インタビュー

「八高連」の取り組み−高齢者の迅速かつ的確な救急搬送の確保に向けて

「八高連」の取り組み−高齢者の迅速かつ的確な救急搬送の確保に向けて
田中 裕之 先生

医療法人永寿会 陵北病院 院長

田中 裕之 先生

目次
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この記事の最終更新は2019年06月13日です。

東京都では年間約69万人の方が救急搬送されています。その多くは、速やかに病院へ搬送されますが、一方で、受け入れ先の医療機関がスムーズに決まらず、搬送困難になる事案も6,600件ほど発生している現状があります。このような状況を打開するため、八王子市では「八高連(八王子市高齢者救急医療体制広域連絡会)」を創設しました。八高連の成り立ちや実際の活動内容について、陵北病院 院長の田中裕之先生にお話を伺いました。

*詳しくは慢性期.comのページをご覧ください。

2007年頃から、傷病者の救急搬送に時間を要する、いわゆる「たらい回し」の事案が全国で発生し、社会問題に発展しました。この流れを受けて、2009年、総務省は消防法を改正しました。改正した主な内容は、1)傷病者の搬送および受け入れの実施基準にかかるガイドラインの策定、2)消防機関の職員や医療機関の管理者・医師などから構成される協議会の設置を盛り込んだことです。つまり、傷病者の救急搬送・受け入れに関する、消防機関と医療機関の協力体制を進めようとしたのです。

東京都では、2009年に「救急医療の東京ルール」を定めました。都内12か所の2次医療圏ごとに「地域救急医療センター(固定または輪番制)」を設置し、東京消防庁には「救急患者受入コーディネーター」を配置しました。そして、救急隊が2次救急レベル以下と判断した患者さんで、次のいずれかに当てはまるケースについては、救急隊が地域救急医療センターに連絡して、調整を依頼することと決めました。

  • 医療機関の受け入れ照会を5回以上行った
  • 搬送先選定に20分以上を要した

八王子市救急業務連絡協議会において、八王子市内で、救急隊が地域救急医療センターに連絡して調整を依頼するケースがどのくらい発生しているかを調べたところ、救急搬送22,936件のうち287件(2009年8月31日〜2010年12月31日までの事案)が当てはまりました。その287件の内訳では、「高齢者」が37%を占めていました。

救急医療の東京ルール適応事案を選定困難項目別にまとめたデータ
救急医療の東京ルール適応事案を選定困難項目別にまとめたデータ

このような状況を受け、高齢者に対する迅速かつ的確な救急搬送体制を確保することを目的として、2013年に八王子市の15団体(のべ147機関)で構成された「八高連(八王子市高齢者救急医療体制広域連絡会)」が創設されました。

2009年データ(八王子市統計表より)

八高連は、2011年に「救急医療情報シート」を作成しました。本シートの基本的なコンセプトは、たとえ1秒でも救急搬送にかかる時間を短縮できるようにすることです。

市民一人ひとりが、あらかじめ救急医療情報シートを記入しておくことで、緊急時におけるご家族の連絡先や、延命を含めた医療処置の希望などがすぐにわかり、迅速かつ的確な対応が可能になります。

八高連が作成した「救急医療情報シート」
八高連が作成した「救急医療情報シート」

*「救急医療情報シート」は、八王子市役所や東京消防庁のホームページからも印刷が可能です。

八王子市役所: https://www.city.hachioji.tokyo.jp/emergency/medical/p005727.html

東京消防庁:  http://www.tfd.metro.tokyo.jp/hp-hatiouji/seikatu/kyukyu-iryojyoho.html

 

八高連では、救急医療情報シートを地域住民に浸透させるために、市民セミナーやイベント、高齢者施設などで、定期的に救急医療情報シートを配布しました。

田中裕之先生

現在(2019年5月時点)、八高連の参加は20団体、1,753機関に増え、今後も活動の幅を増やしていく予定です。私たちはこれからも、八王子市の救急搬送体制をより強固なものにするため、活動を続けていきます。

慢性期

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