つつがむしびょう

ツツガムシ病

別名:つつが虫病

目次

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概要

ツツガムシ病(つつが虫病)とは、Orientia tsutsugamushi と呼ばれる細菌による感染症のことを指します。病原体はダニの一種であるツツガムシによって運ばれ、ツツガムシに刺されることから人に病原体がうつります。

媒介者であるツツガムシは、日本全国に広く生息していることが知られています。どの時期にツツガムシの活動度が上がるかは、周囲の温度や雪などに影響を受けるため、地域によってダニに刺されて病気を発症しやすい時期は若干異なります

刺された部位の刺し口と発熱、発疹がメイン症状ですが、ときに播種性血管内凝固(DIC)を発症し、非常に重篤な状態になることがあります。

日本での扱いとしては、感染症法にて4類感染症に指定されており、全数把握対象疾患(患者を診断した医師から保健所への届け出が義務づけられている感染症)となっています。これによると、全国で毎年400件前後の発症例があると報告されています。推定感染地は、国内がほとんどですが、国外(韓国, カンボジア, マレーシアほか)も少数ですが報告されています。

野外での活動が多くなる行楽シーズンに流行することもある一方で、諸外国からの輸入感染症例も認めます。毎年一定数の方が感染する病気であることから、動向に注目が集まっています。

原因

Orientia tsutsugamushi と呼ばれる細菌に感染することから発症します。Orientia tsutsugamushi は、リケッチアと呼ばれる細菌の一種です。リケッチアに属する細菌は、人などの細胞に感染することではじめて増えることができるという特徴を持っています。また、リケッチアはダニやノミなどの昆虫に寄生しており、そうした昆虫に人が刺されると感染します。

ツツガムシ病の場合は、ツツガムシと呼ばれるダニに人が刺されて、病原体が人にうつることで感染します。同じくリケッチアに分類される細菌により引き起こされる病気には、Q熱や発疹チフスなどがあります。

ツツガムシ病の発症には、ダニの生体サイクルが密接に関わっています。ツツガムシが人を刺すのは幼虫のあいだに限られており、成虫になったツツガムシは人を刺すことはありません。寒冷に強いフトゲツツガムシが主に分布する地域では積雪期を越冬した幼虫になる春先に, 一方タテツツガムシによるつつが虫病は幼虫が孵化した後の秋~初冬にかけて患者報告数がピークとなります。

ツツガムシに刺されると、1〜3日間刺され続けることとなり、そのうち6時間以上吸着されていると病原体が人にうつると考えられています。長時間虫に刺されているといっても、痛みや痒みをともなうようなものではなく、「刺された」という自覚がないことが多いです。

ダニは幼虫のあいだに限って人を刺すということから、産卵・孵化(ふか)の時期と一致して感染症が流行する傾向にあります。ダニ自体は広く日本全国に生息していますが、地域の温度や雪との兼ね合いから産卵・孵化の時期は異なります。全体的な傾向としては、春から初夏、秋から初冬の2つにピークがみられます。

症状

ツツガムシに刺された後、5 〜14 日の潜伏期間を経て症状が出現します。典型的な初発症状は39度以上になることも多い発熱です。発熱を認めてから数日経過した後に、体幹を中心とした発疹が出現するようになります。ツツガムシに刺されても不快な症状をともなうことはないのですが、ツツガムシによる刺し口がみられます。その他の症状には、倦怠感や頭痛があります。

また、刺された部位から病原菌(Orientia tsutsugamushi)が侵入し、その部位と関連したリンパ節の腫れをみます。たとえば足が刺されていれば、鼠径部(そけいぶ)(太ももの付け根)のリンパ節が腫れをみることもあります。さらに、眼球結膜充血、肝臓の腫れを生じることがあります。

ツツガムシ病を発症したときに適切に治療を受けることができなければ、播種性血管内凝固(DIC)を発症することがあります。DICになると、全身の臓器に小さな血栓(血液の塊)が複数生じるようになり、多臓器に障害が生じます。最終的には心不全や腎不全、脳炎、脳症などで亡くなることもあります。

検査・診断

ツツガムシ病の患者さんから得られた血清を、ある種の変形菌(細菌の一種であるプロテウス)と反応させると、凝集反応と呼ばれる現象が起きます。これは、ワイルフェリックス反応と呼ばれるものですが、スクリーニング(ふるいわけ)検査として利用されることがあります。

その他ツツガムシ病の診断の基本は、病原体に対する抗体(IgG抗体、IgM抗体)を血液検査で検出することです。抗原を用いる間接蛍光抗体法は保険が適用され, 民間検査所でも検査可能です。
また、急性期の血液に病原菌由来のDNAが検出されることもあります。このことを確認するために、PCR法と呼ばれる方法を用いることもあります。

病状が進行すると播種性血管内凝固(DIC)を発症することから、血液検査にて各種臓器のマーカー(たとえば、腎臓であればクレアチニン、肝臓であればASTやALTなど)、血液の固まりやすさをみる検査(APTTやPTなど)などが併用されることもあります。

治療

治療は抗生物質により行い、第一選択としてはテトラサイクリン、使用できない場合にはクロラムフェニコールと呼ばれる抗生物質が使用されます。

ツツガムシ病を引き起こす病原体に対しては、たとえば溶連菌性咽頭炎や肺炎などでよく使用される「ペニシリン系」や「セフェム系」といった抗生物質が効果を示しません。そのため適切な診断を行い、しっかりと効果のある薬剤を使用する必要があります。

ツツガムシ病については、ダニに刺されないようにする予防策を講じることも重要です。行楽シーズンや野外での活動中にダニに刺される機会が増えます。そのため、自身が赴く地域でのツツガムシの状況を事前に確認することが大切です。ダニが多い環境に行くときも、手足の皮膚を覆う服を着用し、ダニに触れる機会を減らすことが大切です。また、野外活動の後には、しっかりと体を洗うことも重要です。

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