概要
ひきこもりとは、家族以外との人間関係がなく、社会参加をしていない状態を指します。必ずしも家に閉じこもっているわけではなく、外出をするような方でも家族以外の方との親密な対人関係がない状態は引きこもりに含まれます。不登校をきっかけとして、ひきこもりになる方もいますし、退職をきっかけとしてひきこもりの状態に陥ることもあります。どなたであってもひきこもりの状態になる危険性があり、大きな問題のない一般的な家庭でも起きてしまいます。
ひきこもりになってしまうと、社会的な適応度が著しく低下します。さらに、長期化するとともに、精神症状や二次的な問題行動を引き起こしてしまう可能性があり、一生を棒に振りかねない状況におちいる場合すら珍しくありません。正確な情報に基づいて注意喚起を行い、抜け出したいと望む方には適切な支援がなされるように窓口を整備し、正しい介入を行うことが重要です。
原因
ひきこもりのきっかけとして大きいのは「不登校」と「退職」です。学生時代に不登校となり、そのまま卒業や退学になってひきこもりになってしまうパターンが多いことが知られています。また近年増加傾向にあるひきこもり状態は、会社を退職してから生じるものです。
ひきこもりの原因として、生物学的脆弱性(ストレスなどに弱い性質)やトラウマとの関連については指摘されていません。また、遺伝との関連についても指摘されていません。ただ、性格的に内向的・非社交的な場合にはひきこもりになりやすい傾向があります。しかし、それ以外の方がひきこもりにならないかというとそういうわけでもなく、誰でもひきこもりになりえることが知られています。
症状
ひきこもりとは、社会との密接な関係性がなくなっている状態を指します。そのため初期の段階では家族以外の方と密接に関わらない状態で認識されますが、ひきこもり状態が長期化すると、周囲からの批判や自責の念によって、ひきこもっている本人に非常に大きなストレスがかかります。そうしたストレスや孤立状況(それ自体が病態形成的に作用します)に対する反応として、さまざまな精神症状が生じます。
ひきこもりでは、高頻度に対人恐怖を認めます。他者によくない印象を与えるのではないか、という葛藤が強い不安をもたらします。その延長線上で、自己臭(自分の体から臭いが出ていて人から避けられる)、醜形恐怖(しゅうけいきょうふ:自分の顔や体がみにくいので人から避けられる)、さらに被害関係妄想(他者に悪く思われているに違いないという確信)や被注察感(周囲に見られている)、などの症状が出現することがあります。強迫観念(頭からある考えが離れない状態)や強迫行為(強迫観念から生まれた不安にかきたてられて行う行為)もよく起こる症状の一つです。
その他、抑うつ症状や不眠、自殺念慮、摂食障害、心身症状(心が原因となって身体の不調が現れる症状)、心気症状(病気にかかっていると思い込むような症状)などが起きることがあります。また、家庭内暴力も多く見られ、ときに刑事事件に発展する場合もあります。
検査・診断
ひきこもりを引き起こす原因となった精神疾患が隠れているような場合があります。たとえば、統合失調症や発達障害がひきこもりの裏に隠れている可能性があるため、注意してみていく必要があります。精神疾患がある場合には、原疾患、つまりひきこもりの根本にあるそれらの病気を診断し、それに対して治療をすることが望ましいです。
治療
ひきこもりはどんな方でも発症する可能性があると考えられており、未然に発症を予防することは現時点(2017年時点)では難しいと考えられています。そのため、ひきこもり状態になってから何らかの介入を行う、ということが一般的になります。ただし、医療の介入を必要とするかどうかは、本人や家族がひきこもりに対してどう思っているのか、が重要になります。本人がその状態に自足していて一人で充実した活動をしていたり、順調に何らかの成果を出していたりする場合に医療の介入は必ずしも必要ありません。
本人がひきこもりをやめたいのにやめられない、周囲に対しても問題を及ぼしている状態では、何かしらの介入が求められます。ひきこもり対応の基本は、「ひきこもった原因を探すこと」ではありません。「何が抜け出すことを阻害しているか」を理解し、阻害要因をひとつひとつ取り除いていくことです。大きな阻害要因のひとつが、家族の誤った対応であることが少なくありません。ひきこもりの治療的支援は段階的になされます。(1)家族相談、(2)個人療法、(3)集団適応支援です。家族相談で重要なことは、本人がもう一度他者と触れ合うことができるように家族が協力することです。
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