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糖尿病と付き合いながら元気に生活するために——治療目的と継続支援

糖尿病と付き合いながら元気に生活するために——治療目的と継続支援
梶尾 裕 先生

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科 非常勤

梶尾 裕 先生

目次
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糖尿病の治療は生涯にわたって続ける必要があるため、患者さん自身が治療の目的を理解して継続的に取り組むことが大切です。国立国際医療研究センター病院 副院長 梶尾 裕(かじお ひろし)先生に、治療の目的や糖尿病との付き合い方、治療の継続を支援する取り組みなどについてご解説いただきました。

治療によって糖尿病そのものを完全に治すということはできません。いったんよくなったようでも、油断すればまた血糖値が高い状態が続き、症状が悪化してしまいます。血糖値をよい状態に維持するためにも、定期的に患者さんに来院していただいて、私たちが患者さんをサポートすることが重要だと考えています。

また、治療を続けるために、患者さんには糖尿病のメカニズムを理解していただくとともに、今後自分の身に起こるであろうことについてもしっかり意識していただく必要があります。病気が進むとどんなことが起きるのか、そうならないためには今どうすればいいのか、ということを理解して実行することが大切なのです。

「あれもだめ、これもだめ」と言うのではなく、「こうすればいいんだ」という道筋を示すことが治療のモチベーションを維持することにつながります。患者さんが治療でつまずくようなことがあっても、私たちのことを思い出して「頑張ってみよう」と思っていただけるような関係でありたいと思っています。

若いときは突然状態が悪くなっても薬で血糖値をぐっと下げてコントロールすることができるかもしれません。しかし、年齢が高くなるほど体のさまざまなメカニズムを調整するはたらきが十分に作用しなくなったり、低血糖を起こしやすくなったりして、薬によって血糖値をコントロールすることが難しくなってきます。

高齢の方の場合は、血糖値をコントロールして合併症を抑えるとともに、日常生活をきちんと送れるようにして、元気に人生を全うしていただくということが大切です。糖尿病治療の理想は“糖尿病を起こさせないこと”なのかもしれませんが、糖尿病があっても健康なときと変わらない生活ができること、つまり生活の質をできるだけ落とさないことや、ご本人のやりたいことができるようにすることも治療の大きな目的です。

糖尿病患者さんの体を機械にたとえるならば、治療では、油が切れたり部品がさびたりして動きが悪くなったときにオイルを注入したり磨いたりしながらきちんと動くようにして、できるだけ長持ちさせるような作業を続けていくことが大切なのです。

当院では2002年4月から“生活習慣病教室”をスタートしました。その後、より糖尿病にフォーカスした“糖尿病教室”を立ち上げ、生活習慣病教室と糖尿病教室のいずれかを毎日開催するという形を取っています(院内感染防止対策強化のため、2020年2月25日より一時的に休講。再開にあたっては、当院のホームページでご連絡させていただきます)。

生活習慣病教室について

生活習慣病教室では、1つの部門だけでは対応しきれない生活習慣病に対する取り組みとして、循環器内科、神経内科、眼科などの各診療科に加え、人間ドック、臨床検査技師、薬剤師などそれぞれの観点や立場からお話をさせていただいています。入院している方でも、外来通院されている方でも参加いただけます。

糖尿病教室について

糖尿病教室は、医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、管理栄養士から糖尿病について知識を得ていただく場として実施しています。事前予約は不要です。入院・外来通院の方はもちろん、当院にかかったことのない方や患者さんのご家族も参加いただけます。また、他医療機関などに勤めるスタッフの方の見学も可能です。

患者さんが必要な知識を得たり質問したりできる機会を得ることで、より主体的に意欲を持って取り組むきっかけとしていただければと思っています。

希望に応じて2週間の教育・治療入院も行っています。食事、運動を中心に生活をきちんと整え、糖尿病教室への参加を通じてご自身の体調や病気に対する理解を深めます。もちろん、薬物治療が必要な方は、その方に合ったやり方で、その方の糖尿病の治療を並行して行います。さらに、高血圧脂質異常症などの合併症の評価も行い、結果に応じて治療薬を調整していきます。不規則な生活をリセットして、適切な生活習慣のために必要な行動と知識を得ていただくこと、そして治療薬の調整が大きな目的となります。

患者さんがご自分の体をよくしていただくことが一番大切ですので、そのためには何でもご質問ください。体を元気に保っていくためにはどうしたらよいかを相談しながら、私たちと一緒に病気を乗り越えていきましょう。

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  • 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科 非常勤

    梶尾 裕 先生

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