みくりっつびょう

ミクリッツ病

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

ミクリッツ病とは、IgG4関連疾患と呼ばれる疾患のなかで、特に涙腺や唾液腺に病変がみられるものを指します。ミクリッツ病では、涙や唾液の分泌が低下するといった症状が現れます。

同じように涙腺や唾液腺に病変を認める疾患として、「シェーグレン症候群」と呼ばれるものが知られています。ミクリッツ病とシェーグレン症候群の病変部位が類似することから、歴史的にミクリッツ病はシェーグレン症候群の一種であると考えられた時期もあります。しかし、IgG4関連疾患の概念が確立して以降、両者は別の疾患であると認知されるようになってきています。

ミクリッツ病においては、プレドニゾロンと呼ばれるステロイドによる治療が適応となります。初期治療に対しての反応性は良好ですが、長期間服用することでの弊害も懸念されるようになります。そのため、長期的にはステロイドを減量し休薬できるよう、内服量を調整していくことになります。

原因

免疫グロブリンの種類

人の身体には病原体を攻撃する「抗体」と呼ばれるものが存在しています。その抗体の主な成分が免疫グロブリンというタンパクであり、これを英語でイムノグロブリン(Immunoglobulin; Ig)といいます。免疫グロブリンには、IgG・IgA・IgM・IgD・IgEの5種類があり、血液中にもっとも多く含まれるのがIgGです。

さらにIgGにはタイプが4種類あり、IgG1からIgG4まで番号が振られています。正常な状態では血液中に存在する量は番号順にIgG1がもっとも数が多く、IgG4は一番数が少ないです。

ミクリッツ病の原因はIgG4

しかし、ミクリッツ病ではIgG4の値が著明に増加しています。同じくIgG4が増加する病気としてIgG4関連疾患が知られていますが、ミクリッツ病はIgG4関連疾患に含まれるひとつの疾患概念です。

IgG4関連疾患を発症すると、膵臓や下垂体、肺や腎臓など全身各種臓器が障害を受ける可能性がありますが、ミクリッツ病では、両側性、対称性、持続性に涙腺や唾液腺の腫脹がみられることになります。

ミクリッツ病に罹患している患者さんの涙腺や唾液腺では、IgG4と呼ばれるタイプの抗体を産生する形質細胞が多くなっていることが確認されます。どのような原因をきっかけとして、こうした反応が生じているのかは明らかになっていませんが、自己免疫性疾患のひとつであると考えられています。

症状

ミクリッツ病では、両側性持続性に涙腺や唾液腺に腫脹が生じます。こうした腺組織に障害が生じると涙や唾液の分泌が低下することになります。その結果、以下のような症状が生じることになります。

  • 眼が乾く
  • 唾液の量が減る

など

ミクリッツ病は、IgG4関連疾患に含まれる疾患概念であり、IgG4関連疾患でみられる他の臓器障害に関連した症状を併発することもあります。なかでも多い臓器病変としては、IgG4関連腎臓病、自己免疫膵炎、後腹膜線維症、呼吸器病変、大動脈周囲炎などです。

さらにミクリッツ病では、悪性腫瘍発症リスク(たとえば悪性リンパ腫肺がん大腸がんなど)との関連性を指摘する報告もあります。そのため、ミクリッツ病の経過中には悪性腫瘍の発生にも注意を払うべきであると推奨されることもあります。

検査・診断

ミクリッツ病の診断では、以下がみられることが重要です。

  • 涙腺や耳下腺、顎下腺の持続性(3か月以上)
  • 対称性に腫脹

また血液検査を行い、IgG4が著明に増加していることを確認することも必要です(135mg/dl以上)。さらに、病変が生じている部位(耳下腺など)の組織を実際に採取して、顕微鏡的に形質細胞などの細胞浸潤と、組織が硬く線維化を起こしていることを確認することもなされます。

治療

治療介入の時期は総合的に判断

ミクリッツ病治療のタイミングについては、臓器障害が涙腺や唾液腺に留まっているのか、もしくはその他の臓器障害も伴っているかによっても異なります。また眼が乾燥する、口が渇く、といった自覚症状が存在するかどうかについても検討されます。こうした因子を加味しながら、治療介入の時期を検討します。

第一選択薬はステロイド

ミクリッツ病の治療介入が必要であると判断された場合には、第一選択薬として「プレドニゾロン」と呼ばれるステロイドが使用されることになります。プレドニゾロンに対する初期反応は良好なことが多く、症状の緩和を図り4週間同量のプレドニゾロンを持続します。その後、徐々にプレドニゾロンの量を減量しながら可能であれば休薬に向けた減量を行うことになります。

ステロイドは長期に渡って服用

実際の経過としては、完全にプレドニゾロンを中止できることは難しく、ほとんどの方で一定量のプレドニゾロンを内服継続することになります。長期間のステロイド使用には副作用も懸念されることから、可能な限りステロイドからの離脱を図るような治療も検討されています。

具体的には、アザチオプリンやミコフェノール酸モフェチル、リツキシマブなどの薬の効果が指摘されています。今後こうした薬剤を適切に使用できるよう、より一層の働きかけが必要であると考えられています。

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