概要
亜急性皮膚エリテマトーデスは、日光が当たる皮膚を中心に環状の赤い皮疹や、真皮が炎症して表皮の角質層が厚く硬くなる角化性紅斑様がみられる病気です。
治療はステロイドなどの塗り薬や、内服薬(抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンや少量のステロイド)による薬物療法が主体となります。亜急性皮膚エリテマトーデスは一度治っても再発を繰り返すこともあり、日常生活における対策では遮光がもっとも大事といわれています。また、この皮疹がみられる患者の40~60%は全身性エリテマトーデス*の基準を満たすことから、全身性エリテマトーデスの部分症状であることもあります。この場合は、全身性エリテマトーデスの重症度に応じた全身療法が必要となります。
*全身性エリテマトーデス:自己免疫が発症に関わる病気で、全身症状、皮膚症状、内臓の症状などさまざまな炎症の症状が現れる。
原因
亜急性皮膚エリテマトーデスの発症原因は現在解明されていません。
しかし、免疫のはたらきに異常が生じることで自分自身の体を攻撃する病気であることが分かっており、何らかの遺伝的な要因や環境的な要因によって引き起こされると推測されています。
そのほか、光線過敏症(日光過敏症)がみられることが多く、日光が当たる部位を中心に皮疹が生じることも分かっています。
症状
亜急性皮膚エリテマトーデスでは、日光に当たる部位に皮疹が発生します。皮疹は中心部の色が薄く周囲が円形状に赤くなるものと、皮膚が小さく盛り上がって角質が剥がれ落ちていくものが多く、それぞれ“環状連圏状型”と“丘疹落屑型”と呼ばれます。
塗り薬や内服薬による治療効果が高く、皮疹は傷のような跡を残すことなく治るケースが多いものの、炎症後の皮膚色素沈着または色素が失われる色素脱失が生じることもあります。また、治療によって改善しても再発しやすいといわれています。
そのほか、軽度な筋痛や関節炎、腎機能障害などが生じることもあります。
検査・診断
亜急性皮膚エリテマトーデスが疑われるときは以下のような検査が行われます。
血液検査
亜急性皮膚エリテマトーデスを発症すると、60~80%で抗核抗体、70~90%で抗SS-A抗体、30~50%で抗SS-B抗体と呼ばれる自己抗体(自分の体を攻撃するタンパク質)が現れるとされています。そのため、診断にはこれらの抗体の有無を調べるために血液検査が必要です。
皮膚生検
亜急性皮膚エリテマトーデスによって引き起こされる皮疹は、乾癬やシェーグレン症候群*など、ほかの皮膚の病気と皮膚症状が似ているケースも多々あります。正確に診断するため、皮膚生検(皮疹の組織を採取して顕微鏡で詳しく観察する)を行います。
また、皮膚組織に抗体などが沈着しているかどうかを確認するループスバンドテストが鑑別に役立ちます。
*シェーグレン症候群:自己免疫が発症に関わる病気で、免疫が涙腺や唾液腺を攻撃してしまうことが特徴。
光線照射試験
光線照射試験(光線テスト)を行うことが重要です。これにより紫外線に過敏に反応するかどうかを調べることができます。
治療
ステロイドやタクロリムスの塗り薬、ステロイドの少量内服や抗マラリア薬による薬物療法が主体となります。多くの場合、再発を繰り返すため注意が必要です。
皮疹は、傷のような痕を残すことなく治ることが多いといわれています。一方で、炎症後の皮膚色素沈着、または反対に色素が失われる色素脱失が生じることもあります。
予防
亜急性皮膚エリテマトーデスの明確な発症メカニズムは分かっていないため、確立した予防方法はありません。日光に当たることで症状が悪化することが知られているため、亜急性皮膚エリテマトーデスを発症した場合は、肌の露出を減らす、日焼け止めを使用するなどして、日光の刺激を最小限に抑えることが大切です。
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