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チーム医療で行う大阪市立十三市民病院の糖尿病治療

チーム医療で行う大阪市立十三市民病院の糖尿病治療
日浦 義和 先生

大阪市立十三市民病院 副院長/糖尿病内分泌内科 部長兼内科部長

日浦 義和 先生

目次
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生活習慣の見直しや日々の自己管理が必要不可欠な糖尿病治療。治療においては患者さん、ご家族、スタッフが一丸となって治療に臨むことが重要です。また、患者さんの治療をサポートするためには、多職種のスタッフが緊密に連携を取る必要があります。

今回は、大阪市立十三市民病院における糖尿病治療について、チーム医療を中心に副院長の日浦 義和(ひうら よしかず)先生にお話を伺いました。

当院では、医師、看護師、管理栄養士、理学療法士、薬剤師、臨床検査技師のみならず、患者さんや患者さんのご家族を含めた糖尿病ケアチーム(DCT:Diabetes Care Team)を作り、糖尿病治療に取り組んでいます。職種間の垣根を取り払い、医療スタッフが患者さんやそのご家族と協力して糖尿病治療に向き合っているのが強みといえるでしょう。

患者さんの生活全体を把握し、さまざまな治療法の中からそれぞれの患者さんによりよい治療法を選択できるような医療の形、つまり“集学的アプローチ”を目指しています。そのためには、医師主導の治療ではなく、医療スタッフが一丸となって患者さんの行動を支えていくことが重要です。加えて、患者さんの話を聞き、生活習慣の改善などができない理由を理解できるように努め、そのうえで対策を一緒に考えていく個別化治療が必要であると考えています。

糖尿病ケアチームでは、月に1回糖尿病ケアカンファレンスを開催し、具体的な糖尿病治療の事例について話し合う場を設けています。たとえば、低血糖が起こった際のインスリン使用に関するマニュアルの作成、治療に関するインシデントの対策と検討などを行っています。多職種のスタッフがさまざまな角度から意見を出していくことが、一人ひとりの患者さんに対する細やかな治療の提供につながっているのです。

当院におけるチーム医療の特徴は以下の6点です。多職種のスタッフによる具体的な取り組みをご紹介します。

  1. 食事療法:管理栄養士による栄養指導
  2. 運動療法:理学療法士による運動指導、サルコペニア(加齢に伴う筋肉量の低下)およびフレイル(加齢による虚弱)への対策
  3. 薬物療法:外来でのインスリン製剤やインクレチン製剤(インスリンの分泌を増やす薬)の導入指導
  4. フットケア:足の観察の仕方の指導や爪切り
  5. 透析予防:腎機能に応じた食事療法と運動療法の指導
  6. 認知症対策:認知症評価、評価に基づく指導

栄養指導では、患者さん自身が改善点に気付き、自己管理に積極的に取り組んでいただくことが重要です。患者さんが普段食べている食事の写真を撮っていただき、それをもとに食事の指導をすることもあります。

それでもなかなか改善できないという場合には、医師や看護師、管理栄養士などが継続的に指導し、多職種のスタッフでサポートするようにしています。

運動に関する指導については理学療法士を中心に行っています。運動指導だけでなく加齢に伴う筋力低下の予防などにも努めています。

週3回を目安に運動するのが望ましいですが、現実的に難しい場合には普段の生活の中で運動強度を上げるようにお伝えしています。たとえば、エレベーターではなく階段を上る、1駅分歩くなどを実践してみるとよいでしょう。

薬剤師や日本看護協会認定の糖尿病看護認定看護師、大阪糖尿病療養指導士認定機構認定の糖尿病療養指導士などをはじめとする看護師が薬の指導を行っています。インスリンの指導については看護師が、そのほかの薬に関しては薬剤師が主に指導を担当しています。

糖尿病の方は足の傷から細菌が入って足壊疽(あしえそ)(足の組織が死ぬこと)を引き起こす恐れがあるため、巻爪やウオノメ、足に傷がないかを確認することが大切です。当院のフットケアでは、爪切り、ウオノメの除去、靴選びの指導などを看護師が行っています。

フットケア中に看護師と話すことが、患者さんの治療に対する意欲の向上にもつながっていると感じています。また、フットケアを通じて足の痛みが軽減されれば運動意欲につながるという意味でも足のケアを行うことは重要であると考えています。

血糖値が高い状態が長く続くと腎臓がダメージを受け、腎機能が低下します。最終的に腎不全に至った場合には、透析療法が必要となります。透析療法を必要とするような腎機能の低下を防ぐために、当院では看護師が患者さんの生活全般のチェックを行っています。食事に関することであれば看護師と栄養士が共同で栄養指導を行い、運動療法が必要な場合には理学療法士が運動指導を行っています。

糖尿病の患者さんにはそうでない方に比べてアルツハイマー型認知症を発症する割合が高いことが報告されています。また、高血糖によって血管が障害され、脳梗塞(のうこうそく)の発症や微小血管の血流低下による脳血管性認知症も増加しています。

認知機能が低下すると、糖尿病治療に必要な薬が飲めなかったり、規則正しい食事ができなくなったりするので、結果として糖尿病も悪化します。当院では、糖尿病の治療に必要な自己管理が正しくできていないなどの問題がみられ、認知症が疑われる患者さんに対しては、日本看護協会認定の認知症看護認定看護師が認知症の評価を行っています。糖尿病が悪化すると認知症になりやすくなり、認知症が進行すると糖尿病が悪化するという悪循環に陥るため、認知症の治療に介入することが重要であると考えています。

先方提供
血糖測定と知覚感覚テストの様子

当院では、地域の皆さんに糖尿病の予防と啓発を行うために毎年11月に糖尿病フェスタを行っており、2022年で14回目の開催となりました。糖尿病に関する講演だけでなく、血糖測定や頸動脈(けいどうみゃく)エコーによる動脈硬化の観察、食育SAT(サット)システム*を用いたバーチャルバイキングといった体験型の出し物も用意しています。理学療法士による運動指導も好評でした。

先方提供
食育SATシステムを用いたバーチャルバイキング

どういった出し物をするかは、毎年部門ごとに決めて、準備を進めています。糖尿病フェスタの準備などで協力することが日々の診療での多職種連携にも生きていると実感しています。

*食育SATシステム:ICタグ内蔵の実物大食品サンプルを使用して、栄養バランスの評価を行うことができるシステム

当院には糖尿病治療に取り組む皆さんのための患者会があります。新型コロナウイルス感染症の流行前は、患者会の皆さんと年始のお食事会や、春先のバスツアーといった催しを行っていました。一緒に食事を取りながら患者さん同士が親睦を深めるとともに、医師や看護師などから食事内容などについて学んだり、治療意欲を高めたりできる会となっていました。

特にバスツアーでは、高齢であることや車椅子であることなどを理由に外出の機会が少なくなっていた患者さんにとっては、体を動かしたりほかの患者さんたちと交流したりするチャンスになっていたと感じています*

*新型コロナウイルス感染症の状況を鑑みて、現在は実施していません(2022年12月時点)。

糖尿病は慢性疾患であるため、なかなか治療のゴールの見えない病気です。食事療法や運動療法のために長年の生活習慣を変えたり、薬に関して自己管理したり、勉強しなければならないことも多く、治療に前向きになれない患者さんもいらっしゃるかもしれません。

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2022年の糖尿病フェスタのバッジ

毎年、糖尿病フェスタの際にスタッフと来場された皆さんに付けていただくバッジに描かれているように、患者さんとご家族、そして医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士、臨床検査技師といった各職種の色とりどりの丸が同じ輪の中に描かれています。“全員が同じ立場で治療に取り組む”、これが当院のチーム医療の考え方です。したがって、決して患者さんが1人で頑張る必要はありません。それぞれ対等な立場で、より適切な治療方針を話し合って決めながら、“糖尿病”と闘うために頑張っていきましょう。

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  • 大阪市立十三市民病院 副院長/糖尿病内分泌内科 部長兼内科部長

    日浦 義和 先生

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