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先天性甲状腺機能低下症の治療――1日1回の内服治療でコントロールできる病気

先天性甲状腺機能低下症の治療――1日1回の内服治療でコントロールできる病気
河野 智敬 先生

埼玉県立小児医療センター 代謝内分泌科 医長

河野 智敬 先生

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生まれたばかりのお子さんが“先天性甲状腺機能低下症”と診断され、「将来しっかり成長していくことができるのか」、「やりたいことがあっても我慢させなければいけないのか」など、いろいろな不安を抱いてしまう親御さんは多いと思います。しかし、先天性甲状腺機能低下症は決して難しい治療を要する病気ではなく、1日1回の服薬でほかのお子さんと変わりなく成長していくことができる病気です。今回は、埼玉県立小児医療センター 代謝内分泌科の医長でいらっしゃる河野 智敬(こうの ともたか)先生に、先天性甲状腺機能低下症の治療法についてお話を伺いました。

甲状腺ホルモンは、子どもの成長・発達においてとても重要なホルモンです。特に、日々どんどん成長していく赤ちゃんにおいては欠かすことができません。甲状腺ホルモンの不足状態が続くと、体の成長や知能の発達に影響を及ぼす恐れがあるため、そういった影響を回避するために、診断がついたらできるだけ早く治療を開始することが重要です。

先天性甲状腺機能低下症の治療は、1日1回の甲状腺ホルモン製剤(レボチロキシンナトリウム)の内服です。これはその名のとおり、不足している甲状腺ホルモンを補うための薬で、定められた用法・用量をきちんと守っていただければ、生まれたばかりの赤ちゃんから問題なく使用できます。

投与量は患者さんごとに異なり、精密検査の際のデータや患者さんの症状などを総合的に判断しながら決めていきます。その後は、定期的に通院していただき、その都度ご本人の状態やデータを確認しながら、薬の投与量を調整します。

先天性甲状腺機能低下症は、この甲状腺ホルモン製剤の内服を毎日しっかり継続していただくだけで、症状をコントロールすることができます。また、新生児マススクリーニングで速やかに発見し、早期に甲状腺ホルモン製剤を投与できれば、将来の身体的な発育や、知的発達への影響についても大きな心配は必要ないでしょう。

ただし、もともと重症の患者さんにおいては、早期に治療を開始しても、軽度の発達遅滞が生じる可能性を指摘した報告もあります。どのような方にそういったことが生じやすいのかについては、明らかにはなっていない状況です。

先天性甲状腺機能低下症では、毎日の服薬以外に特に気を付けていただくことはありません。また、日常生活において制限しなければいけないことは特になく、ほかのお子さんとの集団生活についても特に注意事項などはありません。

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提供:PIXTA

甲状腺ホルモン製剤がいつまで必要になるかは、大きく2つのパターンがあります。

1つ目は、生涯にわたり服薬が必要となるパターンです。甲状腺の形態異常(甲状腺がない・小さい・本来と異なる場所にある)や、甲状腺の機能異常(甲状腺ホルモンがうまくつくられない)による先天性甲状腺機能低下症の場合、根本的な原因を取り除くことができません。そのため、基本的には生涯にわたって甲状腺ホルモンを外から補充してあげる必要があります。

2つ目は、3歳以降に服薬を中断できるパターンです。胎児期のヨード(ヨウ素)過剰が原因で起こってしまった先天性甲状腺機能低下症など、一過性の原因が疑われる場合、ご本人の甲状腺機能には基本的に問題がないため、時間の経過とともに甲状腺ホルモン分泌の正常化が期待できます。

いずれにしても、治療継続の必要性については、3歳以降にホルモン負荷試験などを行い判断します。その結果、甲状腺ホルモン製剤の服薬が不要と判断された場合には、服薬をいったん中断します。そのうえで服薬しなくても甲状腺機能に問題がないかを確認するために、小学校に上がるくらいまでは定期的に通院していただくようにしています。

医師から服薬が必要と言われているにもかかわらず、怠薬や中断をしてしまうと、特に乳幼児期においては成長や知能発達に悪影響が及ぶ恐れがあります。また、それ以降のお子さんであっても薬を中断してしまうことで、疲れやすさ、肥満、四肢冷感、便秘、むくみなどのさまざまな症状をきたす可能性があります。

先天性甲状腺機能低下症で薬が自己中断されるケースは少ないですが、中断するとこうした症状をきたす恐れがあるため、きちんとお子さんの服薬について管理してあげることが大切です。

前述のとおり、先天性甲状腺機能低下症では服薬が何よりも大切です。そのため、当センターではお子さんに先天性甲状腺機能低下症が見つかり、内服が必要と判断した時点ですぐに親御さんへの服薬指導を行うようにしています。

生まれたばかりの赤ちゃんに自宅で薬を飲ませることは、慣れていないとそう簡単ではありません。特に初めてのお子さんで、赤ちゃんに薬をあげた経験がなければ、なおのこと難しいと思います。そこで、当センターでは、自宅でスムーズに服薬を継続していけるよう、投薬方法やコツについて、看護師による指導・ケアを実施しています。

具体的には、シリンジやスポイトなどを用いて、偽薬(乳糖など)を実際に赤ちゃんに飲ませていただく経験をしていただいています。甲状腺ホルモン製剤は水に溶けにくいため、むせ込まないよう上手に薬を口の中に入れ、少しずつ白湯を流し込んでいただく方法で指導しています。また、内服を続けていくうえで困ったときの対応など、さまざまな注意点を看護師に確認することもできます。

先天性甲状腺機能低下症は、生涯にわたり甲状腺ホルモン製剤が必要となることもあります。しかし、1日1回服薬をしなければならないこと以外は、日常生活で制限しなければならないことや注意しなければならないことも特にありません。服薬だけ忘れずに継続していくことができれば、病気を持っていないお子さんと同じように、普通に成長発育していくことが可能です。

生まれたばかりの赤ちゃんに病気が発見されると、親御さんは不安で仕方がないと思います。しかし、薬が必要なこと以外は、ほかのお子さんと何ら変わりない病気であると前向きに捉え、これからの成長を見守っていただければと考えています。先天性甲状腺機能低下症があるからといってできないことは何もありませんので、お子さんが将来へ向けて大きな夢を持ち、いろんなことに果敢にチャレンジできるよう願っています。

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