概要
一酸化炭素中毒とは、一酸化炭素を吸い込むことでさまざまな症状を引き起こす病気のことです。
一酸化炭素は、炭素を含む物質が不完全燃焼する際に生じる気体のことで、人が吸い込むと血液中のヘモグロビンと結びつく性質を持ちます。本来、ヘモグロビンは酸素と結びついて全身に酸素を運搬するはたらきを担いますが、一酸化炭素は酸素よりはるかにヘモグロビンと結びつきやすいため、多くの一酸化炭素を吸い込むと全身の酸素が不足していきます。
その結果、軽度な場合には頭痛、めまい、眠気、集中力の低下などの症状が引き起こされ、中等度以上になると錯乱などの精神症状やけいれん、意識消失などの神経症状を引き起こし死に至るケースも少なくありません。また、回復したとしても脳にダメージが加わっているため、記憶障害や麻痺などの後遺症を残すケースが多いとされています。
軽症な場合には新鮮な空気や酸素を吸い込むことで自然に回復しますが、症状が重い場合は高い圧力で酸素を体に送り込む高気圧酸素療法が必要です。
原因
一酸化炭素中毒は一酸化炭素を吸い込むことで発症する病気です。
一酸化炭素は、体内に酸素を運搬するはたらきをするヘモグロビンと結びつく性質があります。酸素より200倍以上もヘモグロビンと結びつきやすいため、吸い込んでしまうとヘモグロビンと酸素の結びつきが阻害され、全身へ届けられる酸素が減少することで低酸素状態に陥ってしまうのです。
なお、一酸化炭素は炭素を含む物資が酸素の少ないところで不完全燃焼すると発生する気体です。主に閉鎖された室内での火災時や長時間換気せずに灯油ストーブなどを使用することで発生します。
また、一酸化炭素は無色無臭の気体であるため、発生しても気付くことができないのも特徴の1つです。
症状
一酸化炭素中毒の症状は血液中の一酸化炭素の濃度によって異なります。
血液中の濃度が10~20%の場合は、頭痛、吐き気など軽い症状のみがみられますが、20%を超えると集中力や判断力の低下、脱力などの症状が現れるようになります。そして、30%を超えると呼吸困難、胸痛といった症状や錯乱など精神的な変調がみられるようになります。
さらに血液中の一酸化炭素の量が増えると、けいれん発作、失神、意識障害などがみられ、60%を超えると血圧の低下や呼吸不全などを引き起こし救命が困難になることも少なくありません。また、仮に救命できた場合でも記憶障害や人格変化、運動神経麻痺などの後遺症が出ることが多いとされています。
検査・診断
一酸化炭素中毒が疑われるときは以下のような検査が行われます。
血液検査
一酸化炭素中毒の診断のために、血液中の一酸化炭素ヘモグロビン(一酸化炭素と結びついたヘモグロビン)の濃度を測定します。また、やけどによる脱水や炎症の程度など、全身の状態を評価するために血液検査を行います。
画像検査
けいれん発作などの神経症状がある場合は、CTなどの画像検査で脳の状態を評価します。また、重症の場合には低酸素脳症を併発することも多く、経過を評価するために繰り返し頭部CT検査を行うことも少なくありません。
治療
一酸化炭素中毒は軽症な場合には新鮮な空気や酸素吸入をすることで回復していきます。
しかし、心室性不整脈や肺水腫がみられるなどの重症な場合、ヘモグロビンから一酸化炭素を早急に引き離すために高圧で酸素を体内に送り込む高気圧酸素療法が必要になります。症状がなくても、一酸化炭素ヘモグロビン濃度が20%以上(妊婦の場合は10%以上)の場合、高気圧酸素療法が行われます。
また、一酸化炭素中毒は重症な場合には呼吸不全や低血圧などの症状を引き起こすため、状態によっては人工呼吸器の装着や昇圧剤などによる薬物療法を行う必要があります。さらに、低酸素脳症を併発しているような場合には脳へのさらなるダメージを防いで機能の回復を目指すために脳低温療法を行うこともあります。
応急処置
一酸化炭素中毒が疑われる場合は速やかに新鮮な空気を吸い込む必要があります。一酸化炭素中毒が疑われる症状を自覚したときや周囲に一酸化炭素中毒を疑う症状がある人がいるときは、室内を換気して暖房を止め、速やかに屋外に移動することが大切です。
また、意識を失っている場合は屋外へ移動し、早急に救急車を呼びましょう。呼吸や心臓の拍動が止まっているときは、人工呼吸や心臓マッサージなどの蘇生処置を行うことが大切です。
予防
一酸化炭素中毒を予防するには一酸化炭素が室内に籠らないようにすることが大切です。
火災に注意するのはもちろんのこと、灯油ストーブなどの暖房器具を使用する際は排気装置を正しく設置し、設置できない場合は1時間に1回以上5分間は窓を開けて換気をしましょう。また、家庭用の一酸化炭素検知器などを設置することも推奨されています。
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