概要
レノックス・ガストー症候群は、主に1歳から8歳頃(ピークは3歳から5歳頃の幼児期)に発症し、特徴的な脳波とさまざまなてんかん発作がみられる病気です。90%以上の場合で知的発達症(知的障害)を伴い、睡眠障害や多動なども現れる場合があります。脳の異常やほかのてんかんから移行することが多いといわれ、国内の患者数は10万人につき、20~30人程度と推定されています。
てんかんにはさまざまな種類がありますが、発症年齢や発作のタイプ、脳波などに共通の特徴がみられることがあり、それらはてんかん症候群と呼ばれています。レノックス・ガストー症候群はてんかん症候群のうち、“発達性てんかん性脳症”に分類されています(2026年時点)。発達性てんかん性脳症とは、頻発する発作や脳波の異常そのものが脳の正常な発達を阻害し、認知機能や行動に影響を及ぼす病態です。
レノックス・ガストー症候群が疑われた場合は、発症年齢や発作のタイプを確認したうえで脳波検査や画像検査などが行われます。診断が確定した後は複数の抗てんかん発作薬による治療が実施されますが、レノックス・ガストー症候群は薬が効きにくい特徴(薬剤抵抗性)があるため、食事療法や手術が検討されることもあります。治療によって発作が減少し、ほかのてんかん症候群に移行する可能性はありますが、完全に発作がなくなる症例は5%程度で、一般的には大人になっても症状が続くといわれています。
原因
レノックス・ガストー症候群の原因には、脳形成異常や、低酸素性虚血性脳症、外傷後脳損傷、脳腫瘍、代謝異常、染色体異常、先天奇形症候群、遺伝子異常などがありますが、これらの共通点は発見されていません。また近年、レノックス・ガストー症候群の中に、特定の遺伝子(GABRB3、ALG13、SCN8A、STXBP1、DNM1、FOXG1、CHD2)に変異がみられる例が報告されています。
脳の異常
生まれつきの脳の形の異常や、脳炎・脳症の後遺症、頭部外傷、脳腫瘍、先天性の代謝異常などが原因となる場合があります。2026年現在、これらの原因に共通点は発見されておらず、詳細な機序は明らかになっていません。しかし近年、これらの原因に共通して、脳内の各部位をつなぐ神経の経路に異常が生じている可能性が指摘されています。
ほかのてんかんからの移行
初めててんかんの発作が現れたときにレノックス・ガストー症候群と診断されることは少なく、ほかのてんかんから移行することが多いと考えられています。特に乳児てんかん性スパズム症候群(ウエスト症候群)の約20~60%が成長に伴って移行するといわれています。しかし、近年は乳児てんかん性スパズム症候群の早期の発見と治療によって、その割合は減少している可能性があります。
遺伝学的な要因
レノックス・ガストー症候群では、さまざまな染色体や遺伝子の変異との関連が報告されています。多くは親から受け継がれた変異ではなく、精子や卵子、あるいは受精卵の段階で偶然に生じた変異(de novo変異)であると考えられています。結節性硬化症やレット症候群など、遺伝子変異が原因となる病気に伴って発症することもあります。
症状
主な症状は、多彩なタイプのてんかん発作と中等度~重度の知的発達症です。中でも、中核的なてんかん発作として、強直発作、非定型欠神発作、脱力発作の3つが挙げられます。
特徴的なてんかん発作
- 強直発作……体幹を中心として左右対称に筋肉が強く収縮し、体がつっぱる発作です。顔をしかめたり、短い叫び声を上げたり、両手を上げたりすることがあります。持続時間は数秒~数分で、睡眠中に頻発する傾向があり、睡眠の質を低下させる要因となります。
- 非定型欠神発作……意識が遠のいて、周囲への反応が鈍くなる発作です。発作の始まりと終わりが緩やかで、持続時間が分かりにくいといわれています。
- 脱力発作……全身の筋肉の緊張が突然失われる発作です。持続時間は一瞬~数秒ですが、前触れなく頭が下に垂れたり、体が崩れ落ちるように倒れたりするため、顔や頭に外傷を負うリスクが高く、日常生活において注意を要します。
このほか、ミオクロニー発作や全般強直間代性発作、非けいれん性てんかん重積状態などもみられることがあります。ミオクロニー発作は脱力発作と同様に持続時間が短く、転倒を起こしやすい発作です。全般強直間代性発作では、強直発作の後にけいれんが生じます。非けいれん性てんかん重積状態は、非定型欠神発作が数時間以上続いたり、強直発作を繰り返したりする状態です。
知的発達症と行動障害
レノックス・ガストー症候群では、90%以上に中等度~重度の知的発達症が認められるといわれています。また、小児期~青年期には睡眠障害や多動などの行動障害を合併することも少なくありません。
検査・診断
診断は、発症年齢や複数のタイプの発作、知的発達症といった臨床症状に加え、脳波検査での特徴的な所見に基づき行われます。また、原因を特定するために画像検査や遺伝子検査などが併せて検討されることもあります。
脳波検査
覚醒時と睡眠時の脳波を測定し、2~2.5Hz(1秒間に2~2.5回)程度のゆっくりとしたリズムで、脳全体に鋭い波と緩やかな波が併せて現れる全般性遅棘徐波を確かめます。また、主に睡眠時に数秒間、速い波(10~20Hz程度)が連続してみられる速律動を認めます。
画像検査
脳の形の異常や損傷、腫瘍の有無などを確認するために、頭部のMRI検査が行われます。
そのほかの検査
必要に応じて、先天性代謝異常を調べるための血液検査や、遺伝子変異を確認するための遺伝学的検査が検討されることがあります。
治療
レノックス・ガストー症候群の治療は、複数の抗てんかん発作薬を使用する薬物療法が基本です。薬物療法で効果不十分な場合は、ケトン食療法や、脳梁離断術、迷走神経刺激術などの手術が検討されます。
薬物療法
発作のタイプに応じて、さまざまな抗てんかん発作薬が用いられますが、薬剤抵抗性のために十分な効果を得られない場合が少なくありません。2024年には、既存の薬で効果不十分な場合の併用療法として、フェンフルラミンという抗てんかん発作薬が新たに承認されました。フェンフルラミンは、転倒を伴う激しい発作の頻度を減少させることが報告され、薬剤抵抗性のある患者に対する選択肢の1つとなっています。ただし、心臓や肺に関する病気がある場合や、年齢などによっては服用できない可能性もあります。
食事療法(ケトン食療法)
糖質を制限し、脂質を主体とした食事を取ることで、脳のエネルギー源をブドウ糖からケトン体に切り替える治療法です。発作を抑える効果が期待されますが、低血糖や吐き気などの副作用が現れる可能性もあるため、医師などの指導のもとで行われます。
手術
抗てんかん発作薬に対して薬剤抵抗性がみられる場合に、以下のような手術が検討されることがあります。
- 脳梁離断術……左右の脳をつなぐ神経線維を切り離し、異常な電気信号の伝播を遮断する手術です。主に転倒を伴う脱力発作や強直発作の抑制を目的として行われます。
- 迷走神経刺激術……脳神経の1つである迷走神経に電気刺激を送る装置を、胸部に植え込む手術です。主に発作の回数を減少させるために行われます。
脳梁離断術と迷走神経刺激術はいずれも根治のための手術ではなく、症状の緩和のために行われる治療法です。
予防
レノックス・ガストー症候群の発症そのものを防ぐ確立された方法はありませんが、先行する乳児てんかん性スパズム症候群に対して早期に適切な治療を行うことが、将来的な重症化を和らげる可能性があります。
発症後は、成人期以降も多くの場合で薬剤抵抗性の発作や知的発達症・行動障害が続きます。そのため、抗てんかん発作薬による長期的な治療に加え、転倒による頭部外傷を防ぐヘッドギアの装着や規則正しい生活の維持などの支援が必要です。
レノックス・ガストー症候群の患者さんとご家族の方へ
レノックス・ガストー症候群でよりよい治療を行うためには、普段のご自身の症状や状態、治療の希望を医師にしっかりと伝えることがとても大切です。「治療ノート」では、毎日の体温や痛み、皮疹などの症状、気になることや困りごとをスマートフォンやパソコンで簡単に記録することができます。
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