糖尿病の方にとって、炭水化物(糖質)をどのように摂取するかは非常に大きな問題となります。血糖値が急激に上下してしまうと病気を進行させてしまうこともあるため、意識しながら食事内容を検討する必要があります。そのような患者さんに対して、「カーボカウント」と呼ばれる計算方法が有効であるといいます。カーボカウントとはどのようなものなのでしょうか? 横浜労災病院栄養管理部の張 日怜さんにご説明していただきました。
炭水化物(糖質)は英語で「carbohydrates(カーボハイドレイト)」と呼びます。これを略して「カーボ」と呼んでいます。また、食事中の炭水化物(糖質)量を把握して、食後の血糖値を調整する方法を「カーボカウント」といいます。食べる炭水化物(糖質)の量と、それを代謝するために必要なインスリンの量を知ることによって、食後の血糖値を安定させることができます。この方法では、食事に含まれる炭水化物(糖質)の量を「カーボ」という単位に換算します。
カーボカウントは、栄養素のうち炭水化物(糖質)のみを制限する「糖質制限食」、「低糖質食」、「低インスリンダイエット」などとは異なります。
アメリカでは1カーボを15gと設定しているのですが、日本において、多くの施設では炭水化物(糖質)1カーボを10gとカウントしています。これは日本の食品交換表は1単位が80kcalであり、炭水化物(糖質)20gに相当することから、こちらのほうが計算がしやすくなるためです。
基礎カーボカウントとは、毎食の炭水化物(糖質)量をできるだけ一定にすることで血糖値の乱降下を防ぎ、安定させる方法のことをいいます。基礎カーボカウントは、糖尿病の方全員が対象となる全般的な方法です。基礎カーボカウントでは、1日の摂取エネルギーのうち50〜60%を炭水化物(糖質)で摂取するように調整します。
応用カーボカウントとは、基礎カーボカウントとは違い、炭水化物(糖質)の量を毎回一定にする必要はありません。その代わり、食べる炭水化物(糖質)の量と、食前に計測した血糖値に合わせてインスリンをどれだけ投与するかをその都度調整する必要があります。
応用カーボカウントの対象者は、強化インスリン療法やインスリンポンプ療法中の1型糖尿病の方、インスリン依存状態に近い2型糖尿病の方、膵疾患による糖尿病の方が対象になります。
カーボカウントをする際に目安となる大切な数値が3つあります。
インスリン/カーボ比
1カーボの炭水化物(糖質)に対して、必要な超速効型インスリンの量のことを「インスリン/カーボ比」といいます。この計算式は以下のとおりです。
1日の総インスリン量(TDD)÷50
例えば、1日に必要な総インスリン量が50単位だとすると、50÷50=1、インスリン/カーボ比は1となります。すなわち、1カーボ(=炭水化物10g)に対して超速効型インスリン1単位が見合った量になります。
インスリン効果値
超速効型インスリン1単位で約3時間後にどのくらい血糖が下がるかという、インスリンの効果を示す値です。計算式は以下のとおりです。
1800÷1日の総インスリン量(TDD)
例えば、1日に必要な総インスリン量が30単位だとすると、1800÷30=60となり、超速効型インスリン1単位で、インスリン効果値は60となります。すなわち、もし何も食べないで超速効型インスリンを1単位打つと血糖は60下がることになります。仮に目標の食前血糖値を120と決めたとき、実際の食前血糖値が180であったとすれば、目標より60mg/dl高いわけですから、補正のために1単位のインスリンを打つ必要があることになります。
以上の2つの数値から、「食事に対して必要なインスリン」と「血糖補正のために必要なインスリン」を求めて足した数値が、食前に打つインスリン量となります。
【(インスリン/カーボ比)×(そのときに食べる糖質のカーボ数)】+【(実際の血糖値-目標血糖値)÷(インスリン効果値)】
なお、これらの計算で求められる値はあくまでも目安であり、個人差もあります。したがって実際のインスリン/カーボ比やインスリン効果値は、治療を実践する中で主治医や医療スタッフと振り返りを行い、常に微調整をしていくことが必要です。
食事をした後、血糖値が上昇する要因は90%が炭水化物(糖質)によるものだと考えられています。つまり、主食の重量(%)から炭水化物(糖質)量を算出することが、食事に含まれるカーボ量を知るうえで最も大切です。徳島大学の研究によれば、米飯の場合は重量の40%、パンや餅では50%、ゆで麺や芋類では20%が糖質と考えられます。
たとえば1食に150gの米飯を食べるとすれば、150g×40%=60g、すなわち6カーボの糖質をとることになるわけです。また日本人の平均的な食事では、副食に含まれる糖質は概ね20g・2カーボ程度と考えられています。米飯150gと主菜・副菜の組み合わせの食事であれば、主食6カーボ、副食2カーボ、計8カーボ分の食事となるわけです。
ただし、副食に糖質を多く含む食物、たとえばポテトサラダなどの芋類を使った料理や、小麦粉を使用する天ぷら・餃子などを食べる場合には、その量に応じて副食のカーボ数をカウントする必要があります。
基礎カーボカウント・応用カーボカウントどちらの方法であっても、炭水化物(糖質)だけに気を配るのではなく、タンパク質や脂質など、その他の栄養バランスや摂取量の確認、体重の変動のチェックを常にしていくことが大切です。
また、腎機能が低下している患者さんの場合は、カーボカウントを行うにあたり、低下具合に応じてタンパク質や塩分の制限を行う必要があります。また、栄養摂取量における炭水化物の割合も高く設定されますので、主治医や管理栄養士とよく相談して実行します。
しかし、糖尿病だからといってむやみに食事を制限し、食事の楽しみをなくしてしまうことはありません。
一般の方でも、食べ過ぎれば体重が増加します。カーボカウントはあくまでも食事療法の一つです。食事のバランスに留意しつつ、自分の体に見合った食事の方法を見つけていくことが、将来的に最も重要になってくるといえます。「おいしく食べる」と「体にいい食事を心がける」この2点を意識しながら、健康的で楽しい食生活を送っていただきたいと思います。
松澤内科・糖尿病クリニック 院長
周辺で糖尿病の実績がある医師
武蔵野赤十字病院 内分泌代謝科部長
内科、血液内科、リウマチ科、外科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経外科、呼吸器科、呼吸器外科、消化器科、腎臓内科、循環器科、心臓血管外科、小児科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、内分泌科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、緩和ケア内科、腫瘍内科、感染症内科、代謝内科、膠原病内科、頭頸部外科、総合診療科、病理診断科
東京都武蔵野市境南町1丁目26-1
JR中央線(快速)「武蔵境」南口 小田急バス、ムーバス(境南東循環):武蔵野赤十字病院下車 徒歩10分
東京医科大学 名誉教授
内科、血液内科、リウマチ科、外科、精神科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、腫瘍内科、感染症内科、消化器内科、糖尿病内科、内分泌内科、代謝内科、脳神経内科、老年内科、頭頸部外科、総合診療科、病理診断科
東京都八王子市館町1163
JR中央本線(東京~塩尻)「高尾」南口 京王バス 医療センター経由館ケ丘団地行き 医療センター下車 京王電鉄高尾線も利用可能 バス7分、JR横浜線「八王子みなみ野」無料シャトルバス運行 バス
内科、外科、腎臓内科、整形外科、泌尿器科、リハビリテーション科、循環器内科、消化器内科、糖尿病内科、人工透析内科、脳神経内科
東京都荒川区南千住5丁目10-1
東京さくらトラム(都電荒川線)「三ノ輪橋」都営バス:草43系統 南千住6丁目下車 徒歩5分、JR常磐線(上野~取手)「南千住」 徒歩7分、東京メトロ日比谷線「三ノ輪」 徒歩7分
山王病院・国際医療福祉大学 内科部長 (糖尿病・代謝)・ 国際医療福祉大学 講師
内科、アレルギー科、血液内科、リウマチ科、心療内科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、糖尿病内科、内分泌内科、代謝内科、膠原病内科、脳神経内科
東京都港区赤坂8丁目10-16
東京メトロ銀座線「青山一丁目」4番(南)出口 徒歩4分、東京メトロ千代田線「乃木坂」3番出口 徒歩4分
国立国際医療研究センター病院 糖尿病内分泌代謝科 医師
内科、血液内科、リウマチ科、外科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経外科、呼吸器内科、呼吸器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、小児外科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、乳腺腫瘍内科、膠原病科
東京都新宿区戸山1丁目21-1
都営大江戸線「若松河田」河田口 徒歩5分、東京メトロ東西線「早稲田」2番出口 徒歩15分
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