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糖尿病の検査と診断——それぞれの検査やモニタリングの意義

糖尿病の検査と診断——それぞれの検査やモニタリングの意義
梶尾 裕 先生

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 副院長 糖尿病内分泌代謝科診療科長 第一糖尿病...

梶尾 裕 先生

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糖尿病の検査には、診断の基準となる血糖値やインスリンのはたらきに関する検査のほか、合併症の検査や特殊な機器によるモニタリングなど、さまざまな種類があります。国立国際医療研究センター病院 副院長 梶尾 裕(かじお ひろし)先生に、糖尿病の検査の意義や診断基準などについてご解説いただきました。

血液検査では血糖値のほか、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)()GA(グリコアルブミン)の値などを調べます。

  • HbA1c

 血液中にヘモグロビンと糖が結びついたものがどれくらいあるのかを示しています。

 過去1~2か月の血糖値の平均的な状態を示しています。

  • GA

 血液中にたんぱく質と糖が結びついたものがどれくらいあるのかを示しています。

 過去1~2週間の血糖値の平均的な状態を示しています。

血糖値は測定時点における血液中の糖分の濃さを示しますが、血液検査で血糖値を測る場合にその推移を調べることまではできません。一方、HbA1cやGAを調べることで血管の中の状態について長期的な影響を知ることができます。そのほか、血管の状態を悪くするコレステロールや中性脂肪の値も測定します。

血糖値が高くなると尿中に糖が出るため、尿検査で糖の濃さを調べます。空腹時では尿に糖が出ないこともあり、食後に糖が出ることが多いことに注意が必要です。また、糖尿病性腎症になると尿中にたんぱく質が出るため、微量アルブミンの値も測定します。

糖尿病網膜症の進行は症状だけでは分かりません。眼底検査によって判定します。

頸動脈超音波検査

頸動脈超音波検査では、(くび)の左右にある頸動脈の状態を超音波検査(エコー検査)で調べます。頸動脈は総頸動脈という大きな動脈から内頸動脈と外頸動脈の2つに分かれており、枝分かれしている部分は血液の流れが渦を巻いて淀みができやすいため、動脈硬化が起こりやすくなります。頸動脈超音波検査でこの部分を中心に検査することで、動脈硬化を起こしていないかどうかを調べます。

脈波伝播速度

脈波伝播速度(Pulse Wave Velocity:PWV)は、心臓の拍動による波が血管を伝わる速度のことを指します。血管が硬いと波は速く伝わり、柔らかいと遅く伝わります。この速度を測ることで動脈硬化がどの程度進んでいるかを知ることができます。

足関節上腕血圧比

足関節上腕血圧比(Ankle-Brachial pressure Index:ABI)は、上腕と足首の血圧を測り、その比率を計算したものです。下肢(足関節)の血圧が上肢(上腕)に比べて下がっていると、血管の詰まりや血流が悪くなっている状況があると考えられます。

患者さんの容体や合併症のリスクに応じて検査を行います。

【検査の例】

  • 血圧
  • 心電図検査、冠動脈CT、シンチグラフィー
  • 肥満の検査(BMI、内臓脂肪の測定)
  • 頭部画像検査

など

糖尿病の慢性合併症の検査には、主に次の3つが挙げられます。

  • 神経障害に対する神経伝導速度の検査
  • 網膜症に対する眼底検査
  • 腎症に対する血液検査および尿検査

など

当院の場合、血液検査と尿検査については受診のたびに毎回行いますが、目の検査は特に異常がなければ通常半年か1年ごとに行っています。ただし、糖尿病が進んで急に状態が悪くなった場合などは臨時で検査を行うこともあります。

何らかの異常がみられた場合は検査の頻度を多くしてこまめに診ていきます。心臓の検査では、心電図だけでは状態が分かりにくく、かつ心筋梗塞(しんきんこうそく)狭心症などの冠動脈疾患のリスクが非常に高いと想定されるような場合、冠動脈CTやシンチグラフィーなど、より専門的な検査が必要になることもあります。

また、糖尿病は大腸がん膵臓(すいぞう)がん、肝臓がんのリスクを上昇させることも知られており、全身の容体が急に悪くなったような場合にはがんが合併している可能性を考えます。

持続グルコースモニタリング(Continuous Glucose Monitoring:CGM)は、皮下に入れたセンサーで皮下の間質液中のグルコース濃度を24時間連続的に測定し、その推移をモニターする方法で、特に1型糖尿病の方を対象に行われます。皮下の間質液中のグルコース濃度は血糖値とほぼ同じなので、1日の血糖値の変動を知ることができます。

患者さん自身が、CGMを用いて自分の血糖値を把握しながら注入するインスリンや食事のタイミングを調節することで、一人ひとりに適切な血糖コントロールを行うことが期待できます。さらに、その方の血糖コントロールがうまくいかないときの原因を医師が探るためにも有用です。

このようにCGMは、個別化医療のために有益な情報を取得し、治療方法を検討するうえで重要なツールといえます。

また、研究面では、それぞれの治療薬によって血糖値の変化の仕方にどのような違いがあるのかといったことを調べるためにも役立ちます。

近年ではフラッシュグルコースモニタリング(Flash Glucose Monitoring :FGM system)といって、腕につけたセンサーの上にリーダーをかざしてモニターするタイプのものもあります。

特にインスリンを補充している患者さんの場合には、持続的に血糖を測定して、適切な時間・量のインスリンを微調整したり、場合によっては補食をして低血糖を防いだりすることが必要になります。なぜなら1日に何回か空腹時血糖値を測って問題がなかったとしても、実際には食後に血糖値が高くなっていることもあれば、夜眠っている間に血糖値が下がって低血糖になっていることもあるからです。

また、インスリンの自己注射をしている場合、いつもと同じように注射をしているのに血糖値のコントロールが悪くなることがあります。その原因には、注射の仕方の問題や、あるいは同じところに注射をし続けているうちに血管にしこりができて、インスリンがうまく注入されなくなっていることなどが考えられます。

血糖値だけを診ていると、合併症やがんなどを見落としてしまう可能性があります。たとえば、「最近急に階段を上がるときに息苦しさを覚えるようになった」と患者さんが自覚されるようなときには、心臓が悪くなっているかもしれません。また、がんによる胃や腸からの出血で貧血が起きているかもしれません。

血糖値は食事や運動、生活習慣、ストレスにも影響されます。たとえば食事の内容が同じでも、食べる時間が不規則だったり睡眠時間が短くなったりすると、血糖コントロールが不良になることが予測されます。

糖尿病患者さんを診るにあたり、医師は単に検査をするだけではなく、患者さんの日頃の生活で何か変わったことがないかどうかをきちんと把握することが重要です。

糖尿病の診断は血糖値HbA1cの値などから総合的に行います。血糖値が高い状態が“持続する”ということが糖尿病の重要なポイントです。

現在の診断基準は、糖尿病網膜症を合併しているか、典型的症状が認められるかを加味したうえで、血糖値とHbA1cの値が一定以上であることを基準として考えられています。

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