ですもいどがたせんいしゅしょう

デスモイド型線維腫症

最終更新日:
2020年06月25日
Icon close
2020/06/25
更新しました
2020/06/01
掲載しました。
この病気の情報を受け取るこの病気は登録中です

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

医師の方へ

概要

デスモイド型線維腫症は、“筋線維芽細胞”と呼ばれる細胞から発生する腫瘍と考えられています。筋線維芽細胞は本来、ダメージを受けた組織の修復や生成を行うための細胞であり、全身のさまざまな部位に存在しています。このため、デスモイド型線維腫症は全身のさまざまな部位に発生する可能性がありますが、多くは四肢や体幹(胴体)、体腔内(胸腔や腹腔)に発生するとされています。

この病気は非常に珍しく、人口100万人あたりの年間発症者は2~4人です。日本では1年間に300~400人が新たに発症していると推測されています。しかし、腹腔内に発生した場合は目立った症状が現れないことも多いため、実際の発症者の数は正確に分かっていないのが現状です。

一方で、デスモイド型線維腫症は他部位に転移することはないものの、周辺の臓器や組織に浸潤し、時には破壊しながら大きくなっていくため、頭頸部や体腔内に発症する場合には死に至るケースもあるとされています。

原因

デスモイド型線維腫症は、発生する部位によって“腹腔外デスモイド型線維腫症”“腹腔内デスモイド型線維腫症”に分類され、それぞれ原因が異なると考えられています。

“腹腔外デスモイド型線維腫症”の多くは、“βカテニン遺伝子”の変異が原因とされています。一方、“腹腔内デスモイド型線維腫症”の大部分はガードナー症候群と呼ばれる“家族性線維腫性ポリポーシス”という病気に関連していることが分かっています。家族性線維腫性ポリポーシスは大腸ポリープが数百~数千個発生し、いずれ大腸がんを引き起こす遺伝性の病気です。ほとんどは“APC遺伝子”の変異によって引き起こされることが分かっており、腹腔内デスモイド型線維腫症もこの遺伝子の変異が発症に関与していることが示唆されています。

症状

デスモイド型線維腫症の症状は、発生部位によって大きく異なります。

四肢や体幹などに発生した場合は、比較的早い段階から硬いしこりが触れるようになります。また、デスモイド型線維腫症は周囲の臓器や組織に浸潤しながら進行していくため、周囲の神経や骨などにダメージを与えて痛みやしびれ、筋力低下、関節の可動域制限などを引き起こすことも少なくありません。

一方、腹腔内に発生した場合は、初期の段階では体表面からしこりを触れることもなく自覚症状はほとんどありません。しかし、周囲の腸管などを圧迫したり浸潤したりしながら徐々に大きくなっていくことが多いため、進行するとお腹にしこりが触れるようになったり、腹痛、腹部膨満感、通過障害などを引き起こしたりします。また、周囲の腸管などを破壊して穴が開いてしまうなど、非常に重篤な症状が生じることも少なくありません。さらに、首に発生した場合は気管を圧迫して窒息を引き起こすケースも報告されています。

なお、デスモイド型線維腫症は、他部位に転移することはまずありません。しかし、このように周囲の臓器や組織にダメージを与え、死に至る可能性があります。このため、臨床における悪性度(転移のしやすさや進行の速さの程度)は悪性・良性の間の“中間型”と定義されています。発生した部位や大きさによっては重篤な状態になることもあるため、注意が必要です。

検査・診断

デスモイド型線維腫症が疑われる場合は、次のような検査が行われます。

画像検査

腫瘍の位置、大きさ、周辺臓器・組織への影響を評価するために必要な検査です。腫瘍が発生した部位によって超音波検査、CT検査、MRI検査などが行われます。

特にデスモイド型線維腫症の診断に有用なのはMRI検査とされており、造影剤(血管が映りやすくなる薬)を注射しながら行う“造影MRI検査”は治療効果を予測するのに役立つとされており、積極的に行われているのが現状です。

病理検査

腫瘍組織の一部を採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査です。デスモイド型線維腫症の確定診断に必須であり、四肢や体幹などにできたものは超音波やCTで位置などを確認しながら腫瘍にめがけて皮膚から針を刺して組織を採取します。一方、腹腔内にできた腫瘍のなかには皮膚から針を刺して組織を採取することができないことも少なくありません。このようなケースでは、ほかの悪性腫瘍との鑑別が必要な場合、皮膚を切開して腫瘍組織の一部を採取する“切開生検”が必要になることがあります。

内視鏡検査

腹腔内デスモイド型線維腫症の多くは“家族性腺腫性ポリポーシス”を併発しているため、家族歴を確認し、大腸内の状態を確認するために大腸内視鏡検査を行うことがあります。

治療

デスモイド型線維腫症の約半数は治療をしなくても腫瘍が大きくなりません。なかには自然に小さくなったり消失したりすることもあります。このため近年では、発見された時点では症状がなく、画像検査で周辺臓器・組織に影響を与える可能性が少ない場合、治療を行わずに経過観察を続けていくことが治療の第一選択とされています。

一方で、発見された時点ですでに症状がある場合や、腫瘍が増大することで気管や腸管などの重要な器官にダメージを与える可能性が考えられる場合には、切除手術も考慮されます。ただし、切除後の局所再発率が極めて高いことが知られています。

また、腫瘍の縮小や進行抑制のために薬物療法が行われることもあります。主な薬物治療は鎮痛剤のCOX-2阻害薬、抗エストロゲン薬によるホルモン療法、抗がん剤治療などです。抗がん剤治療としては、メトトレキサートとビンブラスチンの併用療法やドキソルビシンが用いられます。近年では、ソラフェニブやパゾパニブなどの血管新生阻害作用を有する分子標的薬が有効であるとも報告されており、効果が期待されています。

さらに、全身状態が不良で手術や薬物療法が困難な場合には、放射線治療も考慮されます。デスモイド型線維腫症の治療は極めて専門性の高い領域であり、治療選択には慎重を期することから専門医の下で治療することが望まれます。

 

医師の方へ

医師向けの専門的な情報をMedical Note Expertでより詳しく調べることができます。

この病気を検索する

「デスモイド型線維腫症」を登録すると、新着の情報をお知らせします

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

実績のある医師をチェック

デスモイド型線維腫症

Icon unfold more