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早期肺がんに対する手術――根治性に加え術後の生活も重視し、手術方法を検討

早期肺がんに対する手術――根治性に加え術後の生活も重視し、手術方法を検討
畑地 治 先生

松阪市民病院 院長

畑地 治 先生

樽川 智人 先生

松阪市民病院 呼吸器外科 科長

樽川 智人 先生

目次
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肺がんには手術、放射線治療、薬物療法、化学放射線療法(放射線治療と薬物療法を同時に行う)などの治療法があります。どの治療を選択するかは、がんの進行度や性質、体の状態などを考慮して判断します。このうち、手術はがんを取り切る治療法で、松阪市民病院では開胸手術、胸腔鏡(きょうくうきょう)手術、ロボット支援下手術の3つの方法に対応しています。

今回は、同院 院長で呼吸器センター長の畑地 治(はたじ おさむ)先生、同院 呼吸器外科 科長の樽川 智人(たるかわ ともひと)先生に、肺がん手術の目的やそれぞれの手術方法の特徴、術後の生活などについてお話を伺いました。

早期の肺がんに対しては、手術による切除を検討します。手術においては、根治を目指しつつ、呼吸機能を維持するために患者さんの体の状態をみながらできるだけ肺を残すことも考慮することが重要です。呼吸機能が不十分な状態で肺を大きく切除してしまうと、呼吸機能がさらに低下してしまい、術後の生活の質に影響を及ぼしかねないためです。

イラスト:PIXTA/素材加工:メディカルノート
イラスト:PIXTA/素材加工:メディカルノート

肺は、右が上葉、中葉、下葉、左が上葉、下葉と合わせて5つに分かれています。肺がんの切除方法は、切除範囲によって以下の3種類に分けられます。縮小手術には、肺葉の中のがんがある区域のみを切除する区域切除、さらに小さくがんとその周囲のみを切除する部分切除があり、患者さんのがんの進行度などに合わせて切除範囲を検討します。

  • がんのある肺葉を全て切除する肺葉切除術
  • がんのある側の肺を全て切除する片側肺全摘術
  • 可能な限り肺を温存するため肺葉の一部分のみを切除する縮小手術

がんの進行度が同じでも、がんが左右どちら側の肺に発生しているか、また肺の中心部にあるか外側にあるかによって切除範囲が異なる場合があります。たとえば左肺の下葉に発生したがんを肺葉切除術で切除する場合、4つの肺葉を温存することができます。しかし、右肺の気管支付近に発生したがんを肺葉切除しようとすると、がんが発生していない中葉、下葉までの3つの肺葉を切除することになってしまうため、肺の機能を温存することが難しくなります。このように肺がん治療では、がんがどこに発生しているかも含めた切除範囲の検討が求められます。

加えて、切除範囲を検討するには、患者さんが本来持つ肺の機能についても考慮しなければなりません。これまで病気を経験していない肺と、肺炎を繰り返していたり喫煙により大きなダメージを受けていたりする肺では、アプローチが異なってくるでしょう。

手術では肺がんの切除範囲に加え、術式(手術方法)についても検討します。肺がんの手術方法には開胸手術、胸腔鏡手術、ロボット支援下手術があり、当院はこれら3つの方法全てに対応しています。

開胸手術

胸部を大きく切開し、肋骨(ろっこつ)の間を押し広げて行う手術で、リンパ節への転移の有無などを確認したうえでがんを切除します。医師が胸の中を直接見て確認しながら執刀できて、施術箇所以外での出血などの予期せぬ事態が起こっても対応しやすいというメリットがあります。

胸腔鏡下手術

胸部を小さく切開し、胸腔鏡(胸部の内部を映す細長いカメラ)を挿入してモニターに映った画像を見ながら行います。切開範囲が小さく済むため体への負担が少なく、傷あとが目立ちにくい方法です。一方で、手術器具の操作性が制限されることもあります。

当院では、肋骨の間に2cm程度の穴を3つ開ける多孔式手術と、4cm程度の穴を1つ開ける単孔式手術を行っています。肺の手術では、切開時に神経が障害されることにより術後に肋間神経痛(ろっかんしんけいつう)などの痛みが出てくることがありますが、単孔式手術では痛みのもととなる切開が1か所で済む点がメリットとして挙げられます。

ロボット支援下手術

医師がロボットを遠隔操作して行う手術です。胸部の切開箇所が5か所と胸腔鏡手術よりも多くなるものの、3次元画像で拡大できるため術野がクリアになります。また、ロボットアームを使用するため、人ではできない角度の大きな腕の動きや人の手よりも繊細で緻密な動きが可能です。開胸手術の術野の広さと胸腔鏡手術の低侵襲性(ていしんしゅうせい)(体への負担が少ない)という利点を併せ持っているといえるでしょう。

先方提供

当院では、呼吸器内科、呼吸器外科の医師からなる呼吸器センターのカンファレンスで治療方針を決定しています。手術が必要となれば、呼吸器外科の医師全員でがんの進行度や呼吸機能、全身状態を考慮してその方に合った切除範囲や手術方法を検討し、患者さんに十分にご説明したうえで決定していきます。今はインターネットで治療法などを調べられる時代で、一定の知識をお持ちの患者さんもいらっしゃいます。患者さんの疑問を払拭し、ご要望に応えるためには全ての手術方法について技量を磨き、アップデートを続けなければなりません。どの方法にもよい点があるからこそ、あえて1つの方法に特化せず全ての手術方法に取り組み、医師がそのよさを体感することを重視しています。そして、自らの執刀経験をもとに一人ひとりによりふさわしい方法を提案し、患者さんの安心につなげられればと考えています。

当院では、手術方法を問わずほとんどの患者さんが術後1週間程度で退院されています。

患者さんによって術前の肺の機能や術後の痛みの感じ方は異なるため、退院後はご自身のペースでできることを増やしていっていただきたいと考えています。痛みを強く感じる方には、痛み止めの薬を処方することもあります。運動や車の運転なども、様子を見ながら無理のない範囲で再開されるとよいでしょう。手術をしたからといって何かができなくなるというわけではないので、徐々に日常生活を取り戻していってください。

手術後は定期的に受診いただき、経過をチェックしていきます。遠方にお住まいの方やご高齢で当院への通院が難しい場合には、ご自宅の近隣の病院にフォローをお願いするケースもあります。

がんは術後5年たつと再発する可能性が低くなるため、肺がんに限らず多くのがんで術後の経過観察期間は5年とされており、当院でも5年以上の通院を基本としています。まずは手術の1~2週間後に一度受診いただき、傷の状態などを確認します。その後は1~2か月おきに来院いただき、傷の回復や体調に合わせて3か月、半年と徐々に通院間隔を伸ばしていきます。ただし、強い痛み、発熱や咳などの感染症を疑う症状、再発や転移を疑う症状があれば、定期受診日でなくても早めに来院いただくようお話ししています。万が一再発したとしても、近年は薬物療法が大きく進展していますし、当院では呼吸器内科と呼吸器外科が連携して患者さんに合った治療を見出していきます。治療や経過観察を続けるなかで不安を感じたら何でもご相談いただければと思います。

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