概要
糖尿病性腎症とは、糖尿病に関連して発症する腎障害のことを指します。糖尿病で生じる小さい血管の合併症では網膜症や神経障害などがありますが、糖尿病性腎症はこれらと並んで3大合併症のひとつとして認知されている病気です。一般的に神経障害、網膜症、腎症の順で発症することが多いといわれています。
糖尿病は全身の血管に対して障害を起こす病気です。糖尿病性腎症の初期は自覚症状がないことがほとんどです。しかし、潜在的に腎障害が進行するため、最終的には腎臓の機能が失われて透析が必要となることもあります。
糖尿病性腎症を発症させないためにも、糖尿病のコントロールを保つことが重要です。また、高血圧に対しての介入も必要ですし、食事・運動に関しても注意することが求められます。
原因
糖尿病性腎症は、糖尿病に関連して発症する腎障害です。一般的に糖尿病発症後5〜15年程度で発症するといわれています。
糖尿病で高血糖が持続すると、慢性的な血管障害が引き起こされます。血管障害は特定の臓器に対して生じるわけではなく、全身各所において生じます。
腎臓の構造を細かく見ると、糸球体と呼ばれる小さな血管の塊が多数存在しています。糸球体は血液をろ過し尿をつくる機能を持っており、その役割上、生理的に多数の血液が流れる構造をしています。そのため、糖尿病による血管病変の影響を受けやすい臓器であるといえます。
高血糖が慢性的に維持されると、糸球体を中心として腎臓に障害が引き起こされます。フィルターのような役割をしていた糸球体がダメージを受けることで、本来は体外に排泄してはいけない、体にとって重要な物質も尿に漏れ出るようになります。
初期には糸球体の仕事量は増えますが、段々腎臓の機能が低下してくると、排泄すべき物質が体内に蓄積するといった不具合も生じます。その結果として、体内における必要物質と老廃物とのバランス関係が崩れることになります。
症状
糖尿病性腎症は、早期の段階ではほとんど症状を現さずに腎障害が進みます。潜在的に腎障害が進行してしまうことで、後々に問題を引き起こします。
糖尿病性腎症がある一定以上まで進行すると、当初は夜間頻尿や高血圧などを訴えることがあります。さらに腎機能低下が進行すると、水分や電解質の体内バランスをうまく調整できないようになり、全身のむくみや血圧上昇などといった病状が生じます。
最終的に腎不全の状態に陥ると、自身の腎臓だけでは全身のバランスをとることができなくなり、透析導入や腎移植を必要とします。
検査・診断
糖尿病性腎症の診断では、血液検査と尿検査が重要です。自覚症状がないまま進行する糖尿病性腎症ですが、より早期に病気を察知するためにも特に尿検査を行うことが重要です。糖尿病発症時期や網膜症など他の合併症の程度も診断の手がかりとなります。経過や尿検査の状況によっては、他の糸球体腎炎などとの鑑別のために腎生検を行うこともあります。
糖尿病性腎症が進行すると、アルブミンと呼ばれる物質が尿中に出てくるようになります。アルブミンは生体にとって必要不可欠なタンパク質であり、本来であれば体外に喪失されるべきものではありません。しかし、糖尿病性腎症ではフィルターの役割をする糸球体がアルブミンを尿に出してしまうため、尿タンパクが陽性になってきます。より早期に発見する必要があることから、微量の尿アルブミンを検出していきます。
また、血液検査も糖尿病性腎症では重要です。糖尿病性腎症が進み腎機能が低下した場合、クレアチニンという値を測定しながら、腎機能障害の程度を確認することになります。またその他腎機能低下に伴うミネラルバランスや全身への影響を評価します。
治療
早期の腎症であれば、血糖と血圧のコントロールによって腎症の改善が期待できることもあります。そのため早期発見がとても重要であり、定期的な尿アルブミン量の測定が大切です。
糖尿病性腎症では運動療法や食事療法がもっとも重要となります。適切なエネルギー量に注意しながら、腎臓に負担のかかりにくいような塩分やタンパク質の摂取量に注意を払います。薬物療法では、血糖降下薬や降圧薬及びインスリンなどを使用することがあります。腎臓排泄の薬も多いため、腎機能の低下に従って薬剤の調整が必要となります。
治療を継続しながら糖尿病性腎症の進行を防ぐことになりますが、ある一定レベルまで進行した状況では腎障害の程度は不可逆的になり、末期の腎不全に陥ると透析療法や腎移植が必要となります。
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