概要
不安神経症とは、日常生活のなかで根拠がない不安や心配を漠然と持ち続ける病気です。不安神経症は全般性不安障害とも呼ばれる疾患であり、「自分が病気になるのでは」、「帰り道に交通事故に巻き込まれるのでは」、など明確な根拠がなく不安や心配を感じてしまいます。
発症には、環境的な要因、遺伝的な要因、脳の機能的な要因などが複雑に関与すると考えられています。治療では、不安をコントロールするために、精神療法や薬物療法が行われます。
原因
不安神経症の原因は完全には解明されていませんが、発症には、環境的な要因、遺伝的な要因、脳の機能的な要因などが複雑に関与すると考えられています。
不安神経症を発症した方のなかには、過去に、事故に遭遇した、大病に罹った、など精神的に大きな影響を受ける出来事に直面した経験がある方もいます。また、ご家族のなかに不安神経症を抱える方がいる場合もあります。
脳科学的には前帯状回、交感神経系、大脳基底核の過活動、大脳辺縁系の機能異常が病因として考えられています。
症状
不安神経症では、何の根拠もないにもかかわらず、漠然とした不安を慢性的に感じてしまいます。
具体的には、旅行先や転勤先などにおいて、交通事故や天災などに巻き込まれてしまうのではないかと感じることがあります。
また、健康であるにもかかわらず、理由もなく自分はがんなのではないか、家族が病気になってしまうのではないか、などと不安や心配を感じていることが、感じていないときより多くなります。あたかも「心配事をいつも探しまわり、それを見つけ出す」かのように思える病気です。
不安神経症では、慢性的に根拠のない不安を感じることにより
- 落ち着きがなくなる
- イライラしやすくなる
- 眠れなくなる
といった症状を呈することもあります。
さらに、身体面にも障害(特に緊張と関連する症状)が生じることがあります。具体的には、
などを自覚することがあります。
検査・診断
不安神経症は、詳細な面接を行い、
(1) 何の根拠もないにもかかわらず、多くの事柄に対して過剰な不安と心配を慢性的(6か月以上)に感じる。
(2) 患者はその不安を抑えることが難しいと感じる。
(3) 以下の6症状のうち少なくとも3つを伴っている。
- 落ち着かない、緊張、神経の高ぶり
- 疲れやすい
- 集中困難または心が空白になる
- 易怒性
- 筋肉の緊張
- 睡眠障害
(4)患者に苦痛を与えているか、職業などの機能を障害している。
(5)薬物乱用や他の医学的問題に起因するものではない。
(6)他の精神障害では説明できない。
という基準(米国精神医学会DSM-5より)を満たすことで診断されます。生物学的に診断できる特定の臨床検査は存在しません。そのため、丁寧な問診が診断には必須であるといえます。
特に、うつ病では同様の症状が出現することが多いので、両者の鑑別が必要となることが多くなりますが、厳密な鑑別は難しい場合も少なくありません。
実際、半数は少なくとも一時的にうつ病を合併すると言われています。実際に身体疾患に罹患している可能性を除外することを目的として、血液検査や尿検査などが行われることもあります。
治療
不安神経症では、不安に対してうまく対処し、日常生活を送るうえで可能な限り支障が生じないようにすることを目的として治療が行われます。
具体的には、精神療法や薬物療法を組み合わせることで治療が行われます。
精神療法
精神療法として、認知行動療法が挙げられます。認知行動療法を通して、不安や心配事に対する対処方法を学び、物事の考え方、それに基づく行動様式を正常に近づけます。
薬物療法
抗うつ薬(選択的セロトニン再取込み阻害薬)や抗不安薬、睡眠薬などの薬剤を併用することもあります。
その他
ヨガや運動などのリラックス法を取り入れることで、症状緩和につながることもあります。
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