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糖尿病とはどのような病気? 糖尿病の種類と病態、合併症について

糖尿病とはどのような病気? 糖尿病の種類と病態、合併症について
日浦 義和 先生

大阪市立十三市民病院 副院長/糖尿病内分泌内科 部長兼内科部長

日浦 義和 先生

目次
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糖尿病には複数の種類があり、それぞれ原因や病態が異なります。また糖尿病を治療せずにいると、脳梗塞(のうこうそく)心筋梗塞のリスクになったり、合併症を引き起こしたりする恐れがあります。ですから、糖尿病について正しい知識を得ることはとても重要といえます。

今回は、大阪市立十三市民病院 副院長の日浦 義和(ひうら よしかず)先生に糖尿病の病態や治療をせずにいるリスクなどについてお話を伺いました。

糖尿病とは、血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)を下げるはたらきをするインスリンというホルモンが正しく作用しないことによって慢性的な高血糖状態が持続する病気です。インスリンが作用しなくなる理由は2つあります。1つはインスリンの分泌量が減少すること、もう1つがインスリンの分泌は正常に保たれているもののはたらきが悪くなること(インスリン抵抗性)です。インスリン抵抗性は、過食や肥満など生活習慣の悪化によって起こりやすくなることが分かっています。

厚生労働省が2019年に行った調査によると、糖尿病が強く疑われる方の割合は男性 19.7%、女性 10.8%となっており、2009年からの 10 年間で男女ともに大きな増減はありません。年代別にみると、年齢が上がるにつれてその比率は高くなっています。

糖尿病はその原因によって、1型糖尿病2型糖尿病、遺伝子異常や他疾患が原因の糖尿病、妊娠糖尿病に大別されます。それぞれの原因や病態などについてご説明します。

1型糖尿病は主に自己免疫異常によって生じます。ある種のウイルスへの感染など何らかの原因による自己免疫反応が膵臓(すいぞう)内のβ細胞(インスリンを分泌する細胞)破壊に関与するといわれています。細胞が壊れるとインスリンが分泌されなくなります。そのため、多くの場合でインスリンの投与が必要な状態に陥るのです。

1型糖尿病は比較的若い方が発症するといわれていましたが、近年は年齢に関係なく発症することが明らかになっています。

インスリンの分泌量が遺伝的に少ない、あるいは過食や運動不足などの生活習慣、およびその結果として起こる肥満が加わりインスリン抵抗性を助長させるために、インスリンが作用不足になることで生じます。2型糖尿病の場合、さまざまな要因が重なって発症することが多いですが、ご両親が2型糖尿病である方は発症率が高いといわれているため遺伝的な要素も大きいと考えられています。

2型糖尿病は高齢になるにつれて患者数が多くなっています。これには、加齢に伴うインスリン分泌能力の低下および肥満や過食、運動不足といった生活習慣の変化が関係しているといわれています。

糖尿病の原因となる病気の代表的なものとして、肝硬変慢性膵炎(まんせいすいえん)などが挙げられます。そのほか、甲状腺の病気や副腎機能障害といった内分泌疾患やある種の遺伝子異常によって起こる場合もあります。

妊娠をきっかけに発見された糖の代謝異常を妊娠糖尿病といいます。妊娠によって分泌される女性ホルモンの影響でインスリンのはたらきが悪化したり、肥満になったりすることが発症の要因として挙げられます。また、もともと糖尿病になりやすいタイプの方が妊娠することにより症状が出やすくなったとも考えられます。

出産退院後はインスリンなどの治療は必要なくなる場合が多いですが、長い年月でみると妊娠糖尿病であった方は将来的に糖尿病になる可能性が高いといわれています。

1型糖尿病では、口や喉の渇き、多飲多尿、さらに全身倦怠感といった高血糖に依存する症状が突然現れます。重症な場合には、ケトアシドーシスと呼ばれる極度のインスリン不足になり、意識不明の状態で救急搬送されることもあります。1型糖尿病では、このような症状が突然現れるまで気付かないケースが多いのが特徴です。

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2型糖尿病の場合、初期は無症状の場合がほとんどです。進行すると1型糖尿病と同じく口や喉の渇き、多飲多尿や全身倦怠感などの症状が現れます。2型糖尿病では、自覚症状がないときに健康診断血糖値が高いと指摘され、それをきっかけに病院を受診して糖尿病と診断される場合も多いと考えられます。

血糖値の高い状態が続くと最悪の場合、意識障害を起こす危険性が高まります。また、動脈硬化が進み脳梗塞心筋梗塞のリスクにもなり得ます。このように全身にさまざまな病気を引き起こす恐れがあるため、早期発見・早期治療が重要なのです。

さらには糖尿病の三大合併症である糖尿病神経障害、糖尿病網膜症糖尿病性腎症が進行しやすいと考えられます。これらの合併症に対しては各診療科と連携して治療を行う必要があります。次では、糖尿病の三大合併症について詳しくご説明します。

慢性的に高血糖が続くことにより末梢神経(まっしょうしんけい)が障害される病態を糖尿病神経障害といいます。長い神経から変性が生じるため、はじめに足に症状が現れることがほとんどです。具体的にはじんじんするような足先のしびれや冷えといった症状が出ます。なお、進行すると立ちくらみなどの自律神経の障害をきたすこともあります。

糖尿病網膜症は、高血糖によって眼球の内側にある網膜という部分の血液の巡りが悪くなったり血管が詰まったりすることで引き起こされる病気です。網膜に十分な血液が供給されなくなり、放置すると突然目が見えなくなる恐れがあります。

早期には自覚症状がないため、眼科での検査が必要になります。血糖値をきちんとコントロールすることは糖尿病網膜症の進行抑制や発症予防につながるため、眼科での治療と糖尿病治療のどちらもしっかりと行うことが重要といえます。

糖尿病性腎症とは、高血糖の状態が長く続くことにより腎臓がダメージを受け、腎機能が低下してしまう病態です。糖尿病性腎症が進行すると人工透析が必要になります。しかし、初期の段階では自覚症状がほとんどないため、尿検査によりアルブミンの値を調べ、腎機能が悪化していないかを確認します。

腎機能の悪化を防ぐためには、糖尿病の薬物療法に加えて、栄養指導や生活指導、運動指導を行うことが肝心です。

糖尿病の予防のために日常生活でできることとして、まず総摂取エネルギー量の適正化が挙げられます。ただし、高齢の方の場合などは食事のカロリーを制限すると筋肉量が落ちてしまうこともありますので、食事はきちんと取って間食に伴う過食を控えることを心がけてください。

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また、日常生活に運動を取り入れていくことも糖尿病予防には効果的です。今まで電車に乗っていたところを歩く、エスカレーターではなく階段を使うなど、日常生活の中で運動強度を上げて予防に努めましょう。

禁煙やお酒を控えることも重要といえます。特に飲酒の際はお酒のみならず“あて(つまみ)”が多くなり過食になりやすいため注意が必要です。

糖尿病の初期は自覚症状がない場合が多いため、早期発見には定期的に健康診断を受けることが大切です。糖尿病の発症には、複数の遺伝因子の関与、生活習慣およびその結果として環境因子が関係しています。家族内集積が高いため、ご両親が糖尿病であるという方は特にしっかりと検査を受けていただきたいと思います。

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