概要
中皮腫は、肺、消化管、心臓などの臓器の表面を覆う漿膜に発生する悪性腫瘍です。もっとも多いのは胸膜に発生する胸膜中皮腫であり、全体の8割を占め、次いで腹膜に発生する腹膜中皮腫が多いとされています。
いずれのタイプの中皮腫もその多くは建築資材などに使用されていたアスベストの曝露が原因で発症することが分かっています。しかし、必ずしも曝露された直後に発症するわけではなく、発症までには20~40年ほどかかるとされています。わが国でアスベストの使用が全面的に禁止されたのは2006年になってからであり、今後さらに発症者が増えていくことが予想されています。
中皮腫の症状は発症した部位によって異なりますが、胸膜中皮腫は呼吸困難や胸痛など、腹膜中皮腫は腹部のしこりや腹水などの症状が現れます。また、ほかの臓器へ転移することもあります。また、中皮腫は治療が難しい悪性腫瘍の1つと考えられており、手術、抗がん剤治療、免疫療法、放射線治療などが行われますが、特に効果が高いとされる治療法はないのが現状です。
原因
中皮腫は、胸膜、腹膜、心膜など臓器を覆う膜の中膜細胞から発生する悪性腫瘍のことです。
いずれの中皮腫も多くはアスベスト(石綿)と呼ばれる建築資材に曝露されたことが原因で発症すると考えられています。
アスベストは1970~80年代に多く使用されていましたが、発がん性が判明したことにより2006年には全面的に使用や製造が禁止されました。しかし、中皮腫はアスベストに曝露されてから20~40年の潜伏期間があること、アスベストを使用した建物の老朽化や解体などによってアスベストを吸い込むケースがいまだ起こりうることから、今後も患者の増加が予想されています。
症状
中皮腫の症状は発症した部位によって異なります。
胸膜中皮腫は、進行するまで無症状のことも多いですが、進行すると胸に水がたまって呼吸困難、胸部圧迫感、胸痛などの症状が引き起こされます。また、周辺の大血管や神経を巻き込んで増大することも多く、声帯の動きをつかさどる反回神経にダメージを与えて声のかすれや嚥下障害が起こることもあります。
腹膜中皮腫も早期段階では症状がないことが多く、進行するとお腹に水がたまるようになるため、お腹の張りや痛み、食欲の低下、便秘・下痢などの症状がみられ、腫瘍が大きくなるとお腹にしこりが触れるようになることもあります。また、心膜中皮腫は心膜と心臓の隙間(心膜腔)に水がたまって心臓を圧迫するため心機能が低下し、体を動かすと息切れや動悸がしやすくなるのが特徴です。
検査・診断
中皮腫が疑われる場合は以下のような検査を行います。
画像検査
いずれの部位に発生した中皮腫も腫瘍の存在を確認し、位置や大きさ、転移の有無などを評価するためにX線、CT、超音波、FDG-PETなどを用いた検査が行われます。また、手術が予想される場合は、MRIによる検査を行う場合もあります。
血液検査
貧血や炎症の有無など全身状態を評価するために血液検査を行うのが一般的です。中皮腫は血清や胸水、腹水中のヒアルロン酸やメゾテリンの値が高くなることがあり、診断の補助として測定することあります。
胸水・腹水・心嚢液検査
中皮腫が原因で胸、お腹、心嚢に水がたまっていると考えられる場合は、たまった水を採取して顕微鏡で中皮腫の細胞が含まれているか否かを調べる検査を行うことがあります。
病理検査
中皮腫の確定診断に必要であり、腫瘍の組織の一部を採取して顕微鏡で詳しく調べる検査です。多くの場合、手術で摘出した後に検査を行ったり、胸腔鏡や腹腔鏡などを用いて組織を採取したりすることもあります。
治療
中皮腫に対しては手術、抗がん剤治療、免疫療法、放射線治療が病状に合わせて行われます。
転移がなく病変が広範囲に広がっていない場合は手術による摘出が行われますが、再発することも多く、手術後に抗がん剤治療や放射線治療を追加で行うケースも少なくありません。また、進行して全ての病変を切除するのが困難な場合は抗がん剤治療や免疫チェックポイント阻害剤が主体であり、胸壁痛みなどの緩和目的では放射線治療が行われています。
なお、中皮腫は胸やお腹に水がたまることで呼吸困難や腹部膨満感などの症状を引き起こします。そのため、苦痛が強い場合には胸やお腹にチューブを挿入してたまった水を排出する治療を行うことがあります。
予防
中皮腫の多くはアスベストに曝露されることで発症します。現在、わが国ではアスベストは使用と製造が全面的に禁止されていますが、1970~1980年代頃に建築された建物には多く使用されています。建物の老朽化に伴い、アスベストがむき出しになって曝露されたり、解体時に曝露されたりする場合があり、アスベストが使用されている建物には注意が必要です。また、建設業やボイラー作業、造船業などに携わっている方は定期的にX線やCTによる画像検査を受けるようにするとよいでしょう。
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