院長インタビュー

低侵襲な治療・先端医療の研究・ICT技術の導入で多様な医療ニーズに応える大分大学医学部附属病院

低侵襲な治療・先端医療の研究・ICT技術の導入で多様な医療ニーズに応える大分大学医学部附属病院
門田 淳一 先生

地方独立行政法人長崎市立病院機構 副理事長 兼 長崎みなとメディカルセンター 院長、大分大学医...

門田 淳一 先生

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この記事の最終更新は2019年06月03日です。

大分大学医学部附属病院は、大分県由布市に位置する国立大学附属病院です。同院は、国立大学附属病院のひとつとして、診察・研究・教育で地域に医療貢献することを使命と考えています。現在は、体への負担の少ない低侵襲な治療に力を注ぐとともに、先端医療の研究やICT技術の導入を積極的に行っています。

多様化する医療ニーズに応えるためのさまざまな取り組みについて、病院長である門田淳一先生にお話を伺いました。

大分大学医学部附属病院 外観

大分大学医学部附属病院 外観

当院は、1981年に大分大学医学部の附属病院として開設されました。大分県の医療の中核を担うため、診療科の拡充や増床をするなど病院機能の充実に取り組んできました。

2010年からは、病院の再整備を推し進め、救急医療・災害医療対策にも注力しています。その一環として、2012年にはヘリポートを有した救命救急センター棟を稼動し、2013年には高度救命救急センターに指定されました。

2015年には認知症先端医療推進センターを設置し、認知症の予防と治療に関する研究に取り組むとともに、地域の医療機関との連携を強化しています。

これからは、先端医療の研究やICT技術の導入など多様な取り組みで、地域の医療課題の解決をさらに目指してまいります。

手術を受ける患者さんの体には、病気そのものによる痛みや苦しみに加え、手術や手術後の回復のために大きな負担がかかります。また、加齢とともに体力が低下する傾向があるため、高齢の方であればあるほど、患者さんの体への負担は大きくなってしまいます。

そのため当院では、各診療科において、患者さんの体への負担を抑えた低侵襲な治療の提供を目指しています。そのなかでも特徴的な取り組みを行っている診療科について、以下でご紹介します。

腎臓外科・泌尿器科では、腹腔鏡下手術に力を入れています。特に、腎臓と副腎の腫瘍に対する腹腔鏡下手術に注力しています。

腹腔鏡下手術では、従来の開腹手術のような大きく皮膚切開を行わなくても手術が可能であるため、痛みや出血が少なく、患者さんの体への負担を軽減できます。その結果、腹腔鏡下手術後は早期回復が望めます。

現在は、手術支援ロボットを用いた手術にも、積極的に取り組んでいます。

手術支援ロボットを用いた手術の様子
手術支援ロボットを用いた手術の様子

消化器外科では、消化器領域の悪性腫瘍や急性虫垂炎などの炎症性疾患の腹腔鏡下手術に力を入れています。先述したように腹腔鏡下手術は、患者さんへの体の負担を軽減するとともに繊細な手術を提供します。消化器外科では、腹腔鏡下手術をさらに安全に実施するため、手術中に腫瘍や血管を蛍光発色させる蛍光ガイド手術を導入し、また経験を積んだ医師の手技をAI(Artificial Intelligence:人工知能)に学習させ、手術時にガイドさせるAIナビゲーション手術の臨床導入に取り組んでいます。

この取り組みによって、医師ごとの技術や知識の差を可能な限り少なくし、腹腔鏡下手術の安全性の向上につなげたいと考えています。

本大学医学部の研究成果を医療の発展に活かすため、大分大学発のベンチャー企業として、2017年に株式会社大分大学先端医学研究所を設立しました。特に力を入れて取り組んでいるのが、創薬開発と特許技術の取得です。これらの取り組みが大分県から認められ、2019年には大分県ビジネスプラングランプリの最優秀賞を受賞しました。

大分大学先端医学研究所では、研究成果を医療課題の解決に結び付けることによって、広く社会に貢献していきます。

認知症は、誰もがなりうる病気です。社会の高齢化とともに、認知症を患う方が増え、認知症はよりいっそう深刻な社会問題となるでしょう。認知症は、発病の理由や根本的な治療法がいまだ明らかになっていません。

2015年に立ち上げた認知症先端医療推進センターでは、診療・研究・教育の3領域から認知症の予防や治療法の考案に取り組んでいます。また、認知症治療に欠かせない地域の医療機関との連携を強化し、地域医療の活性化も図っています。

認知症先端医療推進センターでは、認知症の患者さんとそのご家族が、安心して地域で生活できるようにするために、これからも努力を重ねてまいります。

外来ホールの様子
外来ホールの様子

当院では、地域の医療機関と患者さんの医療情報を共有するために、2つの取り組みを行っています。

1つ目が、総務省の推進するクラウド型EHR(Electronic Health Record:医療情報連携基盤)高度化事業と大分県医療情報ネット(ID-Link)を利用した「うすき石仏ねっと」との連携です。「うすき石仏ねっと」とは、臼杵市内の患者さんの医療情報を、地域の医療機関や介護施設などと共有するネットワークです。当院は、ヘリポートを有した高度救命救急センターであるため、重症な救急患者さんが搬送されてきます。その際に、本医療連携を利用して救急患者さんの既往歴や処方薬の情報、画像などを把握することで、適切かつ迅速な救急治療を提供することが可能になります。

2つ目が、Joinというアプリケーションの導入です。Joinは、医療従事者同士で患者さん情報の共有とコミュニケーションを行うことができるツールです。当院では、当院と大分県内の複数の病院で患者さん情報を共有できるようにしています。Joinの導入によって現在の症状や、患者さんの画像検査の結果を、医療従事者はチャット・通話を用いて事前に知ることができます。そのため、救急患者さんが到着してからスムーズに治療を行うことが可能になります。

社会の高齢化が進むにつれ、地域での医療連携や情報共有がますます重要になるでしょう。当院では、医療連携やJoinを用いて病院内外でのコミュニケーションを円滑にすることによって、救急時の迅速で適切な治療の提供を目指します。また、地域の皆さんが住み慣れた地域で安心して医療を受け続けることができるよう、地域の医療機関との連携を強化していきます。

若手医師の皆さんには、患者さんの命を預かっているという立場であると自覚を持ち、技術と知識の向上に励んでいただきたいです。成長の原動力は、ご自身の成し遂げたい目標を見つけることから始まります。当院では、皆さんが成し遂げたい医療の実現に向けて、環境整備や学会発表の支援などのサポートを充実させています。

また、当院は医師が働きやすい環境整備にも努めています。先ほど紹介したJoinの導入によって、患者さん情報の共有やコミュニケーションの円滑化が図れます。これによって、タスクシェアリングや複数主治医制などが可能になり、一人の医師が一人の患者さんの診療を全て抱え込むことがない職場づくりにつながっています。

明確な目標を描き、技術と知識を積み上げたいと考えている若手医師の皆さんは、ぜひ当院で共に働きましょう。

門田先生

地域の高齢化に伴い多様化する地域の医療ニーズにお応えすることが当院の責務であると考え、さまざまな取り組みを行っています。

具体的な取り組みとしては、低侵襲な治療・先端医療の研究・ICT技術の導入が挙げられます。幅広い診療科で実施している低侵襲な治療の提供、医療課題の解決を図るための先端医療の研究、高度救命救急センターにおける救急患者さんの受け入れなど、当院が担うべき医療にこれからも尽力していきます。

当院は、地域の皆さんが年齢を重ねても、安心して地域で暮らしていけるよう、これからも多方面からサポートしていきます。

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