大腸内視鏡検査とは、肛門から内視鏡を挿入し、大腸内部を詳しく観察する検査です。おもに大腸がんや大腸ポリープ(粘膜に隆起したイボ状のできもの)をみつけるために有用とされています。
大腸内視鏡検査の流れや前日の過ごし方などについて、国立国際医療研究センター病院 人間ドックセンターの梶尾 裕先生にお話を伺いました。
大腸内視鏡検査とは、肛門から内視鏡(電子ビデオスコープ)を挿入し、最奥の盲腸から手前の直腸まで内視鏡を引き抜きながら、大腸内部の粘膜を詳しく観察する検査です。
当センターにおける大腸内視鏡検査は、おもに大腸がんの早期発見を目的に行います。
内視鏡検査は、電子ビデオスコープで病巣(病気の中心部)を直接観察できることが最大の特徴です。病巣の位置、大きさ、拡がりのほかに、表面の形状(隆起や陥凹(へこむ、あるいは窪んだ状態)など)、色調などを詳しく観察できます。
また、内視鏡検査は、観察と同時に組織の一部をとって病理検査(顕微鏡レベルで組織の状態を観察する)を行えるため、病気の判定に有用です。
「最近、便が細くなった」「排便時に出血していた(下血)」という症状がある場合、大腸がんが疑われるため、大腸内視鏡検査の受診を強くおすすめします。
また、はっきりとした症状がなくとも、40代以上の方には一度大腸内視鏡検査を受けていただくことを推奨しています。
大腸内視鏡検査では、おもに大腸がんと大腸ポリープ(粘膜層にイボ状に隆起した組織)をみつけることが可能です。そのほかに、下痢や腹痛、血便などの症状がある方については、大腸内視鏡検査で大腸炎や潰瘍(粘膜の表面が炎症を起こし崩れることで深部まで組織が欠損した状態)などがみつかる可能性があります。
当センターにおける大腸内視鏡検査の流れをご紹介します。
まず午前中(多くの場合、朝9時頃)に、前処置薬(下剤)を主治医の指示にしたがって内服します。前処置薬は、自宅で飲むケースが多いです。約2〜3時間、数回の排便で水様便(液体のような便)になります。
大腸内視鏡検査で使用する下剤の詳細は、記事3『大腸内視鏡検査で使用する下剤について』をご覧ください。
午後、便意がなくなってから来院します。検査着に着替え、希望者には鎮静剤(中枢神経系に作用し興奮を鎮痛する薬)の注射をして、検査を開始します。
鎮静剤の使用に関するポリシーは、内視鏡の挿入が困難なケースにのみ使う、あるいは希望者に使うなど、施設によって異なります。当センターでは、受診者が希望する場合に使用しています。
当センターでは、ほとんどの方が鎮静剤の使用を希望されます。しかしながら、副作用がまったくないわけではありません。なかでも高齢者の場合には、副作用が出やすい傾向があります。よって、鎮静剤の使用については、担当医とよくご相談ください。
大腸内視鏡検査では、内視鏡を肛門から挿入し、大腸内をくまなく観察します。
多くの場合、内視鏡を挿入してから盲腸(大腸の最奥部分)に到達するまでに5分ほどを要し、検査全体の所要時間は10〜20分ほどかかります。ただし、大腸の長さや形には個人差があるため、挿入が困難な場合にはより長い時間がかかることもあります。
検査後、少し休んでから帰宅します。鎮静剤を使った場合には、1時間ほど体を休ませます。基本的に、検査結果の報告書は後日自宅へ郵送されます。(病院によっては、再び来院することもあります。)ただし、その場で説明するべき重要な結果がみられた場合には、当日検査結果を説明することもあります。
大腸内視鏡検査を受ける前日は、以下の点に注意して過ごしましょう。
大腸内視鏡検査では、大腸内に二酸化炭素を入れて膨らませてから内視鏡を挿入します。そのため、検査後にお腹が張ることがあります。
検査後、1時間ほど休めば食事は可能ですが、お腹が張っている状態でたくさんの量を食べるとお腹が苦しく感じる可能性があります。そのため、ある程度お腹の空気が抜けてから食事をとることを推奨しています。
腸管が大きく屈曲している方など、内視鏡の挿入困難例では、ごくまれに内視鏡が大腸内の粘膜に接触して損傷を起こすことがあります。この場合、大腸粘膜や肛門付近から少量の出血が起こりえますが、一過性のもののため通常は数日経てば止まります。
一方で、大腸内視鏡検査のあと腹痛が日に日に強くなるような場合には、検査を受けた病院などに相談しましょう。
日本では、食事の欧米化とともに大腸がんは増加の傾向にあります。私たちにとって、いかに大腸がんを早期に発見し治療するかは、重要な課題といえます。
少し変だなと症状で気がかりなことがあっても大腸内視鏡検査をためらってしまう人は少なくありません。大腸がんもあまりに進行してしまうとさすがに手遅れになってしまう可能性があります。そこで、40歳以上で、大腸の検査をしたことがない方には、大腸内視鏡検査の受検をおすすめします。
なかには、大腸内視鏡検査に抵抗を感じる方もいらっしゃるかと思います。また、一般的には、帝王切開、腹部手術を受けた方、放射線照射などの治療をお腹に受けたことがある方、あるいは大腸憩室が多発している方などは癒着を生じていて腸の可動性や柔軟性が失われるため、大腸内視鏡検査が痛くて辛いと感じる方が多いとされています。
当センターでは、2018年5月に、軽く腸壁に押し当てられただけで自然に曲がる柔軟性のよい機能を備え、従来製品よりも細径化された大腸内視鏡スコープを導入しました。これにより、手術後の癒着で辛くてS状結腸までしか入らなかった方に対しても全大腸内視鏡検査が施行できるようになりました。
また、それでも抵抗があるという方には、大腸CT(肛門から炭酸ガスを注入して大腸を拡張させ、CT装置で画像を撮影する検査)という検査もあります。
私たちは、「大腸の検査をするべき方が、受けていない」という状況をできるだけなくすために、もっと気軽に大腸内視鏡検査、あるいは大腸CT検査を受けられる環境をつくっていきたいと考えています。また、少しでも気になる症状がある場合には、ぜひ大腸の検査を受けていただきたいです。
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科 非常勤
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