インタビュー

スルホニル尿素薬からSGLT-2阻害剤までの糖尿病薬剤のあゆみ―糖尿病薬の進歩(1)

スルホニル尿素薬からSGLT-2阻害剤までの糖尿病薬剤のあゆみ―糖尿病薬の進歩(1)
小山 一憲 先生

国際医療福祉大学 教授

小山 一憲 先生

この記事の最終更新は2015年10月06日です。

現代、糖尿病は非常に多くの方が関心を持たれる病気です。ご自身やご家族が当事者であるという方も多いでしょう。この記事では、これまでの糖尿病薬の進歩について、糖尿病やメタボリックシンドロームなどの生活習慣病を中心に豊富な臨床経験をもつ、国際医療福祉大学三田病院内科部長の小山一憲先生にお話をうかがいました。

これまでに開発されてきた糖尿病薬(主に経口で投与するもの)を時系列順に並べると、次のようになります。

  • スルホニル尿素(SU)薬
  • ビグアナイド薬
  • α-グルコシダーゼ阻害薬
  • チアゾリジン薬
  • 速効型インスリン分泌促進薬
  • DPP-4阻害薬(2009年発売)
  • GLP-1受容体作動薬(2010年発売)
  • SGLT-2阻害剤(2014年発売)

DPP-4阻害薬以降のお話は関連記事「21世紀の糖尿病新薬ラッシュ―糖尿病薬の進歩(2)」をご参照ください。

20世紀において糖尿病の薬といえばほぼスルホニル尿素(SU)薬しかありませんでした。すでにビグアナイド薬も登場していましたが、乳酸アシドーシス(血中に乳酸が蓄積して著しく酸性に傾くこと)の副作用があったため、一部でしか使われていなかったのです。

スルホニル尿素薬はインスリンの分泌を促進する薬ですが、低血糖を引き起こし、肥満を助長するといった副作用がありました。その後、低血糖を起こさない薬剤が次々に現れたため、スルホニル尿素薬の使用頻度は急減しています。

ビグアナイドについては1995年にメトフォルミン・ルネッサンスとも呼ばれる見直しがなされ、ヨーロッパを中心に、肥満の患者さんには非常によい薬であると評価されるようになりました。その結果、現在欧米では肥満をともなう糖尿病の患者さんにはファーストライン(第一選択薬)となっています。

日本ではビグアナイドについて、必ずしもファーストラインとされているわけではありませんが、肥満をともなう患者さんの割合が増えてきていることもあり、最近ではビグアナイドをファーストラインとする医師も多くなっています。

その後、食後血糖値の上昇をおさえるα-グルコシダーゼ阻害剤が登場しました。糖の吸収をゆるやかにする薬ですが、放屁(おならがたくさん出る)や腹部膨満感(お腹が張る)という副作用があるため、あまり好まれません。特に女性には抵抗があるようです。それほど効果の強い薬ではありませんが、食後の高血糖をおさえるには効果的な薬です。

次に出てきたチアゾリジン薬では、最初に出たトログリタゾンが期待されたのですが、重症の肝障害を起こすという副作用があったため、販売中止になってしまいました。

現在はその後に出てきたピオグリタゾンという薬だけが販売されています。この薬はインスリン抵抗性を改善して動脈硬化にもよいというメリットがありますが、その反面、副作用も多くみられます。

浮腫(むくみ)が出やすい(特に女性)、体重が増加する、高齢で心機能が低下している方では水がたまって心不全を起こしやすい、などの副作用があります。また、膀胱がんとの関連が疑われた時期もありましたが、10年間の調査の結果、関連は否定されています。動脈硬化改善のニーズから、狭心症心筋梗塞(しんきんこうそく)を併発している患者さんに対してピオグリタゾンを使うケースが比較的多いといえます。

速効型インスリン分泌促進薬は、スルホニル尿素(SU)薬の欠点を補った薬です。SUは強いインスリン分泌促進効果を持ち、長く作用する薬であるため低血糖を起こしやすくなります。また効きはじめが遅いため飲んでもすぐには効かず、食後の血糖値が上がってしまうという欠点もあります。

その点、速効型インスリン分泌促進薬は服用後すぐに効き始めるため、食後の高血糖をおさえることができます。また、短時間で効果が消失するので低血糖を起こしにくい薬です。ただし、毎食前に服用しなければならないので、きちんと服用しない方がいるという問題もあります。

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  • 国際医療福祉大学 教授

    日本糖尿病学会 糖尿病専門医日本内分泌学会 内分泌代謝科専門医・内分泌代謝科指導医日本内科学会 認定内科医

    小山 一憲 先生

    慶應義塾大学医学部卒業後、テキサス大学ダラス糖尿病リサーチセンターなどで国際的な経験を積み、現在は国際医療福祉大学 内科教授。糖尿病・メタボリックシンドロームなどの生活習慣病を中心とした診療を行い、糖尿病療養指導士と協力して合併症に対するチーム医療を積極的に実践する。豊富な臨床経験を生かし、21世紀の新しい糖尿病治療をめざしている。

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