概要
ぎょう虫症とは、寄生虫の一種であるぎょう虫に感染することによって起こる感染症です。肛門の周辺にかゆみが生じたり、尿道炎・腟炎・肝炎などを引き起こしたりすることもあります。最近では少なくなりましたが小児に多く、家族内感染が起こりやすいことも特徴です。
ぎょう虫とは数mm~1cm程度の糸状の寄生虫で、卵の状態で人の体の中に入り、主に大腸で成虫となり寄生します。メスのぎょう虫は、夜に人間が寝ている間に腸の中を移動し、肛門の外に出て産卵します。このように、ぎょう虫は人間の体の中に生息し、体の外で産卵することが特徴で、肛門のかゆみを感じて手でかいてしまった感染者の手や下着、衣類、寝具などから卵がばら撒かれ、家庭内感染を引き起こすこともあります。
原因
ぎょう虫症の原因は、経口感染が挙げられます。ぎょう虫は人の肛門で産卵するため、感染者の便に触れた手で食事をしたり、便に汚染されたものに触れた手で食事をしたりすることで感染します。また肛門のかゆみの症状をきっかけに無意識に肛門を手でかいてしまい、感染者の手についた卵が何らかの理由でほかの人の口に入ることもあります。
そのほか感染者の使用した下着や衣類、寝具などに卵が付着しており、それを直接触った手で口などに触れたり、その周辺の粉塵を吸い込んだりすることで感染することもあります。
症状
ぎょう虫に感染しても、大部分は無症状であるといわれています。しかし、中には1~2か月の潜伏期間を経た後、ぎょう虫の産卵時に肛門にかゆみが生じ、睡眠障害や注意力の低下が起こることがあります。また、肛門の周辺が皮膚炎になることもあります。
頻度は低いものの、時に尿道炎、腟炎、肝炎など体に炎症を引き起こすこともあるため、検査の結果陽性であれば無症状でも治療を行うことが大切です。
検査・診断
ぎょう虫症の診断は、顕微鏡による虫卵の検出によって行われます。
広く用いられている手段は“セロハンテープ法”で、起床直後に専用の検査用紙を肛門に強く密着させて剥がし、顕微鏡で虫卵の有無を確認します。ただし、ぎょう虫の産卵は毎晩行われるとは限らないため、一般的に2~3日連続して検査を行います。
このようなセロハンテープ法によるぎょう虫卵検査は、2015年まで学校保健安全法施行規則に従って全国の小学校3年生以下の子どもに義務付けられていました。しかし2016年以降は感染者の減少に伴い健康診断の必須項目から削除され、通常は行われていません。ただし一定数の陽性者がみられる地域では、引き続き検査が実施されています。
治療
ぎょう虫症と診断された場合、駆虫薬であるピランテルパモ酸塩が選択されます。1回の服用で90%程度の効果を示すといわれていますが、完全な駆除を目指して1週間間隔で2回ほど服用するよう指導されます。
また、感染者と同居する家族は原則的に全員で駆虫薬を服用することが望ましいといわれています。
予防
ぎょう虫症を予防するためには、体や衣類、部屋の中などを清潔に保つことが大切です。特に同居者に感染者が見つかった場合は家族全員の駆虫のほか、こまめな手洗い、下着や衣類、シーツのこまめな交換、床の掃除、寝具の日光消毒などを行うようにしましょう。
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