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2型糖尿病の原因は生活習慣や遺伝 ~ストレスは危険因子になるの? 発症は予防できるのか~

2型糖尿病の原因は生活習慣や遺伝 ~ストレスは危険因子になるの? 発症は予防できるのか~
古家 大祐 先生

淡海医療センター 病院長

古家 大祐 先生

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糖尿病は発症メカニズムの違いによってタイプが分かれており、代表的なものに1型糖尿病2型糖尿病があります。このうち、2型糖尿病は、インスリンの分泌量が減ったり、インスリンの働きが鈍くなったりすることで起こります。中高年以降に起こることが多く、遺伝素因(家族内に糖尿病の患者さんが多い)や生活習慣の変化が発症に関わっていることが知られています。それでは、具体的にどのような因子が2型糖尿病を引き起こすのでしょうか。

糖尿病は、“インスリン”と呼ばれるホルモンの作用が不足することで、血糖値が高い状態が持続する病気のことです。インスリンは膵臓(すいぞう)で作られるホルモンで、血中の糖を正常に維持するはたらきをもっています。2型糖尿病は、インスリンの分泌量が低下したり(インスリンの分泌障害)、インスリンが分泌されてもそのはたらきが不十分になったりする(インスリン抵抗性)ことで起こります。また、遺伝素因や生活習慣の変化の関わりが強いといわれています。

インスリンは、食事によって血糖値が上がることで分泌されます。その後、インスリンの作用によって血糖値が元の状態に戻ると、分泌量は低下します。しかし、インスリン分泌障害があるとインスリンの分泌が遅れたり、分泌量が低下したりして、血糖値が高い状態が続きます。また、血糖値が高い状態が続くことで膵臓はより多くのインスリンを作り出そうとし、疲弊していくことでインスリン分泌能(インスリンを分泌する力)がさらに低下するようになります。

インスリンの働きが鈍くなるインスリン抵抗性が高まると、インスリンが分泌されていたとしても血糖値が十分に下がらなくなります。

2型糖尿病は糖尿病の中でももっとも頻度が多く、過食や運動不足などの生活習慣の変化や遺伝素因を主な発症要因としています。インスリンの分泌障害や、インスリンのはたらきが低下することで生じ、発症のピークも中高年以降によく見られます。

一方、1型糖尿病は免疫異常などでインスリンを分泌する膵臓のベータ細胞が破壊されることが原因で起こります。インスリンの分泌が著しく低下するか、まったく分泌されない状態になり、小児~青年期に多く発症することが特徴です。

2型糖尿病の主な発症要因には、遺伝素因や生活習慣の変異などがありますが、特定の要因だけで発症するものではありません。いくつかの要因が折り重なることで発症に至ると考えられていますが、詳しい原因については分からないことも多くあります。2型糖尿病の発症に関わるとされている因子には、以下のものがあります。

遺伝素因

両親からの遺伝子の性質によって、インスリンが分泌しにくくなる場合があります。

食生活の乱れ

カロリーが多い食事や、食事の時間が不規則、早食い、どか食い(1度に大量の食事を食べる)といった食生活の乱れは、2型糖尿病のリスクを高めるといわれています。

運動不足

運動は血糖を消費するため、短期的に血糖値を低下させることができ、長期的にはインスリン抵抗性を改善することが知られています。反対に、運動不足は2型糖尿病のリスクを高めるといわれています。

肥満

肥満は2型糖尿病の発症リスクを高めます。特に、アジア人は欧米人に比べてより低い体重でも内臓脂肪が多く、2型糖尿病を発症しやすいといわれています。そのため、日本人では過度な肥満でなくても、2型糖尿病を発症することがあります。

ストレス

精神的ストレスは2型糖尿病の発症リスクを高めることが知られています。また、深夜労働や社会環境なども、2型糖尿病のリスク因子となります。

上記の因子のうち、遺伝素因はインスリン分泌障害への影響が強く、そのほかの環境要因の変異はインスリン抵抗性の増大への影響が強いといわれています。しかし、遺伝素因だけで2型糖尿病の発症に至ることは多くないため、環境要因を取り除くことで糖尿病の発症を予防することができます。まずは食事や運動に気を配り、規則正しい生活を送ることが大切です。

その一方で、遺伝素因の影響は人によって異なり、同じような生活を送っていても2型糖尿病を発症する人と、そうでない人がいます。2型糖尿病は症状が現れにくいため、近親者に糖尿病患者がいる場合は定期的に検査を受けるようにしましょう。

2型糖尿病は遺伝や生活習慣の乱れが要因となって発症しますが、どのような因子が引き金となるかは人によって異なります。初期であれば生活習慣を見直すことで病状が改善することもあるため、予防に努めるとともに定期検診で早期発見に努めるとよいでしょう。

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