概要
亜急性皮膚エリテマトーデスとは、全身性エリテマトーデスの一亜型(派生タイプ)で、首、肩、上背部、上腕伸側など日光にさらされた部位に環状連圏状紅斑や丘疹鱗屑状皮疹として出現します。
全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群と診断可能な患者さんに出現することもありますが、典型的な全身性エリテマトーデスと比べると臓器障害はあっても比較的軽度にとどまるとされています。
日光に当たると皮膚症状が増悪する特徴があるため、日焼けどめの使用や長袖長ズボン着用などの紫外線対策が重要です。また、特定の薬剤の使用により増悪することもあるため注意が必要です。
原因
亜急性皮膚エリテマトーデスの発症は人種差が大きく、白人にその頻度が高いことから、遺伝的背景が発症に関与していると想定されています。なかでも白血球の血液型ともいえるヒトの組織適合性抗原であるヒト白血球抗原(HLA)はさまざまな免疫疾患との関連が知られていますが、亜急性皮膚エリテマトーデスの場合はHLA-DR3との関連が報告されています。
また、免疫機能の一部を担う先天的補体第二成分(C2)欠損症との関連も指摘されています。さらに一部の亜急性皮膚エリテマトーデス患者ではシェーグレン症候群との関連が強い抗SS-A抗体が陽性を示すことから、外的な要因として日光の紫外線が皮膚細胞に作用して、細胞が障害される過程で自己免疫現象が誘発されるのではないか、という仮説が提唱されています。
また、特定の薬剤の服用が症状増悪に関与することが知られており、薬剤性ループスの一型とも考えられています。ある種の抗真菌薬、抗てんかん薬、胃酸を抑える胃薬の一つであるプロトンポンプ阻害薬、カルシウム拮抗薬などの降圧薬、そして関節リウマチ治療などに使うTNF阻害薬などが原因薬剤としてあげられており、抗SS-A抗体との関連が指摘されています。さらに、喫煙との関連も指摘されています。
症状
日に当りやすい部位に、対称性に皮疹が出現することが特徴です。皮疹は、中心部の色が薄くなる環状連圏状紅斑と、軽度の銀白色の白いフケのようなものの付着をともなう丘疹鱗屑状皮疹に大別されます。
全身性エリテマトーデスの亜型とも考えられていますが、皮膚以外の症状の関節痛や筋痛などが主体で、腎臓や中枢神経に臓器病変を来すこともあります。
検査・診断
亜急性皮膚エリテマトーデスは、特徴的な皮膚症状をもとにして診断されます。しかし抗SS-A抗体が陽性反応を示す特徴があるため、抗体値測定は必須といえます。少数とはいえ、典型的な全身性エリテマトーデスと同様に重篤化するケースもあるため、血液検査、尿検査など全身性エリテマトーデスに準じた臓器障害の評価も必要です。
症状と検査所見を合わせると、亜急性皮膚エリテマトーデスの患者の約半分は全身性エリテマトーデスの分類基準を満たすとされていますが、軽症で終わる例がほとんどです。皮膚症状は、乾癬や皮膚の悪性リンパ腫などと類似した外見を呈することもあるため、病変皮膚の一部を採取して顕微鏡による観察が必要になることもあります。
治療
亜急性皮膚エリテマトーデスでは、症状を悪化させないための対策が必要です。第一は日光の暴露を避けることで、す。一般的な紫外線対策として、日焼け止めを十分に使用する、屋外での活動を控える、長袖長ズボンを着用する、日傘や帽子を着用する、などがあります。
また、症状を悪化させる可能性がある薬剤の使用は避けます。皮膚科やリウマチ科などの医師の意見も交えて検討することも必要になります。喫煙との関連は指摘されているため、禁煙による治療的効果は実証されていないものの、喫煙を継続する必要はないものと考えられます。
皮膚症状の程度が強い場合には、ステロイド外用薬を使用します。免疫抑制薬のタクロリムス軟膏もしばしば使用され、特に顔の皮疹に対してはステロイドより繁用されます。内服薬は2015年にヒドロキシクロロキン使用が承認されました。
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