院長インタビュー

救急と予防医療を両立させた”町の保健室”を目指すむさしの救急病院

救急と予防医療を両立させた”町の保健室”を目指すむさしの救急病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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東京都小平市にあるむさしの救急病院は、2024年2月に開院した“救急に強い”総合病院です。小平市の属する北多摩北部2次医療圏は、救急対応が十分にできていないことから開院を決意したという院長の鹿野 晃(かの あきら)先生に、同院の地域での役割や今後ついて伺いました。

先方提供
むさしの救急病院

むさしの救急病院は救命救急を軸とする総合病院で、循環器内科、脳神経外科、心臓血管外科、消化器内科、整形外科といった19の診療科を設けています。病床数は132床で、120床が一般病床、12床がICUとHCUの個室となっています。救命救急に求められる医療体制は整っているといっていいでしょう。

同時に”町の保健室”として、地域の方々がいつでも気軽に相談できるかかりつけ医としての役割も果たしていきたいと思っています。

当院の救急センターは、産婦人科と小児科以外の全ての診療科で救急に対応できる医療体制を整えています。当院が設立された2024年2月1日時点では、東京都内でも2箇所にしか導入されていなかったハイブリッドERを設置。ハイブリッドERはCTと血管造影装置を一体化した医療設備で、救急でいらっしゃった患者さんがすぐにここに入った後、移動することなく診断から治療までスピーディーに行うことができます。

救急外来は夜間や休日を問わず、1分1秒を争う重症の患者さんはもちろん、風邪やちょっとしたケガなど軽症の患者さんの診療を24時間365日体制で対応しています。救急車の受け入れ要請も多く、2024年12月現在は年間1万台ペースで搬送を受け入れ中です。

さらに、老人介護施設の入居者など来院が難しい患者さんに対しては当院の民間救急車が搬送を担当。「救急車を呼んでよいのか分からない」といったケースにも対応していますので、お困りのときは当院までお電話ください。

先方提供


ハイブリッドER

救命救急は、万が一の事態が起こった際に命を救うための治療を行うことです。しかし、そもそも万が一の事態に至らないこと、つまり予防医療こそが究極の救命救急であると当院では考えています

多くの方は、何か健康不安があっても積極的には病院にかからず、発症してから来院します。しかし、受診したことをきっかけに、日常の行動や生活習慣を見直す患者さんも少なくありません。つまり、受診や救急車で搬送された方は、予防についてもお知らせし、実際に取り組んでいただきやすい方といえます。

実際に、当院では患者さんの受診時や退院時に当院の患者サポートセンターの看護師や療法士、栄養士といったスタッフが日常生活の指導を行っています。また受診時以外でも、健康に不安があればいつでも相談を受け付けています。

これらの予防医療を推進し、地域の方々の健康を両面からサポートすること。そのために、誰でも気軽に来院できる環境を作ることを、当院では”町の保健室”と呼んでおり、今後も積極的に推進していきたいと考えています

現在、さまざまな企業に障がい者雇用が義務づけられていますが、実際の現場ではなかなか進んでいないのが現状でしょう。障がい者といっても、人によって障がいの症状はさまざまです。そのため、受け入れる現場でも対応に苦慮してしまったり、任せられる作業が思いつかなかったりといったことが起こりえます

当院では1つの解決策として、分身ロボットと呼ばれる”OriHime”を導入。OriHimeには広視野カメラとマイクとスピーカーが搭載されていて、遠隔地から操作することで、まるでその場にいるようにコミュニケーションがとれます。看護師の資格を持つ障がい者のスタッフがOriHimeを操作して、患者さんを案内したり、自らの経験を生かして患者さんの相談にのったりといった仕事を担当しています

また当院では、”PUSH project”という誰でもできる簡単な心肺蘇生法の普及を目指すNPOに賛同し、活動に協力しています。こうした活動を通して人と人とがつながることで、よりよい社会が作れるのではと考えています。

当院の理想とする医療は、”スピード””コンビニエンス””コミュニケーション”です。

”スピード”とは、救急病院の名にふさわしい医療体制を整え、分単位、秒単位で変化する生存率の壁に全力で挑んでいくこと。

”コンビニエンス”とは、健康に不安を抱える患者さんが、24時間365日いつでもためらわずに受診できること。

”コミュニケーション”は、救急病院であると同時に、誰もが気軽に相談できる丁寧で温かい医療を提供する”町の保健室”として、患者さんに寄り添うこと。

この3つを果たしてこそ、困っている患者さんを助けることができると考えています。

現在のむさしの救急病院は、まだ完成形ではありません。今後もよりよい医療体制作りを目指して、スタッフが一丸となって挑戦し続けていきます。

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