みおくろにーけっしんてんかん

ミオクロニー欠神てんかん

脳

目次

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概要

ミオクロニー欠神(けっしん)てんかんとは、特徴的なミオクロニー欠神発作(けっしんほっさ)を主症状とする小児てんかんのひとつです。希少な難治性のてんかんであり、日本では指定難病となっています。発症年齢は11か月から12歳6か月と幅があります。また、男女比では男児に多い傾向がみられます。

ミオクロニー欠神発作とは、突然の意識の曇り(欠神)と同時に四肢の筋肉にリズミカルな収縮(ミオクロニー)が起こり、肩や上腕などが律動的に持ち上がる発作のことです。

*四肢とは上肢(じょうし)下肢(かし)のことです。ミオクロニー欠神発作では、特に肩や上腕を中心とした上肢に症状が現れます。

このとき、欠神のため、呼びかけなどに反応しない状態になります。また、ミオクロニー欠神てんかんのなかには、精神発達遅滞や行動障害、全身けいれんなど、ミオクロニー欠神発作以外の症状を伴うものもあります。

原因

2018年6月現在、ミオクロニー欠神てんかんの原因は解明されていません。また、発症に至るメカニズムについても、現時点では明らかになっていません。

発症に関わる因子

ミオクロニー欠神てんかんは、ある特定の遺伝子異常などが原因となる病気ではなく、遺伝的素因や環境的素因など、複数の因子が関与して起こると考えられています。このような病気を多因子遺伝疾患(たいんんしいでんしっかん)といいます。

家族歴を調べた報告によると、ミオクロニー欠神てんかん42例うち約20%にてんかんの家族歴があったとされています。このことから、てんかんの家族歴も、ミオクロニー欠神てんかんの発症に関与する因子のひとつと考えられています。

症状

ミオクロニー欠神発作

主に肩や上腕を中心とした上肢が、1秒間に3回ほどリズムを刻むように段階的に持ち上がっていきます。このとき、意識はくもった状態になり、周囲の人の呼びかけにも反応をみせなくなります。発作は突然に始まり、10秒~60秒ほど持続した後、突然に終了します。発作が終わると意識状態はただちに戻り、発作開始前と同じように活動や会話をするようになります。ミオクロニー欠神発作は1日に数回、多い場合は1日に数十回起こります。

発作が多い日の注意点

ミオクロニー欠神発作は、下肢(下半身)の症状もあるものの、転倒などのリスクは比較的少ないという傾向があります。しかしながら、発作が多い日や体調に異変がみられる日は、外出や階段昇降、入浴など、事故につながりかねない行為には注意を払う必要があります。

精神発達遅滞

軽度から重度の知的な障害を伴うことがあります。ミオクロニー欠神てんかんを発症する前から精神発達遅滞がみられる例と、発症後に発作を繰り返すことで歳月を経て現れる例があります。

発達障害・行動障害

ミオクロニー欠神てんかんだけでなく、小児てんかん全般に伴いやすい合併症です。病気そのものに合併する例のほかに、抗てんかん薬の副作用として集中力の低下などが起こる例もあります。

全身けいれん

強直間代発作(きょうちょくかんたいほっさ)など、全身けいれんを伴うことがあります。また、発症から数年はミオクロニー欠神発作が主な症状であったものの、成長に従い発作の表現が変容し、全身けいれんなど、別の形の発作が主となることもあります。

このほか、複数の異なるてんかん発作が起こるレノックス・ガストー症候群様になることもあります。

*レノックス・ガストー症候群とは、先天的な脳の異常や外傷などにより、多様なてんかん発作が現れるてんかんのことです。

症状の有無による分類

ミオクロニー欠神てんかんは、ミオクロニー欠神発作が主な症状となる特発性グループと、発作以外の症状も伴う症候性グループに分けられます。精神発達遅滞や全身けいれんなどの症状は、特に症候性グループに多くみられます。

検査・診断

問診

付き添いの方(保護者の方など)が、発作時の様子を医師に詳しく伝えましょう。発作時には全身のどの部位が動くのか、意識状態はどうか、発作は何秒ほど持続するかといった情報が、診断や治療に役立ちます。

ミオクロニー欠神発作は特徴的であるため、言葉のみでの説明が難しいこともあります。そのため、問診時にスマートフォンなどで撮影した動画をみせることも役立ちます。

ビデオ・ポリグラフ検査

ミオクロニー欠神てんかんの診断は、脳波、発作の表現、筋肉の収縮などを確認することで行われます。

脳波は脳波検査、発作の表現はビデオ検査、筋肉の収縮は表面筋電図検査により確認できます。これらの確認は、ビデオ付きのデジタル脳波計を用いることで、同時に行うことができます。

鑑別診断

典型的なミオクロニー欠神てんかんではない場合、症状がよく似た他の病気ではないことを確認する鑑別診断(かんべつしんだん)が必要になります。一例としては、まぶたが律動的に動く定型欠神発作を持つ小児欠神てんかんや、律動的ではなく1回のみの発作が起こるミオクロニー発作が主体のミオクロニーてんかんとの見極めが必要なこともあります。

治療

治療の中心は、抗てんかん薬を用いた薬物療法です。

薬物療法

ミオクロニー欠神てんかんの場合、まずは小児欠神(しょうにけっしん)てんかんに有効とされる抗てんかん薬を使用して、発作が軽減するかといった効果をみます。異なる成分からなる3剤の抗てんかん薬を一つずつ使う場合と、複数を併用する場合があります。

3剤の抗てんかん薬で期待する効果がみられない場合、異なるタイプの抗てんかん薬を追加していきます。

治療により2~3年間発作が起こっておらず、検査で脳波にも異常がみられない場合は、薬をやめること(断薬)も可能です。この場合は、半年~1年かけて少しずつ量を減らし、慎重に薬をゼロに近づけていきます。

抗てんかん薬の副作用

抗てんかん薬には、眠気や集中力の低下といった副作用もあります。副作用により、患者さんの学校生活などに支障が出ている場合は、薬のリスクとベネフィットを考え、慎重に対応を決める必要があります。抗てんかん薬を急に中止することで発作が悪化するケースも有るため、自己判断で断薬せず、困っていることを主治医に相談しましょう。

 

手術(緩和治療)

ミオクロニー欠神てんかんは、基本的にてんかん外科手術の対象にはなりません。ただし、重大な事故につながりかねない転倒発作を繰り返す場合には、手術の対象となることがあります。ミオクロニー欠神てんかんに対する手術は、症状を抑えるための緩和治療であり、完治を目指す根治治療とは異なります。

2018年6月現在行われている手術は、脳梁離断術(のうりょうりだんじゅつ)というものです。この手術は、左脳と右脳をつなぐ太い束、脳梁(のうりょう)を切り離すというものです。脳梁を切断することで、両側の脳が同時に興奮することを防げるため、転倒発作を抑えることが可能になります。ただし、頭部の手術にはリスクも伴います。そのため、転倒発作などの重い症状がないミオクロニー欠神てんかんは、この手術の対象にはなりません。

また最近、迷走神経刺激術(めいそうしんけいしげきじゅつ)という新たな緩和療法が導入されています。この場合には小手術で済むため、脳梁離断術より迷走神経刺激術が優先される場合もあります。

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