概要
アペール症候群とは、乳幼児期に脳の急激な成長に対して頭蓋骨が正常に拡大できないために頭部の変形などが生じる病気です。通常より早い時期に頭蓋骨の縫合部(つなぎ目)が塞がる病気(頭蓋骨縫合早期癒合症)の一種とされています。詳しい原因が分かっていませんが、ほとんどの場合はFGFR2という遺伝子の突然変異が関係しています。主な症状としては、頭部や顔面の変形、脳の発達への影響などがあり、また手足の指が隣接する指と癒着した状態になることが特徴です。
治療としては、頭蓋骨・顔面骨を広げる手術や癒着した手指を開く手術が行われます。特に頭部の変形が目立つ場合や頭蓋骨の中の圧力が通常より高い場合には、早期の手術が必要とされています。
原因
アペール症候群の原因は、頭蓋骨の縫合部が通常よりも早い時期に塞がることです。正常な発達では、生まれたばかりの赤ちゃんの脳は急速に成長します。この急激な脳の成長に対応するために、7つの骨片に分かれている頭蓋骨の間にある縫合部の骨が成長することで、頭蓋のサイズを拡大させています。脳の成長が完了する時期になると、これらの縫合部は自然に閉じて一体化した硬い頭蓋骨となります。
アペール症候群では、このプロセスが早期に進行し、脳が十分に成長する前に頭蓋骨の縫合部が塞がります。この疾患の多くはFGFR2という遺伝子の突然変異と関連していることが分かっていますが、その詳細なメカニズムについては現在も研究が続けられています。
症状
アペール症候群の主な症状は、頭蓋や顔面の変形、眼球の突出、呼吸の障害、嚙み合わせの不良、上顎(上あご)の裂け目(口蓋裂)などです。また、頭蓋骨が小さいことにより脳の発達が妨げられ、頭痛や嘔吐・吐き気などが起こる場合があります。また、手足の指が隣り合った指と癒着した状態となります。稀ですが、心奇形や消化器疾患を合併することもあります。
検査・診断
診察では、まず患者の頭蓋や顔面、眼球、手指などに現れる特徴的な症状がみられるかを確認します。より詳細な情報を得るために、X線検査や、CT、MRIなどの画像検査を実施します。これらの検査により、頭蓋骨内の圧力の状態や顔面の骨の成長状況を調べることができます。症状と画像診断の結果に基づき総合的に診断が行われ、確定診断として遺伝子検査が実施されます。
治療
治療では、頭蓋や顔面の骨を広げる手術を行います。頭部の変形が目立つ場合や、頭蓋骨内の圧力が高い場合、呼吸障害がある場合、眼球突出が著しい場合などでは早期の手術が必要となります。
頭部の手術には、縫合部分を切除する縫合切除術、頭部を一度の手術で大きくする頭蓋形成術、頭蓋骨を少しずつ大きくする骨延長術などがあります。どの手術法を選択するかは患者の年齢や症状によって異なりますが、近年では患者の負担が比較的少ない骨延長術が多く選択されています。この方法では、広げたい骨に延長装置を取り付けて骨を少しずつ伸ばしていきます。
アペール症候群の治療には、頭蓋骨の手術だけでなく、手指の癒着を分離する手術や、上顎(上あご)の裂け目(口蓋裂)を閉じる手術なども行われます。症状の程度によって異なりますが、適切な時期に手術を受けることで予後が改善するといわれています。ただし、多くの場合、成人するまでに複数回の手術が必要となることが一般的です。
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