インタビュー

糖尿病神経障害の基礎知識―下肢切断のリスク

糖尿病神経障害の基礎知識―下肢切断のリスク
杉山 徹 先生

武蔵野赤十字病院 内分泌代謝科部長

杉山 徹 先生

菅野 一男 先生

かんの内科 院長

菅野 一男 先生

貴田岡 正史 先生

医療法人社団 明芳会 イムス三芳総合病院 内分泌(甲状腺)・代謝(糖尿病)センター センター長

貴田岡 正史 先生

目次
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この記事の最終更新は2015年04月08日です。

糖尿病神経障害は、神経周辺の酸素や栄養を送っている細い血管が障害されることに加え、代謝異常によりブドウ糖の代謝産物が過剰に神経に蓄積することが原因で生じる合併症です。

神経は

  • 末梢神経
  • 自律神経

の二つに分類されます。糖尿病神経障害ではその両方が障害を受けるため、多彩な症状が出ます。

糖尿病神経障害の主な症状
糖尿病神経障害の主な症状

末梢神経は感覚神経(痛みや冷たさを感じる)と運動神経(手足を動かす)で構成されています。糖尿病神経障害の場合、主に感覚神経が障害を受けます。

以下のような症状が見られます。

  • 両足のしびれ
  • ピリピリ痛む
  • 感覚が鈍くなる
  • 裸足で砂利の上を歩いている感覚がする

このような症状が見られた場合には注意が必要です。

さらに進行すると感覚が無くなることもあります。痛みや熱に対する感覚を失ってしまうことに加え、血管の障害により足への血流が悪くなってしまったり、糖尿病によって細菌に感染しやすくなってしまったりしているなどの理由から、足壊疽(足が腐る)の原因となることもあります。フットケアがとても大切です。

こういった一連の症状は足の片側ではなく両側に出てくる(左右対称性、手袋靴下型)のが特徴です。進行すると足だけでなく、手にも症状が見られるようになります。これは、長い神経の方が痛みやすいということに由来します。

感覚障害の進行様式
感覚障害の進行様式

また、末梢神経障害は上記の症状に加え、

  • 腱反射(アキレス腱反射、膝がい腱反射)
  • 振動覚(音叉の振動を何秒感じられるか)
  • 位置覚(目をつぶって親指の向きを判断できるか)
  • 神経伝導検査

などの検査で診断を行います。

自律神経は体の機能を調節する神経で、体温・脈拍・呼吸・血圧・涙や唾液や汗の分泌・胃腸の働き・心臓の働き・排尿・勃起機能など多くの機能がこれによって調節されています。したがって、これらが障害されるとその機能に障害をもたらします。

  • 唾液がうまく分泌できない→歯周病
  • 血圧がうまく調節できない→起立性低血圧(強度のたちくらみ)。立って尿をすると気を失ってしまう。食後に意識が遠のいてしまう
  • 胃や腸の働きがおかしくなる→消化不良、下痢や便秘を繰り返す
  • 膀胱の働きが低下する→尿の出が悪くなり、膀胱炎などにもつながる
  • 勃起するための神経障害→ED(インポテンツ)

神経障害の治療は基本的には対症療法になります。きちんと血糖コントロールをすることが大切です。

神経障害自体を抑える薬は今のところこれだけです。ブドウ糖の代謝産物が蓄積されることを防ぎます。

なによりもこれが大切です。血糖コントロールが悪いと神経障害が進みやすくなります。

各症状に対して行う治療です。例えば、神経の痛みには痛みを和らげる薬、便秘ならば便秘のお薬などといった具合に、特定の症状に対して治療を行います。根本的な治療法ではありません。

きちんと血糖コントロールをすることが大切です。次のような項目に当てはまるような患者さんは、神経障害の発症、及び進展のリスクがさらに高くなります。よりいっそう注意をし、定期検査を怠らないようにしましょう。

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