インタビュー

糖尿病治療の最前線

糖尿病治療の最前線
小山 一憲 先生

国際医療福祉大学 教授

小山 一憲 先生

この記事の最終更新は2015年10月05日です。

現代の国民病ともいわれる糖尿病は、私たちにとってもっとも関心の高い病気のひとつではないでしょうか。この記事では「糖尿病治療の最前線」と題して、糖尿病やメタボリックシンドロームなどの生活習慣病を中心に豊富な臨床経験をもつ、国際医療福祉大学三田病院内科部長の小山一憲先生に、現在の糖尿病治療についてお話をうかがいました。

一般的に糖尿病の症状とされる口渇・多飲・多尿(のどの渇きから水を多量に飲み、尿の量が増えること)そして体重減少は、かなりの高血糖でなければ現れない症状です。具体的に言えば血糖値が300〜400mg/dlほどにならなければなかなか起こりません。ほとんどの患者さんはこのような自覚症状がない状態なのですが、血糖値が高い状態が長く続くと、血管が傷んで全身の合併症が出てきます。いったん合併症を発症すると治すのは難しいため、できるだけ合併症を起こさないこと、そして合併症を起こしたとしてもそれ以上の進展を防ぐということが大切です。それが健康な人と変わらないQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)の維持と寿命の確保につながります。

厳しいようですが、糖尿病は何もしないでいれば簡単に悪化してしまいます。血糖コントロールにおいて避けるべき5つのことがら「飲み過ぎ・食べ過ぎ・太り過ぎ・運動をしない・薬をのみ忘れる」のうち、どれかひとつでも当てはまる方は要注意です。加えて、「タバコ・ストレス・睡眠不足・生活の乱れ・治療の中断」を避けることも肝に銘じていただきたいところです。

食事療法の目的は糖尿病の代謝異常を改善し、健康な人と同じような日常生活を送れるようにすることです。主要なポイントをまとめると、以下のようになります。

  • 適正なエネルギー量
    エネルギーの余分な摂取を減らすことでインスリンの必要量を抑え、作用不足が改善されます。
  • 栄養素のバランス
    血糖値を適正にコントロールし、合併症を予防・改善するうえで、栄養素バランスよく摂ることが助けになります。
  • 規則正しい食事習慣
    食後の血糖値の変動を少なくすることで、インスリン不足の状態を回避します。

運動療法は代謝の安定と合併症の予防のために行います。以下の2種類の運動をそれぞれ単独ではなく組み合わせて行うと、より効果が高くなることが分かっています。

  • 有酸素運動はウォーキングやサイクリング、水泳など、中程度の負荷である程度の時間継続して行えるものです。血糖値を下げ、減量効果が期待できます。
  • スクワットやダンベル運動などのレジスタンス運動は、筋肉の量を増やして代謝を高めます。インスリン抵抗性(インスリンが効きにくい状態)を改善します。

しかしながら、長年続けてきた生活習慣を別人のごとく変えるというのは、一朝一夕にできることではありません。糖尿病の生活指導では、患者さんの日常生活の中で一番よくない習慣を見つけ出し、まずはそれを直していくということから始めていくようにしています。

糖尿病には1型と2型があり、2型が約95%を占めています。1型は膵臓でインスリンを出すβ細胞が壊れているためにインスリンが枯渇する病気です。最初からインスリンを補充することが治療の原則となります。

2型の場合はインスリンが残っているのですが、インスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなっていること)と、インスリンの分泌そのものの減少が合わさっているので、糖尿病が進行してインスリンの分泌がかなり落ちてきている場合、最終的にはインスリン療法が必要になります。

大多数を占める2型糖尿病の治療は最初に食事と運動、すなわち生活習慣を改善するということが中心です。それでも治療がうまくいかない場合に薬物治療を行うという順序になります。薬物治療を行う場合でも食事・運動療法は基本ですので、そのまま継続する必要があります。

1型:インスリン補充療法が治療の中心

2型:食事療法や運動療法で十分な血糖値の低下がない場合→インスリン以外の経口糖尿病薬による薬物療法、それでも効果がない場合→インスリン療法

薬物療法で使われる経口糖尿病薬には、次のような種類があります。

  • スルホニル尿素(SU)薬
  • 速効型インスリン分泌促進剤
  • DPP-4阻害薬
  • GLP-1受容体作動薬(※注射薬)
  • ビグアナイド薬
  • チアゾリジン薬
  • α-グルコシダーゼ阻害薬
  • SGLT-2阻害薬
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  • 国際医療福祉大学 教授

    日本糖尿病学会 糖尿病専門医日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医・内分泌代謝科指導医日本内科学会 認定内科医

    小山 一憲 先生

    慶應義塾大学医学部卒業後、テキサス大学ダラス糖尿病リサーチセンターなどで国際的な経験を積み、現在は国際医療福祉大学 内科教授。糖尿病・メタボリックシンドロームなどの生活習慣病を中心とした診療を行い、糖尿病療養指導士と協力して合併症に対するチーム医療を積極的に実践する。豊富な臨床経験を生かし、21世紀の新しい糖尿病治療をめざしている。

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