めびうすしょうこうぐん

メビウス症候群

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概要

メビウス症候群とは、眼の運動や顔の表情形成に深く関係する「外転神経」や「顔面神経」と呼ばれる脳神経に先天的な麻痺を認める病気です。顔が笑わない、泣いているのに表情が変わらない、瞬きをしない、眉毛が動かない、眼の動きがおかしいなどの症状を呈しますが、進行することはありません。神経麻痺(まひ)が生じる原因については、明らかになっていません。

日本においてメビウス症候群は難病指定を受けている病気の一つであり、およそ1,000人前後の患者さんがいると推定されています(2019年時点)。日常生活に支障をきたすこともあり、症状の程度に合わせたサポート体制を考慮することが大切です。

原因

メビウス症候群の原因は不明で、赤ちゃんが胎内にいる段階での遺伝要因や血流が不足することが推定されています。メビウス症候群は、ほとんどが遺伝することなく単発で生じますが、まれに家族内に複数発症することも報告されており、遺伝子の異常も示唆されています。

メビウス症候群は、脳神経のなかでも「外転神経」と「顔面神経」に生まれつきの麻痺が生じています。外転神経は、眼を外側に向ける際にはたらく神経であり、顔面神経は顔面の表情の筋肉を動かすのに重要な役割を示します。また、メビウス症候群では飲み込みや嚥下(えんげ)、発語に関係するそのほかの脳神経にも影響が生じることもあります。

症状

メビウス症候群では、眼球運動と顔面の表情に異常を認めます。眼球運動としては、眼球を外側に向けることができないため、眼球運動の異常として気付かれます。また、顔面神経麻痺に関連して、表情を上手に変化させることができません。そのため、表情が乏しい、笑ったり泣いたりしているのに表情が変化しない、まばたきをしないなどの症状が出現します。また、泣いているときには涙が出ないのに、食事中に涙が出るなどの症状を見ることがあります。

メビウス症候群では、外転神経や顔面神経以外の脳神経が麻痺することもあります。哺乳障害、呼吸障害などの症状、発声に支障をきたすこともあります。涙の分泌量が低下することからドライアイを発症することもあります。

脳神経系の症状以外に、筋力の低下や骨の変形、脊椎(せきつい)が曲がる「側彎症(そくわんしょう)」などを呈することもあります。また、てんかんや自閉症、難聴、知的障害などを伴うこともあります。

検査・診断

メビウス症候群は、基本的には脳神経の麻痺(特に外転神経と顔面神経)を身体所見で確認することから診断がされます。メビウス症候群では脳の一部が石灰化を起こしていたり、脳神経そのものが形成されていなかったりすることもあります。これらの所見を確認するために、頭部CTやMRIが行われることもあります。

メビウス症候群は、原因が明らかになっておらず、確実に診断することができる検査も存在しません。そのため、類似の症状をもつほかの病気を除外することも必要になります。たとえば、先天型筋強直性ジストロフィーやリー脳症(ミトコンドリア病の一つ)なども除外が必要な病気です。

治療

メビウス症候群の治療は、麻痺症状を生じている神経症状に対する対症療法が中心になります。閉眼が顔面神経の麻痺症状でできない場合、点眼薬でドライアイを予防したりします。

また、メビウス症候群では、嚥下(えんげ)(口の中の食物を飲み込むこと)や呼吸に影響を及ぼすこともあります。嚥下機能に関連して哺乳や摂食が障害を受けることもあるため、チューブを利用した経管栄養や、ときに胃瘻(いろう)を造設することもあります。呼吸障害に対しても、酸素や人工呼吸管理をすることがあり、ときに気管切開から慢性的な呼吸補助が必要になることもあります。

骨の異常を伴う場合には、装具や手術などの整形外科的な治療をすることがあります。

メビウス症候群は、症状の出方が千差万別であり、同じ神経の麻痺であっても治療介入を要することもあれば、経過観察で対応可能なこともあります。症状に合わせて適切な治療方法を選択することが重要です。

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