概要
ファイファー症候群とは、FGFR2遺伝子(時にFGFR1遺伝子)の異常により、先天的な頭蓋骨や顔面骨(基本的に下顎を除く)の形成異常がおこり、脳の発達が妨げられたり、眼球が突出したり、呼吸が障害されたりする骨系統疾患です。
頭蓋骨はいくつかの骨から構成され、それらのつなぎ目が縫合線と呼ばれます。脳が成長するにしたがって縫合部分が広がることで、頭蓋骨が拡大していきます。縫合部分は成人になるにつれて自然に癒合しますが、ファイファー症候群では、癒合が早期に起こります。ファイファー症候群では、手足の指にも一部癒合が認められます。
日本での発症数は年間6例程度と推定されています。
原因
ファイファー症候群は、骨の増殖や分化のコントロールに関係する遺伝子に異常が生じることで発症します 。このような遺伝子の異常は、同じく頭蓋縫合早期癒合症に分類されるアペール症候群やクルーゾン症候群などでも認められ、ファイファー症候群では、頭蓋や手足の早期癒合が引き起こされます。
常染色体優性遺伝形式をとりますが、2型・3型に関しては遺伝子の突然変異が原因であり、孤発例が多いです。
症状
ファイファー症候群は、臨床症状から3つの病型に分類されます。
1型は2、3型に比べると軽度ですが、頭蓋骨が正常に形成されず、ゆがんだ形となります。また、顔面の形成異常も認められ、目立つ額、顔面中部低形成、眼間開離、上顎後退、下顎突出、噛み合わせ不良などがみられます。1型の患者さんの場合、知能は正常で、予後も良好であることが多いです。
2型は、1型と比べ症状が重く、手足の指が一部癒合したり、肘関節の拘縮を合併したりすることがあります。クローバーリーフ頭蓋と呼ばれる形態異常が認められ、しばしば水頭症を合併します。顔面の形成異常も重く、1型で認められるような症状に加え、著しい眼球突出、くちばし状の鼻、耳介低位などを伴うことがあります。また、精神運動発達遅滞を認めることもあります。
3型は2型と同様の症状を呈しますが、2型に特徴的なクローバーリーフ頭蓋は認められません。2型、3型では、呼吸障害を合併することもあり、予後が悪いこともあります。
検査・診断
単純頭部X線写真や3D-CTを用いて、頭蓋や顔面の骨の形態異常、頭蓋内圧亢進の有無、早期癒合による縫合線の消失などを確認します。また、CTやMRIにより水頭症などの合併症や脳の異常がないかを確認します。
顔面の形成異常に伴い、視力や聴力、呼吸機能に影響が認められる場合も多いため、それぞれの症状に即した検査も実施されます。このほか、遺伝子検査が行われる場合があります。
治療
それぞれの症状に応じた外科的治療が必要になります。1度の手術で完治することは難しいため、乳幼児期から成人期にわたって複数回の手術が段階的に行われます。
頭蓋の変形を放置すると脳の発達にも影響が及ぶ可能性があるため、頭蓋の変形を修正し、頭蓋容積を拡大する頭蓋形成術が実施されます。近年では、広げたい骨の部分に延長装置を取り付け、術後少しずつ骨を伸ばしていく骨延長法が実施されることが多くなっています。
また、顔面骨の形成異常が高度な場合、眼球突出や咬合不全などの機能障害の改善を目的とした顔面形成術も必要です。手足の指に癒合が認められる場合には、分離手術が行われます。
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