概要
乳房肥大症とは、乳房が発育している状態を指します。生理的に生まれたての赤ちゃんや思春期の女性において乳房が大きくなることはありますが、こうしたものに病的な意味はありません。しかし、思春期よりも早い年齢で乳房肥大をみたり、男性において乳房が肥大したりする場合には、背景に存在する病気を検索することが求められます。
原因
乳房の肥大には、女性ホルモンのバランスが大きく関与しています。たとえば、脳の下垂体腫瘍や卵巣腫瘍、精巣腫瘍、甲状腺腫瘍、副腎腫瘍、肺がんなどが存在すると、女性ホルモンのバランスが崩れてしまい、それが原因となって乳房肥大を来すことがあります。その他、肝機能障害が強い場合にも乳房肥大をみることがあります。
乳房肥大は必ずしも身体疾患を原因として発症するわけではなく、薬剤を原因として生じることもあります。具体的には、抗結核薬や降圧剤、利尿薬などの薬剤と乳房肥大の関連性が指摘されています。
症状
新生児期はお母さんからのホルモンの影響があるため、乳房が大きいこともまれではありません。また、思春期を迎えた女性の乳房が大きくなることも、生理的な反応であるため問題ありません。
しかし、乳房の肥大は、これら正常でみられる状況以外で出現することがあります。具体的には、思春期において予測されるよりも早い時期に乳房が大きくなることがあります。また、思春期の男性においても生理的に乳房が大きくなる時期はありますが、ときに病的な要因が隠れていることがあるため注意が必要です。
また、乳房肥大症を引き起こす原因に応じて特徴的な症状をみることがあります。たとえば、脳下垂体腫瘍に関連したものであれば、頭痛や目の見え方の異常などを伴うことがあります。こうした付随する症状に着目することは、原因疾患を特定するうえでも重要です。
検査・診断
乳房肥大症を引き起こす要因は多岐に渡ります。脳下垂体腫瘍などの身体疾患が存在しないかどうかや、原因となりうる薬剤を服用していないかどうかを確認することが重要になります。
疑われる基礎疾患に応じて、血液検査(ホルモンバランスや肝機能障害などの評価)、頭部MRI、胸部単純レントゲン写真、尿検査などの検査を適宜組み合わせて診断します。
治療
乳房肥大症では、原因疾患に応じた治療介入を検討することが大切です。脳下垂体腫瘍が原因となっている場合には、手術やホルモン治療が検討されます。その他、腫瘍性病変が原因となっている場合には手術、化学療法、放射線療法などが適宜行われます。薬剤が原因となっている場合には、必要に応じて薬剤の中止や変更も検討されます。
乳房が大きくなる場合、生理的なものであって放置してもよいこともあれば、基礎疾患が隠れていることもあります。乳房が大きくなった際には、年齢やその他の随伴症状などを考慮しつつ、必要に応じて医療機関を受診することが大切です。
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