低血糖症とは、血糖値が正常の範囲よりも下がった状態のことを指し、主に汗をかく、脈が速くなる、手や指が震える、顔色が青白くなるなどの症状が現れるとされています。また、意識がなくなるほど血糖値が低くなると、命にかかわることもあるため注意が必要です。
では、低血糖症に対して病院ではどのような治療が行われるのでしょうか。また、もし低血糖症が生じた際にはどのような対処が必要なのでしょうか。
低血糖症に陥る原因として、糖尿病治療に伴うインスリン注射やスルフォニル尿素薬、グリニド薬の内服、食事量・炭水化物の不足、過剰な運動といった生活習慣など、さまざまなものが挙げられます。低血糖症の治療は、原因によって適切な治療が異なります。
低血糖症の原因は主に糖尿病治療に対して処方される薬(インスリンや経口糖尿病治療薬など)であるといわれています。
薬が原因になっている場合は、その薬の服用中止や服用量の減量が検討されます。
インスリノーマとは、血糖値を下げるホルモンであるインスリンを過剰分泌する腫瘍のことを指します。空腹時に低血糖症に陥る、かつ血液検査の結果、血中インスリンやC-ペプチド濃度が高い場合はインスリノーマの可能性が考えられます。また、低血糖に陥ると摂食量が多くなるため体重が増えたり、低血糖の際に異常な言動がみられることも少なくありません。
インスリノーマが原因となっている場合は、インスリノーマの治療が行われます。主に手術が行われることが一般的です。ただしインスリノーマが悪性の場合は膵頭十二指腸切除術(膵臓の一部と十二指腸などの切除)、膵体尾部切除術(膵臓の一部と脾臓などの切除)、リンパ節郭清(周辺のリンパ節の切除)などが行われることもあります。
汗をかく、手や指が震える、顔色が青白くなるなどの低血糖症状が現れたときは、現場で速やかに適切な対処をする必要があります。
ブドウ糖10g、またはブドウ糖を含む飲料水(150~200ml)を摂取して血糖値を上げるように努めます。なお、ブドウ糖がない場合は砂糖でもよいですが、ブドウ糖の2倍量、20gが必要です。通常は糖を摂取することにより短時間で症状が治まりますが、摂取してから15分程度経っても症状が改善しない場合には、再度同量の糖を摂取しましょう。
低血糖症状がひどく意識がはっきりしないなど、糖を飲み込むことが難しい場合は周囲の人がブドウ糖や砂糖を水で溶かし、唇と歯茎の間に塗りつけて救急車を呼びましょう。無理やり飲ませようとすると誤嚥や窒息につながりかねないため、注意が必要です。
そのほか、自力で経口摂取できないときの対処法の1つに、グルカゴンという血糖値を上げるための注射と点鼻粉末剤があります。これは医師の判断のもとで処方、使用方法の説明がされるため、詳細については担当医の判断、指導を仰ぐとよいでしょう。
このように、意識がなくなった場合は自身で対処できないため、あらかじめ家族や周囲の人に自身の状態について話しておくようにしましょう。
低血糖症の原因を理解し日々の生活習慣などに注意することで、低血糖症の予防につながる場合があります。また、低血糖症のリスクが高い方は、もしも低血糖症になったときに早急に対応できるような準備も必要です。ただし、いずれも医師の指導の下で行うようにしましょう。
何度も低血糖症になったことがある方は特に血糖値が下がるタイミングや原因を把握して、それらを避けることが大切です。
具体的な対策としては、空腹にならないように適切なタイミングで食事をする、十分な量の食事を取る、アルコールの過剰摂取を避ける、空腹時や長時間の運動を避ける、といった行動が挙げられます。
インスリン注射や糖尿病治療薬を使用している方は、低血糖症になったときにすぐ対処できるよう、ブドウ糖や飴、チョコレートなどを常に携帯しておくとよいでしょう。また、運転中に低血糖症になってしまうと重大な事故につながる可能性もあるため、車の運転をする場合は特にブドウ糖などを忘れないようにしましょう。
なお、低血糖症になりやすい方は空腹時の運転を控える、運転前に糖分を摂取するなどの心がけも必要です。
低血糖症の主な症状には汗をかく、脈が速くなるなどがあり、原因によって対処や治療方法が異なるため、医療機関で適切な治療を受ける必要があります。また、意識がなくなるほどの深刻な低血糖症の場合、一時的に症状が回復しても再び血糖値が下がる可能性があるため、医療機関を受診することを推奨します。そのほか、低血糖症の原因となる治療薬を使用している場合も自己判断で減量や中止をすることはせず、必ず医師に相談するようにしましょう。
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