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患者さんを1人で頑張らせない――合併症を考慮した2型糖尿病治療

患者さんを1人で頑張らせない――合併症を考慮した2型糖尿病治療
瀧端 正博 先生

三浦中央医院 院長

瀧端 正博 先生

目次
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インスリンが効きにくくなることによって起こる2型糖尿病。三浦中央医院 院長の瀧端 正博(たきはた まさひろ)先生は「単に血糖値を下げるだけでなく、合併症とともに治療を行うことが重要」とおっしゃいます。医師・医療者向けの講演や研究にも積極的に携わりながら、多くの患者さんの診療を続けているとのこと。「どれだけ患者さんが増えても治療のクオリティは一切落としていない」と胸を張ります。患者さんに寄り添った診療の実態と、地域に暮らす方々への熱い思いを伺いました。

糖尿病とは、インスリンが十分に作用しないために、慢性的に血液中のブドウ糖の量(血糖値)が高い状態が続く病気です。大きくは、1型糖尿病2型糖尿病妊娠糖尿病、これら以外の病気や薬によるものの4つに分類されます。このうち2型糖尿病は、インスリンが分泌されにくくなること(インスリン分泌能力の低下)と、インスリンが効きにくくなること(インスリン抵抗性の増大)によって起こります。

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インスリンとは、膵臓(すいぞう)にある膵β細胞から分泌されるホルモンで、食事により血液に取り込まれたブドウ糖が筋肉や脂肪に取り込まれることを助けます。分泌されるインスリンの量が不足したり、あるいは分泌されていても十分に効かなくなったりすると、ブドウ糖が有効に使われず血糖値が高くなって全身にさまざまな影響を及ぼします。

2型糖尿病は、遺伝的な要因に生活習慣などの外部要因が関与して発症するといわれていますが、これまで考えられてきた以上に遺伝的な要因が占める割合が大きいことが分かってきています。両親のうちいずれかが2型糖尿病である場合子どもが発症する確率は約4割、両親ともに2型糖尿病の場合は最大7割になるとの報告もあります。最近は若い年齢で発症する患者さんも多く、親子で当院に通院されている方も大勢います。糖尿病と診断されると「これまでの生活習慣が悪かったのではないか」と自分を責めてしまう方が多いのですが、生活習慣だけが原因となって起こる病気ではないことは強調しておきたい点です。

慢性的に血糖値が高い状態が継続すると、血管が傷ついて網膜症や腎症、神経障害、脳梗塞(のうこうそく)心筋梗塞などを引き起こすリスクが高まります。2型糖尿病を治療する目的は、血糖値が高い状態を改善することで、これらの起こり得る合併症を予防し、糖尿病がない方と変わらない生活の質(quality of life:QOL)を保ちながら、寿命を全うできるようにすることです。かつて、糖尿病の患者さんはそうでない方と比較して寿命が短いといわれていましたが、適切な治療を受けていれば、現在ではほとんど変わらないとの報告もあります。

2型糖尿病の治療は、これまで食事療法と運動療法、そして血糖降下薬とインスリンの4本柱で成り立ってきました。私は5本目の柱となるのは、合併症を考慮した治療だと考えています。世界の糖尿病治療の考え方は合併症を重視する方向に進んでおり、日本の糖尿病のガイドラインも同じ方向に進んでいます。

2型糖尿病の治療において食事療法と運動療法は大切です。当院は神奈川県三浦市にあり、会社員だけでなく農業や漁場に従事されている方も多く受診されており、患者さん一人ひとりの職業や生活環境に合わせてオーダーメイドで指導しています。当院ではこれらの指導は看護師や管理栄養士が中心となって行っていますが、私はよく患者さんに「仙人のような努力をする必要はない」とお話ししています。糖尿病は従来考えられていたよりもインスリン分泌能やインスリン抵抗性などの病態要因が大きいことが分かってきました。適切な生活習慣の指導とともに、病態に合わせた適切な治療薬が必要ということです。

最新の薬物療法の特徴としては、肥満症の合併の有無で糖尿病の治療薬を使い分けることが日本のガイドラインで記載されています。また慢性心不全慢性腎臓病などを合併する患者さんについては、心臓や腎臓を守りながら糖尿病を治療出来る薬を使用します。つまり患者さん一人ひとりの合併症に合わせてオーダーメイドで治療薬を決めていくのが現在の考え方であり、心臓や腎臓の機能が低下している方や肥満症がある方などはそれらの合併症とともに2型糖尿病を治療することになります。多くの研究から、合併症を考慮した治療を行うことによって予後によい影響を及ぼすことが明らかになっています。また、これからは肥満症に対してもしっかりと治療を行っていくことが主流となるでしょう。ここ最近の研究では肥満症を治療することによって糖尿病や高血圧、慢性心不全や慢性腎臓病、睡眠時無呼吸症候群などさまざまな合併症が改善することが判明しています。最近では、体重を減少させつつ血糖値をコントロールできる薬剤が使用できるようになったことも喜ばしい点です。そのため、それぞれの合併症の評価をしっかりと行い、個々の患者さんに合った治療薬を選択していく必要があります。

当院では、2型糖尿病の患者さんには、月に1回の頻度で受診をお願いしています。合併症を評価したうえで適切な治療を行うため、1年間受診していただくと全身の合併症が全て把握できるように必要な検査のスケジュールを組み立てています。

血圧と体重は受診のたびに測定します。必要に応じて、足にタコや潰瘍(かいよう)などのトラブルが生じていないか診察することもあります。腎症の確認のためには、血液検査でeGFR*(estimated  Glomerular Filtration Rate:推算糸球体濾過量)、尿検査でアルブミン定量を確認しています。

そしてこだわっているのは、行った全ての検査結果を、電子カルテ上に時系列で一元的に表示できるようにしていることです。電子カルテに表示したデータは、患者さんが見直せるように、カラーでプリントしてお渡ししています。基準値から外れた値は目立つように赤く表示されるので、患者さん自身にご自分の状態を理解していただくためにとても効果的です。

*eGFR:血液中のクレアチニン濃度と年齢、性別から計算する値で、腎臓で1分間に何mLの血液を濾過して尿を作れるかを表す。

先方提供
提供:瀧端 正博先生

2型糖尿病は、自覚できる症状がない状態で治療を開始するため、実感しにくい病気です。そのため、患者さん自身が“糖尿病であること”をしっかりと理解し、“治療が必要であること”を認識していただくことが何よりも大切です。こういったことを医学用語で「病識」と言います。

2024年10月に当院を受診いただいた方は4,346人でした。当院には、数多くの2型糖尿病患者さんに通院いただいていますが、どれだけ数が増えても治療のクオリティは一切落としていないつもりです。「どうして私は病院に来なければいけないのですか」など、患者さんが治療に納得しておらず受診を止めてしまいそうな予兆を感じたら、時間を取って丁寧に対話を重ね、信頼関係を築けるように心がけています。実際に通院が途絶えてしまった結果、亡くなられた患者さんを何人もみてきました。治療の切れ目が命の切れ目になることはよくありますので、必要な場合は多少厳しい言い方になったとしても“治療をしなければ命を落とす可能性があること”をはっきり伝える必要があると考えています。

私は“患者さんを1人で頑張らせないこと”を大事にしています。2型糖尿病の病因はインスリン分泌能の低下とインスリン抵抗性の増大であり、生活習慣が全ての原因ではありません。

日本糖尿病学会と日本糖尿病協会は、糖尿病患者さんに対するスティグマの解消と社会の意識改革を目指して、2019年にアドボカシー委員会を設立しました。スティグマとは日本語の“差別”や“偏見”などに対応する言葉で、ある病気に罹患しているなど個人の持つ特徴に対して、周囲から否定的な意味付けをされ、不当な扱いことを受けることを指します。糖尿病は、日本では成人の4人に1人が関係する一般的な病気ですが、医療者の間でも必ずしも正しい理解が進んでいない現状があります。

当院には、これまでの受診先でつらい経験をして転院されてくる患者さんもいらっしゃいます。私は、治療経過の中で血糖値が期待したほど下がらなかったとしても、その理由を患者さん個人の生活習慣やそれを改善する努力にのみ帰結させるべきではないと考えています。食事や運動の見直しを試みても血糖値が下がらないのは、インスリン分泌能力が低下しているか、インスリン抵抗性が増大しているかという2型糖尿病そのものの問題です。必要な場合には、患者さんだけに頑張らせず、病理病態に応じた適切な治療薬を併用するなど助け舟を出すのが、医療者としてのあるべき姿なのではないかと思っています。この点は実は高血圧脂質異常症肥満症でも同じことが言えるのではないかと思いますが、日本糖尿病学会と日本糖尿病協会が打ち出した「スティグマの解消」は日常診療において非常に重要なことを指摘していると私は考えています。

当院は神奈川県三浦市にありますが、人口40,841人のうち高齢者が16,936人を占め、その高齢化率は41.6%と、日本全体の高齢化率29.0%を大きく上回っています(2023年1月時点)。高齢化が進む地域の中では、医療は地域の方々の命を支える社会インフラの1つだと考えています。

当院は2014年4月に開業し、2024年10月には受診された患者さんが1万4,887人になりました。1か月の受診者数は4,000人以上、1日の受診者数は250~300人と非常に多くの方に来院いただいています。現在、三浦中央医院は神奈川県内に2施設しかない糖尿病認定教育施設III*の1つで、三浦市で日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医の資格を保有している医師は私1人です(2024年8月時点)。そのため、この地域にお住まいの患者さんが、医師数の多い都市部と変わらない医療が受けられるように尽力していきたいと考えています。

また私が診察している患者さんだけがよい医療を受けられればよいとは思っていません。私は同業の医師に対して講演を行う機会がたくさんありますので講演などを通じて最新のエビデンスに基づいた治療や診療技術をほかの医師や医療者に対して伝えています。また横浜市内で仲間たちが運営している3つの医療機関に対して当院で培った診療のノウハウを提供し、より多くの患者さんに最新の考え方に基づいた治療を受けていただくことも大切だと思っています。

*日本糖尿病学会専門医制度 認定教育施設 III:常勤の研修指導医が在籍し、研修カリキュラムに基づく研修を行うことが可能な無床の認定教育施設。

当院への通院が難しくなった高齢の患者さんに対しては、治療が継続できるよう訪問診療も行っています。三浦半島では高齢で一人暮らしの方も多いため、お薬の処方だけでなく、社会とのつながりを提供する「社会的処方」が求められる機会も多くあります。どの地域にお住まいで、どのように生活されていて、どこにどういった関係性のご家族がいて、どのような状況になったらどう行動するか……、医療以外の課題を洗い出して解決法を提示するスキルも必要です。患者さんの立場に立ち理解できる言葉で説明すること、そして信頼関係を築けるよう丁寧にコミュニケーションを取ることを心がけています。

健康診断などで異常を指摘された方は、遠慮せずにぜひ一度当院を受診いただきたいと思っています。治療が必要かどうかもその際に判断させていただきます。治療が必要な場合であっても、糖尿病を始めとした多くの疾患は適切な治療を受ければ、そうでない方と変わらない生活を送ることが可能です。

糖尿病の治療では単に血糖値を下げるだけでなく、それぞれの患者さんの合併症を把握したうえで、一人ひとりに合った薬を選択していく必要があります。同時に、肥満症も治療ができる時代になりました。糖尿病認定教育施設である当院では糖尿病の有無にかかわらず、処方できる抗肥満薬もありますので、ご自身が対象かどうか分からない方も、まずはご相談いただければと思います。

提供:大正製薬株式会社
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