肺動脈弁置換術を行った患者は生体弁の寿命に伴い再度の弁置換術が必要になります。海外では開胸手術をしない「経カテーテル的肺動脈弁挿入術(TAVI)」も選択肢の一つですが、日本では保険適応ではありません。その課題の解決方法について国立循環器病研究センター小児心臓外科部長の市川肇先生にお話を伺いました。
大動脈弁狭窄症は、先天的な弁の異常・加齢による弁の変性・リウマチに伴う弁の変性により起こる弁膜症で、国内における 65歳以上の大動脈弁狭窄の罹患率は2~3%と推定され、最もよくみられる弁膜疾患です。この疾患に対してTAVIは胸を開かず、心臓を止めることなく大動脈にカテーテルを挿入して人工弁を患者さんの心臓に装着することができる治療法です。重症で高齢者の「大動脈弁狭窄症」に対する治療法として、2002年にヨーロッパで始められて以降、ヨーロッパ・北米を中心にすでに10万人近くの患者さんに行われ、日本では2013年10月に保険診療が可能となりました。
よく似た手技で静脈にカテーテルを入れて肺動脈に生体弁を挿入する治療器具があります(Medtronic 社Melody Valve)。海外においては、30代、40代の比較的若い人で一度生体弁を入れる手術をして、2度目に弁置換術をする際には、このカテーテル肺動脈置換術という方法がすでに10年以上前から開始されています。
この手技はTAVIより前から行われている治療法なのですが、肺動脈弁置換術を行った患者さんが生体弁の寿命に伴い再度の弁置換術をする際の適応については、いまだに日本での治験さえ行われずにいます。低侵襲の手術であるにもかかわらず適用されていない理由として、大動脈弁に対するTAVIの手術のマーケットに対し、肺動脈弁の手術のマーケットは非常に小さいため、企業による治験が行われにくいことが挙げられます。日本の許認可のシステムのハードルが高いためにいわゆるデバイスラグがてきているわけです。
日本では、ブタの弁やウシの心膜でつくられている生体弁に替わる、ゴアテックス製の手作り弁がよく使われます。生体弁は低抗原性のための処理は施されているものの、時間の経過とともに硬くなり、最後は動かなくなってしまうため、こうした素材を用いると再手術の時期を延ばすことが期待できます。
先述の通りファロー四徴症は難病ではありますが、長期の生存が期待できる反面新たな問題も出現しており、患者さんに費用面でも身体面でも安心して手術を受けてもらえるよう、引き続き患者さんとともにこの病気と闘っていきたいと思っています。
国立研究開発法人 国立循環器病研究センター 小児心臓外科
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