“STD(Sexual Transmitted Diseases)”とは性行為でうつる病気のことを指し、性感染症とも呼ばれます。症状が現れている場合だけでなく、STDの原因となる病原体に感染していて無症状の場合も含めた総称として“STI”と呼ばれる場合もあります。なお、STDには病原体によってさまざまな種類があり、それぞれで症状や治療に違いがあります。
本記事では、STDの主な種類について詳しく解説します。
STDは感染者の血液・腟分泌液・精液などの体液が相手の性器・腸管・口の粘膜などに触れることで病原体に感染します。この病原体にはさまざまな種類があり、病原体の種類によって症状や治療法が異なります。
以下では細菌・ウイルス・寄生虫・節足動物という病原体別に解説します。
細菌によるSTDには、梅毒、淋菌感染症、性器クラミジア感染症などがあります。
梅毒とは梅毒トレポネーマと呼ばれる細菌によって生じるSTDです。治療をしなければ数年をかけて進行し、重い症状を引き起こす可能性があります。
まず第I期では、感染した部分(性器や口・喉など)に痛みのない潰瘍(しこり)が現れ、第II期では発疹・発熱などが見られます。これを放置すると、第III期ではゴム腫と呼ばれる腫瘤の発生や心血管・神経への合併症などが見られます。
梅毒の治療では、主にペニシリンという抗菌薬が使用されます。
淋菌感染症は淋菌と呼ばれる細菌によって生じるSTDです。
感染しても症状が現れない場合もありますが、男性では尿道に痛みが生じるほか、陰茎部が赤く腫れ、膿が出ることもあります。一方、女性では腟から膿のような分泌物が出るほか、排尿に痛みが生じたり、感染が卵管・腹膜などに広がると強い腹痛が生じたりすることもあります。なお、肛門性交では直腸に、口腔性交では喉に感染を引き起こすこともあり、それぞれ痛みが生じることがあります。
淋菌感染症の治療では主にセフトリアキソンやスペクチノマイシンなどの抗菌薬が使用されます。
性器クラミジア感染症とは、クラミジア・トラコマチスという細菌によって生じるSTDです。
男性の場合には排尿時の痛みや陰茎からの濁った分泌液が見られます。一方、女性では症状が現れないこともありますが、不妊症や流産のリスクが高まるため注意が必要です。症状がある場合には頻尿や排尿時の痛み、腟から黄色い粘液や膿のほか、性交痛が生じることがあります。口腔性交により喉に感染した場合、症状は現れないことが多いですが、肛門性交で直腸に感染した場合は痛みや黄色い粘液・膿が生じることがあります。
治療には、アジスロマイシンやドキシサイクリンなどの抗菌薬が使用されます。
ウイルスによるSTDには、性器ヘルペスや尖圭コンジローマなどがあります。
性器ヘルペスとは単純ヘルペスウイルス(HSV)によって生じるSTDです。
陰部や肛門部に痛みを伴う水疱が生じるほか、排尿に痛みが生じることもあります。女性の場合、腟や子宮頸部にも水疱が生じることがありますが、これらの部位に生じる水疱は痛みを感じにくいことがあります。
性器ヘルペスは抗ウイルス薬の治療によって症状を緩和することは可能ですが、根治はできません。そのため、体調が悪くなると再発してしまうことがあります。
尖圭コンジローマとはヒトパピローマウイルス(HPV)によって生じるSTDです。
感染した部分にいぼが生じ、痛み・かゆみが生じることもあります。いぼは男性の場合、尿道や陰茎、包皮の下などにでき、女性の場合、外陰部・腟壁・子宮頸部などにできます。
尖圭コンジローマの治療は、薬による治療と外科治療があります。外科治療では手術のほか、レーザーによる蒸散、電気メスによる焼灼などが検討されます。
寄生虫によるSTDには、トリコモナス症などが挙げられます。
腟トリコモナスと呼ばれる原虫によって生じるSTDです。
男性の場合、無症状か軽い症状であることもありますが、陰茎から泡状の分泌物が出るほか、排尿に痛みが生じることもあります。女性の場合、腟から生臭く泡立ったおりものが生じるほか、陰部の痛みや腫れなどが見られます。
トリコモナス症などの寄生虫によるSTDでは、抗菌薬による治療が行われます。
節足動物によるSTDにはケジラミ症などが挙げられます。
主に陰毛に寄生するシラミで、皮膚に強いかゆみが生じます。
ケジラミ症の治療では、陰毛の剃毛のほか殺虫効果のある外用薬(パウダー)などが使用されます。
STDは原因となる病原体によってさまざまな症状が現れ、その種類によって適切な治療法が異なります。感染が疑われる人と性行為をした場合や気になる症状が現れた場合には、放置をせずに医療機関の受診を検討しましょう。
男性の場合、感染症内科や性病科のほか、性器に症状が現れている場合には泌尿器科、皮膚科などを検討してもよいでしょう。女性の場合、感染症内科や性病科のほか、性器に症状が現れている場合には産婦人科や皮膚科などを検討してもよいでしょう。また、自身がSTDと診断された場合にはセックスパートナーにも感染している可能性があるため、病院の受診を検討するように伝えましょう。
グローバルヘルスケアクリニック/内科・感染症内科・小児科・アレルギー科・トラベルクリニック 院長
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