志摩市の三重県立志摩病院は、内科・外科・整形外科の3科を中心に全16の診療科を擁する、志摩地域でただ一つの総合病院です。三重大学や自治医科大学から派遣された医師が高い水準の医療を提供しているほか、伸び盛りの専攻医が貴重な臨床経験を積む場としても機能しています。院長の堀井 学先生は循環器内科が専門で、2024年4月の就任以来、地域医療を守り抜こうと奮闘中です。堀井先生にお話を伺いました。
当院の歴史は1926(大正15)年まで遡ることができ、株式会社高砂病院の名で開設されました。戦後間もない1948(昭和23)年には三重県立志摩病院となり、現在に至っています。2012(平成24)年には公益社団法人地域医療振興協会が三重県から管理委託され、現在は同協会が当院の運営を担っています。
当院はこの地域で唯一の総合病院であり、志摩市全域と鳥羽市南部、南伊勢町東部の2次医療を担い、内科系に関しては24時間365日の救急対応ができる体制を整えています。許可病床数は一般病床236床、精神科病床100床となっています。
当院は緊密な病診連携を進めており、地域のかかりつけの先生方や患者さんに頼られているといえるのではないでしょうか。当院は以前から地域の開業医の先生方と結び付きが強く、年に何回か病診連携の会合を開いているほか、2024年4月に院長に就任した私も、各地へあいさつに伺って良好な関係づくりに努めてきました。そうした日々の積み重ねもあり、おかげさまで、多くの患者数のご紹介を頂いております。
当院の主要な診療科は内科と外科と整形外科の3つです。これらの科の部長が副院長も兼ねていて、さらに整形外科の田島 正稔先生は医療技術部長、外科の根本 明喜先生は診療部長、内科の丸井伸行先生は地域連携部長もそれぞれ兼務してもらっています。このうち田島先生と根本先生は当院での勤務が長く、地域の先生方との関係構築においても大きな役割を担ってくれています。
当院の医師全体に目を向けると、外科と整形外科は三重大学の医局からの派遣で来られた先生が長く活躍しており、内科は自治医科大学からの義務年限内の派遣と、地域医療振興協会からの派遣の先生方で構成されています。同協会からの派遣については、千葉県の東京ベイ・浦安市川医療センターと連携して“ベイ志摩プログラム”という取り組みを行っており、専攻医の先生が当院で半年、同センターで半年といったスケジュールで勤務する形をとっています。
当院の特徴的な活動としてご紹介したいのが、三重県とのコラボレーション事業で、地元の高校生を対象に実施しているメディカルスクールという催しです。いくつかのグループに分かれて検査室や手術室、栄養室などの院内施設を見学していただくほか、医師にも協力してもらい、医療の仕事がどんなものかを体験できる企画もあります。コロナ禍でしばらく実施できませんでしたが今年再開し、あまりの人気に募集枠がすぐに埋まってしまったので、当院独自に追加の開催も決定しました。
催しの最後には、医療系の大学に進学した際の奨学金のお話などもさせていただいています。参加した高校生の皆さんの中から、1人でも多くの方が将来、医療従事者の道を選んでくれることを願っています。
私は自治医科大学を卒業後、出身地の奈良県に戻って、循環器内科の医師として、県立奈良病院や県立医科大学、市立奈良病院などに勤務してきました。市立奈良病院と三重県立志摩病院がどちらも地域医療振興協会に管理を委託していて、私が同協会の執行役員をしていたご縁から、2024年4月より当院の管理者兼病院長に着任いたしました。
当院は、地域医療の拠点病院ならびに災害拠点病院としての役割を担っています。最初に申し上げた地域の人口減少や医療人材の不足など、病院経営をめぐる環境は非常に厳しいものがありますが、そうした中で当院の医療を支えてきた先生方、病診連携にご協力いただいている地域の開業医の先生方と協力し、これからも地域住民の皆さんが安心して暮らしていけるように、充実した医療環境の維持に努めていく所存です。どうぞよろしくお願いします。