概要
オウム病とは、オウム病クラミジアと呼ばれる細菌に感染することによって生じる病気です。主にオウムやインコ、ハトなどの鳥類から人へ感染し、これらの鳥の糞や唾液に含まれる病原体を吸入することで感染します。
症状は多様ですが、一般的に突然の高熱や頭痛、体のだるさなどがみられます。特に高齢者、妊婦、免疫機能が低下している方では重症化しやすい可能性があるため注意が必要です。
世界中でみられる病気であり、日本では特にペットとして飼育している鳥類からの感染例が多く報告されています。好発年齢は30〜60歳代の成人で、小児の発症頻度は比較的少ないとされています。国内では年間数件の報告がありますが、実際には診断されていない軽症例も含めるとより多い可能性があると予想されています。
治療ではテトラサイクリン系などの抗菌薬による薬物療法が行われます。
原因
原因はオウム病クラミジアと呼ばれる細菌に感染することです。感染は主に、オウムやインコ、ハトなど鳥類の糞や唾液に含まれる細菌を口や鼻から吸い込むことによって起こります。また、人間が鳥へ口移しでエサを与えたり、細菌に汚染された給餌器などに触れた手で食事をしたりすることでも感染する可能性があります。
人から人への感染はまれですが、感染しているほかの動物(哺乳類など)から感染することもあります。人体に入ったオウム病クラミジアは体内で増殖し、血流に乗って全身に広がることでさまざまな症状を引き起こします。
症状
オウム病の症状は、オウム病クラミジアに感染後、1~2週間の潜伏期間*を経て現れます。症状はインフルエンザに似ており、主に38℃を超える突然の発熱や頭痛、体のだるさ、筋肉痛、関節痛などが現れます。また、咳や痰が絡む咳などの呼吸器症状もみられます。そのほか、比較的徐脈**や肝臓の障害が生じることがあります。
病気が進行すると肺炎を引き起こし、重症化した場合には呼吸困難や意識障害といった症状が現れて命に関わることもあります。
これらの症状の程度は患者によってさまざまで、軽症の場合はインフルエンザのような症状に留まることが多いものの、高齢者や妊婦、免疫力の低下した人では重症化しやすい傾向があります。
*潜伏期間:病原体が体内に入ってから症状が現れるまでの期間。
**比較的徐脈:高熱の割に脈拍数が増えない状態のこと。
検査・診断
オウム病の診断では、問診によって鳥類との接触歴と症状の確認を行います。自宅での鳥類の飼育歴やペットショップへの立ち寄り、公園でのハトとの接触など、あらゆる鳥との接触機会について医師に報告することが重要です。
具体的な検査としては、血液検査でオウム病クラミジアに対する抗体を調べたり、痰や咽頭から採取したぬぐい液を用いて病原体の存在を確認したりします。また、胸部エックス線検査やCT検査により、肺炎の有無や程度を確認することもあります。
治療
オウム病の治療は、テトラサイクリン系抗菌薬による薬物療法が基本となります。また、症例によってはマクロライド系抗菌薬やニューキノロン系抗菌薬が使用されることもあります。一般的な治療期間は約2週間で、軽症の場合は飲み薬による治療を行いますが、中等症以上の場合は入院して点滴による治療が必要となります。
特に症状が重く、肺炎によって血液中の酸素濃度が低下する低酸素血症が生じている患者に対しては、酸素投与や呼吸管理などの対応が必要となります。
予防
オウム病の予防には、鳥類との接し方に注意を払うことが重要です。鳥に触れたり世話をしたりした後は、必ず手をよく洗いましょう。ペットとして鳥を飼育している場合は、ケージを定期的に清掃して清潔な環境を保つことが大切です。また、鳥に餌を与える際には、口移しは避けてください。ペットの鳥が弱っている場合は、獣医師の診察を受けましょう。
さらに、野生のハトはオウム病クラミジアを保有している可能性があるため、野生のハトやその糞にはむやみに触れないようにしましょう。
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