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糖尿病治療が困難な理由とは? 治療の継続におけるポイントを解説

糖尿病治療が困難な理由とは? 治療の継続におけるポイントを解説
日浦 義和 先生

大阪市立十三市民病院 副院長/糖尿病内分泌内科 部長兼内科部長

日浦 義和 先生

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生活習慣の改善が必要になることから治療が難しいともいわれる糖尿病。そのため、さまざまな観点から一人ひとりの患者さんに応じた治療方針や目標を決めていく必要があります。また、糖尿病についての正しい理解と、自己管理に基づいた治療の継続が必要不可欠です。

今回は、大阪市立十三市民病院 副院長の日浦 義和(ひうら よしかず)先生に 1型糖尿病2型糖尿病妊娠糖尿病の治療法や治療継続のポイント、低血糖を防ぐ対策などについてお話を伺いました。

糖尿病などの慢性疾患の治療は難しいといわれています。その理由として以下の3点が挙げられます。

  1. 自覚症状が乏しく、治療動機の維持が困難であること
  2. 完治が困難であり、一生涯治療を続けなければならないこと
  3. 薬剤治療だけではなく、生活習慣の改善が必須となること

生活習慣を改善するといっても、実際には生活習慣は仕事などのさまざまな影響を受け、一朝一夕に変えることは難しいといえるでしょう。また、食事などが制限されるため、楽しみが奪われると考える患者さんも多くいらっしゃいます。

では、どのように目標を立ててモチベーションを維持しながら治療を行えばよいか、次でお話しします。

糖尿病の治療目標は、高齢化で増加するサルコペニア(加齢に伴う筋肉量の低下)、フレイル(加齢による虚弱)や認知症の予防、管理をしながら、糖尿病合併症の発症、進展を阻止し糖尿病のない方と変わらない寿命とQOL(生活の質)を達成することです。そのためには、適切な血糖コントロールの目標値を設定する必要があります。血糖コントロールの指標をもとに、患者さんの年齢、ADL(日常生活動作)、合併症、ご本人の意思で何ができるか、家族のサポートや訪問看護を受けることができるかなどを踏まえて目標値を決めていきます。

『糖尿病診療ガイドライン2019年』では、合併症予防のための血糖コントロール(HbA1c:1~2か月間の平均的な血糖値が分かる数値)の目標値は7.0%未満と定められています。ただし、ご高齢の患者さんは上記の観点に加えて、認知機能も考慮したうえでガイドラインに基づき目標値を決めることになります。

糖尿病の治療方針は、食事療法、運動療法、薬物療法ですが、いずれも自己管理行動が必要になります。また、自己管理行動を促すには、正しい理解に基づいた継続的なセルフケア行動が欠かせません。これらが良好な血糖コントロールをもたらし、合併症の抑制、QOLの向上に有効であると考えられます。

そのためには、治療に必要な知識や方法を患者さんに過不足なく提供し、療養生活を支援することが重要といえます。

1型糖尿病に対しては強化インスリン療法が基本になります。近年は、1型糖尿病であっても過食の傾向があり肥満になる患者さんが多いため、食事療法をきちんと行うことも肝心です。インスリンが十分に補充され、血糖コントロールが安定しているようであれば、運動療法も積極的に行うように指導しています。

2型糖尿病に対してはまずは生活習慣の改善から始めます。具体的には、管理栄養士が患者さんの現在の食事の状況を確認し、それに対して適切な食事療法を行ったり、理学療法士が日常生活でできる運動の指導を行ったりします。それでも血糖値が改善しない場合にはインスリンの分泌状態に応じて適切な薬を処方します。

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画像提供:PIXTA

当院では、妊娠糖尿病の患者さんは、食前および食後の血糖測定を行い、測定結果に基づく食事指導や、必要であればインスリン治療を行います。早期の段階の患者さんであれば、食事療法や栄養指導、分割食などにより血糖値が上がらないようにすることで、薬を使うことなく治療を行うことも可能です。

妊娠中の患者さんの血糖コントロールがうまくいかず高血糖の状態が続くと、赤ちゃんの先天異常や合併症、さらには流産早産のリスクが高くなることが明らかになっています。その点を患者さんに正しく理解いただき、菓子類や炭水化物を取り過ぎないなどの治療に向けた行動に結びつけていただけるように丁寧な説明を心がけています。

治療を継続するためにはやはり患者さんご自身が主体となり、意欲的に治療に取り組むことがとても大切です。そのためにも体重、血圧、血糖値などの記録を患者さんご自身につけてもらうようにしています。

その一環として、間歇(かんけつ)スキャン式持続血糖測定を活用することも効果的であると考えられます。以下では、間歇スキャン式持続血糖測定について解説します。

2022年度の診療報酬改定に伴い、インスリン治療を行っている患者さんには、間歇スキャン式持続血糖測定器の使用が保険適用となりました。これは、腕に貼り付けたセンサーに専用のデバイスを近づけることで血糖値を測定するものです。

間歇スキャン式持続血糖測定の使用によって2週間の血糖値の変動を観察できるため、日々の生活の中で血糖値が高くなっているタイミングを知ることが可能になります。

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測定結果と患者さんの食事や生活の記録とを照らし合わせれば、高血糖になる原因が分かるため、生活習慣の改善につながります。また、自覚していなかった低血糖や高血糖に気付き、より正確に血糖をコントロールできるようになる点はメリットといえるでしょう。たとえば、夜間に低血糖を起こしていることが分かった方であれば、それに合わせて薬の調整や減量などを行うことが可能です。

間歇スキャン式持続血糖測定を使用すれば気になるときにいつでも自分で血糖値を測定できるので、患者さんが意欲的に治療に向き合うという観点からもメリットが大きいと感じています。

低血糖とは、血糖値が正常範囲以下に下がった状態のことをいいます。下がりすぎることにより交感神経(体を活動させるときにはたらく神経)が活性化したり、脳にブドウ糖が十分に行き届かなくなったりします。血糖値が70 mg/dL以下になると空腹感、脱力感、発汗、動悸、手足の震えなどの交感神経症状が現れます。血糖値が50 mg/dL以下になると頭痛や目のかすみ、眠気といった中枢神経(脳)症状が現れ、重症になるとけいれんや昏睡(こんすい)に至ることもあります。

糖尿病の治療をしている方が、薬やインスリンを過量投与してしまうことが原因に挙げられます。たとえば食事を取っていないにもかかわらず服薬する、インスリン注射を打ってしまうといったことです。ほかにも、過度な飲酒や激しい運動などが原因となる場合もあるため注意が必要です。

低血糖を防ぐためには、食事と薬のバランスを崩さないよう3食しっかりと食事を取り、きちんと薬を飲むことが大切です。また、過度な飲酒は控え、激しい運動をするときには補食を取るよう指導しています。

当院では、自覚症状や体重の増加などがあり低血糖が強く疑われる場合にも、まずは医師から説明した後、看護師による療養指導などを行いながら患者さんを細やかにサポートできる体制を整えています。

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