編集部記事

低侵襲心臓手術(MICS)の入院期間はどれくらい? ~従来の心臓手術より短い期間で、早い社会復帰が見込める~

低侵襲心臓手術(MICS)の入院期間はどれくらい? ~従来の心臓手術より短い期間で、早い社会復帰が見込める~
西 宏之 先生

独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科 科長

西 宏之 先生

一般社団法人 日本低侵襲心臓手術学会

目次
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従来の手術方法よりも患者の体にかかる負担が少ないといわれる低侵襲心臓手術(ていしんしゅうしんぞうしゅじゅつ)MICS)。出血が少なく、胸骨正中切開を避けることから術後より早期に回復し、社会へ復帰できることが期待されています。美容的な効果も非常に大きいです。

このページでは、低侵襲心臓手術の入院期間の目安や手術までの流れ、手術後の生活の注意点などについて詳しく解説します。

MICSの入院期間は、病気の種類や患者の状態によっても異なります。ただし一般的に従来の心臓手術と比較してMICSは入院期間が短く、社会に早く復帰できるといわれています。

具体的には、従来の心臓手術後の入院期間が2~3週間程度であるのに対し、MICSによる心臓手術後の入院期間は5~10日程度であることが一般的です。術後は早くて2週間、平均3~4週間程度で元の日常生活を送れるようになるといわれています。

MICSは全身麻酔下で行われます。肺の合併症を避けるためにも、日頃喫煙習慣のある方は、手術が決まった時点から禁煙を行いましょう。

また、入院に向けて必要となる持ち物も準備しておきましょう。これは各医療機関によって異なりますが、着替えや上履き、ティッシュペーパー、コップ、タオルなどをそろえておくとよいでしょう。

基本的に手術前には検査入院を行う必要があります。入院開始時期には大きく2つあり、手術前の検査と手術をまとめて行うパターンと、別々に行うパターンがあります。

検査と手術を別々に行う場合は手術入院の前に検査入院が必要となり、計2回入院することになります。まず検査のために3~7日ほど入院し、その後あらためて手術の2日ほど前に入院することが一般的です。検査と手術をまとめて行う場合は手術前に検査を行うため入院期間が数日延びますが、入院が1回で済むという利点もあります。医療機関とよく相談して決定しましょう。

手術の前日には、再度手術の内容などについて詳しく説明を受けます。

手術室に入室してから集中治療室に戻ってくるまでは、実際の手術時間に加え、術前準備の時間、術後の時間、移動時間もあります。実際にかかる時間は、病気の種類や患者さんの状態によっても異なります。担当医からおおよその時間を聞いておくとよいでしょう。

患者の状況にもよりますが、手術後は翌日から食事を取れるようになることが一般的です。リハビリテーションはベッドサイドの立位から始まり、病棟内の歩行など、徐々にできることを増やしていきます。

MICSの場合、術後5~10日程度で退院できることが一般的です。

退院後の1~2週間はリハビリテーション期間と考え、日常生活を送りながら体力の回復を心がけましょう。以下では、退院後の外来受診や日常生活での注意点について解説します。

退院後は1~2週間の間を空けて外来受診をすることが一般的です。ただし、受診前に以下のような症状が現れた場合には、より早い段階で受診を検討しましょう。

速やかな受診が必要な場合

  • 38℃以上の高熱が続く
  • 傷に赤みが生じている
  • 傷から液体が出ている
  • 脈が乱れ、動悸がする
  • 息苦しさを感じる
  • 出血が生じる など

また、その後も2~3か月に1回程度の頻度で受診し、心臓の状態などを定期的に観察します。心臓の病気以外にも何らかの持病がある方は、その治療も欠かさず行いましょう。

運動

退院後しばらくは足の付け根の傷を守るために、正座やあぐらなどの体勢を控えましょう。散歩程度の軽い運動は体力の回復のためにも効果的です。デスクワークは体に負担がかからない限りは比比較的早期から可能です。しかし激しい運動を開始するタイミングは、担当医と相談することが大切です。

入浴

傷の消毒やガーゼによる保護が不要になればシャワーを浴びることが可能です。傷をこすらないようにすることが大事です。傷に前述のような変化がみられた場合には、速やかに医療機関を受診しましょう。また、担当医から許可が出るまでは、浴槽につかることは控えましょう。

治療薬

退院後はさまざまな治療薬が処方されます。途中で服用を中止せず、決められたとおりに服用しましょう。

食事

退院後大きな食事制限はありません。バランスのよい食事を取り、体力の回復を目指しましょう。

ただし、抗血液凝固薬“ワルファリン”を内服する方は、納豆などビタミンKを含む一部の食事に制限が行われます。担当医の説明をよく聞きましょう。

MICSが適応となる場合は従来の心臓手術と比較して回復が早く、術後速やかに社会復帰できる可能性があります。美容面での効果も大きいです。また手術費用はどちらの手術方法を選択した場合でも保険適用となるため、大きな違いはありません。手術方法について疑問点・不安点があれば、担当医とよく相談するようにしましょう。

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    西 宏之 先生

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