院長インタビュー

再生への道を歩む東京女子医科大学病院  信頼回復を目指し“新生女子医大”へ

再生への道を歩む東京女子医科大学病院  信頼回復を目指し“新生女子医大”へ
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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東京女子医科大学病院は、長い歴史と伝統を持ちながらも、近年さまざまな困難に直面してきました。

そうしたなか、2024年末より新たに病院長に就任したのが、西村 勝治(にしむら かつじ)院長です。精神科医としてのキャリアを持ち、“現場とともにある院長”として、職員との対話を大切にしながら病院改革を進めています。

今回は、就任から現在に至るまでの歩みと、東京女子医科大学病院がどのような未来を目指しているのかについて、西村先生にお話を伺いました。

病院外観(東京女子医科大学の附属病院ご提供)

当院は東京女子医科大学の附属病院として1908年に開設され、これまで大学病院として高度な医療を実践してきました。かつては、特定機能病院*の指定も受けていましたが、重大な医療事故が続いたことにより、その指定を二度にわたり取り消されました。二度目の取消しは2014年のことで、10年経った今も再承認には至っていません。

さらに前体制下では、理事長の一強体制による学内のガバナンス不全が表面化し、職員の心理的安全性が脅かされ、多数の職員が離職しました。医療機関としての信頼が損なわれ、多くの患者さんが当院から離れていきました。職員の⼠気にも⼤きな影を落としていました。マスコミなどからも厳しい目にさらされ、皆が傷つき、疲弊していました。

*特定機能病院……高度の医療の提供、高度の医療技術の開発及び高度の医療に関する研修を実施する能力等を備えた病院として厚生労働省より指定を受けた病院を指す。

2024年8月に公表された第三者委員会の調査報告を受け、当院では諮問委員会を設置し、病院運営に外部の目を取り入れた改革が進められました。役員は全て刷新され、理事長、学長、病院長も含め、全員が新たに選出されました。人選にあたっては、教授会のみならずさまざまなステークホルダーの意見が反映され、開かれた選考が実現されました。

2024年12月に私が病院長に就任した際、まず考えたのは、苦難を乗り越え、当院にとどまった職員の心理的安全性を回復し、本来の士気を取り戻すことでした。そのため、対話を重視し、現場の声を大切にしたいこと、職員全員が参加する病院運営を実践したいことを皆さんにお伝えしました。

そんな中、就任から間もない年末に開催した“納会”には予想を遥かに超える300名以上の職員が集い、多くの笑顔があふれるひとときとなりました。改革に向けた手応えを、皆で共有した瞬間でした。

2025年初頭には、具体的な課題にスピード感を持って取り組むために11のワーキンググループを⽴ち上げました。救急・集中治療体制の再構築、医療連携の強化、患者・職員満⾜度の向上、⼈材育成、広報戦略などの、多岐にわたる課題に取り組むグループです。ワーキンググループは多職種で構成され、現場の声を反映した柔軟な取り組みが進⾏中です。

中でも、高度先端医療に取り組み、多くの重症度の高い患者を受け入れてきた当院にとって、救急・集中治療体制の再構築は喫緊の課題でしたが、ワーキンググループ発足後、早い段階で集中治療体制を立て直すことができ、ハイリスクの治療でも高い安全性が担保できるよう取り組みを進めています。また救急医療体制も現在大きく復旧しています。

病院の財務も大きな課題となっており、学内横断的タスクフォース(「リバースプロジェクト」)を立ち上げ、本院だけでなく、分院である足立医療センターと八千代医療センターとも連携して進めています。

新たな出発にあたって、私たちは“医療を提供する目的とは何か”、“どのような病院であり続けるべきか”を改めて問い直し、ミッション・ビジョン・バリューを再策定しました。策定にあたり何度も議論を重ね、広く職員の皆さんから意見を集め、それらを集約して文章に落とし込んでいきました。多くの職員の声が反映された、みんなでつくりあげたミッション・ビジョン・バリューができたと自負しています。

*新生東京女子医科大学病院のミッション、ビジョン、バリューはこちら

社会の信頼を取り戻し、これまで使命としてきた高度で安全な医療を提供すること、患者さん一人ひとりに最善の医療を実践することを掲げています。また、5つのバリュー(行動指針)のうち第一に挙げたのが、患者さんだけでなく職員を大切にしたいという思いから“人間中心(ヒューマン・センタード)”という言葉です。患者さん中心の安心・安全な医療の実現には、まず働く職員たちがやりがいと誇りをもって働くことができることが何より重要だと考えたからです。これらの理念をいつでも思い出していただけるように、小さなカードを作って職員に配布し、名札に挟んでいただいています。

これまで多くの皆様にご心配とご迷惑をおかけしました。私たちは今、過去を真摯に受け止め、これを教訓として、強い決意をもって新たな一歩を踏み出しています。

皆様に信頼していただける病院となるべく、“新⽣東京女子医科大学病院”は高水準の医療安全、最新の医療技術の追求、そして患者さん一人ひとりに最善の医療を提供することを目指して、粛々と歩み続けます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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