体電位信号を装着者さんの装着している専用のセンサーが感知すると、HALの関節部分にあるモーターが稼働して、装着者さんのアシストをします。

川平法は、リハビリテーションスタッフが患者さんの麻痺している手足を動かすときの動作を補助することで、患者さんの意図した運動の実現を繰り返すことで、大脳から脊髄までの神経回路を再建、強化するため治療方法です。

そのほかにも、リハビリテーション内容を充実させるために常に新しい医療機器を取りそろえ活用しています。

リハビリテーションの様子
リハビリテーションの様子

在宅へ復帰された患者さんのサポートのために、訪問看護や訪問リハビリテーションなどを実施しています。今後は、訪問看護や訪問リハビリテーションの体制をさらに強化することで、在宅復帰したあとも安心して生活を送ることができると考えています。

今後は、当法人グループ内でお看取りもふくめた慢性期医療も対応できるような体制を作りたいと考えています。脳卒中は突然発症する病気で、患者さんには治療後リハビリテーションを受けていただくことになります。リハビリテーションを行うことで日常生活への復帰が可能になるまで回復する人も多いものの、なかには重度の後遺症のため在宅療養できない方などもいらっしゃいます。また、ご高齢で全身状態も悪く終末期に近い患者さんもおられます。患者さんやご家族の状況に合わせ、お看取りも含めた慢性期医療を提供する体制を整えることで、より患者さんに寄り添った脳卒中医療を提供できると考えています。

当院では、急性期医療から慢性期・終末期医療まで一貫した医療を提供することができるように尽力していきます。

吉田先生

当院は脳卒中を中心とした脳疾患の救急医療から回復期医療まで一貫したチーム医療体制で、地域医療に貢献していると自負しています。法人内に介護療養型老人保健施設を有していることで、救急から慢性期・終末期医療まで、一貫した診療を提供することができます。今後は、患者さんがご自宅へ帰られても安心して生活することができるように在宅診療でのサポート体制も強化していきます。

また、脳卒中の発症予防には、糖尿病高血圧などの危険因子の管理が重要です。地域の先生方と協働して発症予防をしていきたいと考えています。糖尿病や高血圧の治療をしていただいている患者さんで、気になる症状がみられる場合や、症状がなくとも、リスクが高いと考えられる場合には、遠慮なく当院にご紹介いただきたいと思います。種々の画像検査でリスクを評価し、事前の発症予防できるようにかかりつけの先生方と情報交換いたします。脳卒中を予防することも、とても重要なことです。地域の皆さんの健康を守っていくために、当院でできる最大限のことをスタッフ一同行っていきます。

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    吉田 泰久 先生

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