概要
副腎は約4~5g程度の小さな臓器で、腎臓の上側に左右1つずつあります。副腎は、皮質と髄質と呼ばれる部分で成り立っています。
副腎の皮質からは主にアルドステロン、コルチゾール、テストステロン、髄質からはアドレナリンとノルアドレナリンというホルモンが分泌されています。これらのホルモンは、ヒトが生きていくうえで重要な役割を担っています。
副腎腫瘍は、副腎の皮質や髄質に発生する腫瘍のことで、ホルモンを産生する腫瘍もあれば産生しない腫瘍もあります。過剰に分泌されるホルモンの種類によって症状や病態などが異なるので、それぞれ原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫と名前がついています。健康診断やほかの病気の検査などで偶然見つかった副腎腫瘍は副腎偶発腫と呼ばれますが、ほかの副腎腫瘍と同様にホルモン産生の有無や大きさなどを調べて治療方針が決められます。まれではありますが、副腎腫瘍の中に悪性のものがあり副腎がんと呼ばれます。
ホルモンを産生する副腎腫瘍は、高血圧や糖尿病などを引き起こす原因になるため手術で摘出することを検討します。副腎腫瘍の中には、まれに家族内発生を認めるものもありますが、一般的に遺伝の可能性は低いと考えられています。
原因
現時点で、副腎腫瘍の原因はほとんど分かっていません(2020年10月時点)。褐色細胞腫の一部は遺伝子の異常で発生することがあります。
症状
腫瘍から過剰に産生されるホルモンによって症状が異なります。それぞれの腫瘍で見られる主な症状には以下のようなものがあります。
原発性アルドステロン症
アルドステロンは、体の中にナトリウムを貯めることによって血圧を上げるホルモンです。そのため、原発性アルドステロン症の症状では高血圧がよく見られます。高血圧患者の約5~10%において原発性アルドステロン症が認められます。ほかには、脱力感や筋力低下、多尿などの症状が起こることがあります。
クッシング症候群
クッシング症候群では、副腎からコルチゾールというホルモンが過剰に産生されます。コルチゾールの過剰産生により特徴的な体つきになります。具体的には、胴体や顔に脂肪が多く、手足が細くなります。また、筋力の低下、皮下出血、生理不順、多毛、骨粗しょう症、高血圧、糖尿病などの症状を認めることがあります。脳卒中や心血管疾患の合併が多いことが分かっています。
褐色細胞腫
褐色細胞腫では、副腎からアドレナリンやノルアドレナリンが過剰に産生されます。
高血圧や頭痛、発汗、蒼白、動悸、便秘、高血糖などの症状を認めます。運動やストレスなどの刺激によって発作的に症状が出ることがあります。
副腎偶発腫
ホルモン産生の有無によって症状が異なります。副腎偶発腫は無症状のことが多いです。
検査・診断
副腎腫瘍の検査は、腫瘍によるホルモンの過剰産生の有無、他疾患の合併の有無、腫瘍の大きさや場所などを明らかにするために行われます。主に行われる検査は以下のようなものがあります。
尿検査・採血検査
尿検査や採血検査でホルモンが過剰に産生されているかどうか検査します。
負荷試験
原発性アルドステロン症に対しては、確定診断のために利尿薬や生理食塩水などを投与し、ホルモンの反応を見る負荷試験が行われます。
画像検査
超音波検査、CT検査、MRI検査などを行い、腫瘍の大きさや位置を確認します。クッシング症候群の場合には、副腎ではなく脳の下垂体に発生した腫瘍からコルチゾールが過剰に分泌されていることがあるため、下垂体MRI検査も行います。
副腎静脈サンプリング検査
副腎は左右に1つずつあるため、どちらから主にホルモンが過剰分泌されているか調べるために行われます。副腎静脈から血液をとって調べる検査で、原発性アルドステロン症が対象になります。
シンチグラフィ検査
副腎皮質シンチグラム、副腎髄質シンチグラムなどを行い、腫瘍があることを確認します。
シンチグラフィ検査とは、検査用の薬剤を体に投与し、放出される放射線を画像にする検査です。副作用は極めて少なく、痛みも注射の痛みくらいで済みます。
治療
原則として大きさは関係なく、ホルモンの過剰産生を認める副腎腫瘍は手術で摘出します。症状の程度によっては、手術せずにホルモンの作用を抑える薬によって治療をする場合もあります。
ホルモンの過剰産生がない腫瘍に対しては、手術せずに経過観察をすることが多いです。ただし、4~5cm以上の大きな腫瘍、徐々に大きくなる腫瘍は悪性の可能性があるので手術を検討します。
手術方法は内視鏡を使用した腹腔鏡手術が行われることがほとんどで、傷は小さく手術後の回復も早いです。
予防
副腎腫瘍に対する予防法は現時点で見つかっていません。
副腎腫瘍は放置していると高血圧や糖尿病などを引き起こし、心臓や脳、腎臓などの命に関わる臓器に悪影響を及ぼす可能性があります。早期発見のために、日頃から自分の健康状態に目を向け、定期的に健康診断や人間ドックを受けることが大切です。
また、副腎腫瘍の種類によっては再発することもあるので、医師の指示どおりに通院するようにしましょう。
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