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ういるすせいいちょうえん

ウイルス性胃腸炎

同義語
ウイルス性腸炎
監修:

概要

ウイルス性胃腸炎は、胃腸がノロウイルスやロタウイルスといったウイルスに感染し、吐き気や嘔吐、下痢、腹痛などが現れる病気です。国内では、気温が下がる秋から冬にかけて増える傾向があります。

ウイルスや細菌などに胃腸が感染して下痢、嘔吐といった症状を起こす病気は、“感染性胃腸炎”と総称されます。このうち、ウイルスが原因になっているものがウイルス性胃腸炎であり、ウイルス性腸炎とも呼ばれています。ロタウイルスなどによる乳幼児のウイルス性胃腸炎を指して、嘔吐下痢症という言葉が使われていたこともありました。

ウイルス性胃腸炎には一般的に対症療法(症状をやわらげる治療)が行われ、多くの場合、数日ほどで症状が改善します。ただし、体力の弱い乳幼児や高齢の方は、繰り返す下痢や嘔吐で水分を失いやすいため、脱水に注意が必要です。嘔吐や下痢が続く場合は、早めに内科、消化器内科、小児科などを受診しましょう。

種類

ウイルス性胃腸炎を起こすウイルスは複数あり、各ウイルスによって感染しやすい年齢や流行する季節などに違いがあります。ここでは代表的なウイルスを紹介します。

冬に流行しやすいノロウイルス

ノロウイルスというウイルス自体は年間を通して存在していますが、特に冬に流行しやすく、子どもから大人まで幅広く感染します。感染から発症するまでの潜伏期間はおよそ1~2日です。

乳幼児に多いロタウイルス

乳幼児の重い胃腸炎の主な原因で、5歳ころまでにほとんどの子どもが一度は感染します。潜伏期間は2~4日ほどといわれています。

潜伏期間が比較的長い腸管アデノウイルス

乳幼児に多く、季節を問わず一年中みられます。潜伏期間は3~10日ほどと、やや長いことが特徴です。

そのほかのウイルス

これら以外にも、サポウイルスやアストロウイルスなどが胃腸炎を引き起こします。サポウイルスはノロウイルスに近いウイルスで、一年を通して感染がみられます。潜伏期間は半日~2日ほどといわれています。アストロウイルスは冬に流行しやすく、潜伏期間は1~4日程度です。

原因

ウイルス性胃腸炎は、原因となるウイルスが口から体内に入ることで感染します。感染の広がり方として多いのは、ウイルスのついた手で口元に触れる経路や、ウイルスに汚染された食べ物や水を口にする経路です。加えて、嘔吐物や排泄物に含まれるウイルスが細かく舞い上がり、それを吸い込むことで感染することもあります。

たとえばノロウイルスでは主に、感染している人が触った食べ物を食べたり、内部にウイルスを取り込んだカキなどの二枚貝を、生のままや加熱が足りない状態で口にしたりすることで感染するといわれています。

口から体内に入ったウイルスは、腸の粘膜で数を増やして症状が現れます。

症状

ウイルス性胃腸炎では、吐き気や嘔吐、下痢、発熱などがみられます。症状の重さや続く長さは原因ウイルスによって幅がありますが、多くは数日程度で改善していきます。乳幼児や高齢の方では、脱水への注意が必要です。

ノロウイルス

主な症状は吐き気や嘔吐、下痢で、腹痛や頭痛、発熱が生じることもあります。子どもでは嘔吐が、大人では下痢が目立つ傾向があるといわれています。多くは1~2日ほどで治まります。

ロタウイルス

水のような下痢と嘔吐を繰り返し、発熱を伴うことも多くみられます。一般的に症状は数日~1週間程度続きます。

なお、初感染の場合は特に症状が強く出やすく、嘔吐や下痢が続いて重い脱水につながりやすいといわれています。まれに、意識が低下しぼーっとする、ぐったりするなどの様子や、けいれんがみられる場合もあるため、これらの症状がみられたら早急に医療機関を受診しましょう。

ロタウイルスの感染を複数回経験している大人では、症状が現れない、あるいは比較的軽い症状が現れるといわれています。

腸管アデノウイルス

主な症状は下痢と嘔吐です。発熱は比較的軽い一方で、下痢が長引きやすい傾向があり、9~12日ほど続くといわれています。

そのほかのウイルス

サポウイルスは下痢や嘔吐といった、ノロウイルスに似た症状が現れるため、症状だけで区別するのは難しいとされています。症状は通常1~2日で治まりますが、1週間ほど続くこともあります。

アストロウイルスでは、発熱や嘔吐、下痢などがみられます。ノロウイルスよりも比較的軽い症状が現れやすく、4~5日ほどで改善するといわれています。

表:丹羽先生提供

注意が必要な脱水のサイン

乳幼児や高齢の方は、下痢で失われる水分が多く、重い脱水になることがあります。嘔吐を繰り返し、水分が十分にとれない、尿の量や回数が明らかに減っている、立ち上がると強くふらつく、下痢や嘔吐が長引く、または悪化している、血便や強い腹痛・高熱があるときは、早めに医療機関を受診しましょう。なお高齢の方では、嘔吐物が誤って気管に入り肺炎につながることもあるため、注意が必要です。

検査・診断

ウイルス性胃腸炎は、多くの場合、症状経過、周囲での流行の有無をもとに診断されます。

診察ではまず、症状が出た時期や内容、周囲で似た症状の人がいないか、直前に何を食べたかなどを丁寧に聞き取ります。多くはこの段階で見立てがつくため、原因ウイルスを特定する検査まで行うとは限りません。

原因を特定する場合には、便を検体としてウイルスを見つける抗原検査などが診断の補助として行われます。たとえばノロウイルスの抗原検査は、3歳未満や65歳以上の方などが公的医療保険の対象となっています。ただし、実際には感染していても結果が陰性になることもあり、この検査で陰性だからといって感染を否定できるわけではありません。検査を実施するかどうかは、年齢や症状を踏まえて医師が判断します。

治療

ウイルス性胃腸炎には、原因ウイルスを直接抑える薬がなく、つらい症状をやわらげながら回復を待つ対症療法が中心になります。

水分と塩分の補給

治療の中心になるのは、下痢や嘔吐によって体から失われた水分と塩分を補い、脱水を防ぐことです。症状が軽いうちは、嘔吐が落ち着いたタイミングで、水分と塩分を程よく含む飲み物(経口補水液)を、一度に多く飲まず少しずつ口に運ぶのがよいとされています。脱水が強いときや、吐き気のために飲み物を受けつけないときは、入院して点滴が行われることがあります。嘔吐が治まってきたら、消化のよいものから食事を少しずつ戻していきます。

下痢止めの注意点

下痢止めは、症状を一時的に和らげることがありますが、原因や症状によっては使用を避けたほうがよい場合があります。特に、小児や、発熱・血便・強い腹痛がある場合は、自己判断で使用しないようにしましょう。下痢が続く場合は、水分補給を優先し、必要に応じて医療機関に相談してください。

予防

ウイルス性胃腸炎を防ぐには、日ごろの手洗いに加え、感染者の嘔吐物や排泄物を正しく片づけて消毒することが基本になります。

手洗いと消毒

感染を防ぐためには、トイレの後や料理・食事の前に石けんを使って、流水でしっかり手を洗うことが欠かせません。消毒用エタノールでは、ノロウイルスやロタウイルスなどを十分に消毒しきれないことがあるため、手についたウイルスを石けんと流水で洗い流す必要があります。

嘔吐物・便の処理

嘔吐物や便を片づけるときは、使い捨ての手袋やマスク、エプロンを身につけ、換気をしながら次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤)で拭き取ります。金属部分に次亜塩素酸ナトリウムを使用した場合は、腐食を予防するため10分ほど後に水拭きが必要です。作業が終わったら、石けんと流水で手を洗いましょう。

食品の加熱

二枚貝を調理するときは、中心部までしっかり火を通すことが感染予防になります。ノロウイルスの場合、中心が85~90℃の状態で90秒以上加熱すると、ウイルスの活性が失われるといわれています。

ロタウイルスワクチンによる予防

ロタウイルスには、感染や重症化を抑えるためのワクチンがあります。注射ではなく口に含ませて接種するタイプで、2回あるいは3回接種のものがあり、いずれも対象となる月齢の範囲内(初回接種時に生後6週~14週6日)であれば、原則無料で接種可能です(2026年時点)。ロタウイルスによる胃腸炎での入院は、ワクチンの接種によっておよそ70~90%減少したと報告されています。接種できる期間が限られているため、接種を希望する場合は早めにかかりつけの医療機関へ相談しておくと安心です。

ノロウイルス感染後の注意点

ノロウイルスでは、嘔吐や下痢が治まっても、しばらく便の中にウイルスが排出されることがあります。症状が改善した後も、トイレの後の手洗いを徹底しましょう。また、症状がある間や、症状が治まってから少なくとも48時間は、できるだけ家族の食事を調理することを避けると安心です。

最終更新日:
2026年11月04日
Icon close
2026/11/04
更新しました
2018/06/19
掲載しました。

参考文献

  1. ・Shane AL, Mody RK, Crump JA, et al. 2017 Infectious Diseases Society of America Clinical Practice Guidelines for the Diagnosis and Management of Infectious Diarrhea. Clin Infect Dis. 2017;65(12):e45-e80. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5850553/
  2. ・Centers for Disease Control and Prevention (CDC). How to Prevent Norovirus. Available from: https://www.cdc.gov/norovirus/prevention/index.html, (Updated: January 13, 2025)
  3. ・厚生労働省.「ノロウイルスに関するQ&A」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html)
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