治療
リンパ浮腫は適切な治療を行わないとリンパ管のダメージが不可逆的に進行していくため、早期段階からの対処が必要です。けがなどにより急速にリンパ浮腫が悪化したり、蜂窩織炎をきたしたりすることがあるため、患部に傷ができないよう気を付けて生活(スキンケア)する必要があります。
基本となる治療は保存療法とよばれる非手術療法で、中でも弾性着衣(ストッキング・スリーブなど)による圧迫療法がもっとも重要になります。リンパ浮腫は、一度発症すると治らないとされているため、原則的に生涯にわたり圧迫療法を続けていくこととなります。ほかには、圧迫をしたうえでの適度な運動、リンパ浮腫専用の特殊なマッサージ(用手的リンパドレナージ:MLD)がリンパ浮腫の保存療法として行われます。いわゆるリンパマッサージ(リンパ浮腫治療に用いられるMLDとは異なるマッサージ)や針治療は、リンパ浮腫が悪化するリスクがあるため避けたほうがよいでしょう。
過去にはむくみの治療として利尿薬が用いられることもありましたが、現在では有効性は否定されており、慢性使用によるリスクがあることから使用すべきではないとされています。漢方薬や新規治療薬などさまざまな薬がリンパ浮腫治療として模索されていますが、まだ研究段階のため推奨される薬物療法は現在のところありません。
保存療法を行っても進行する場合は手術治療が検討されます。リンパ浮腫の手術治療は大きく“減量術”と“再建術”の2つに分けられます。減量術は、増えた脂肪組織を脂肪吸引などにより除去することで直接的に患肢(症状のある腕や脚)を小さくする手術で、手術直後より目に見える効果(患肢が小さくなる)が得られますが、リンパの流れはかえって悪化するため、生涯にわたり強い圧迫療法が必要となります。一方、再建術は、リンパ組織を移植したりリンパをバイパスしたりすることでリンパの流れを改善させる手術です。減量術ほど術直後から明らかな効果がみられることは多くありませんが、むくみを改善させるほか、圧迫療法を弱められる、蜂窩織炎を予防するなどの効果が期待できます。
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