概要
ぶどう膜炎とは眼の中に炎症を起こす病気のことです。仮面ぶどう膜炎とは、このぶどう膜炎に見られるような症状(かすみ目や視力低下)を起こし、診察すると一見ぶどう膜炎のような炎症があるように見えます。しかし、実は眼の腫瘍が原因の病気です。代表的なものは悪性リンパ腫という白血球の一種であるリンパ球が腫瘍化した病気です。眼内悪性リンパ腫はしばしば眼の中以外にも転移します。特に頭蓋内に転移することが多いため生命予後が悪い病気です。
そのほか、仮面ぶどう膜炎を起こすものとしては悪性黒色腫や他の臓器にできた悪性腫瘍の眼内への転移があります(肺がんなど)。眼内悪性リンパ腫は、2009年の調査ではぶどう膜炎全体の2.5%を占めていると言われており、決して珍しい病気ではありません。
原因
仮面ぶどう膜炎の代表的な原因として悪性リンパ腫が挙げられます。悪性リンパ腫は、血液や体の組織を循環して、体外からの細菌やウイルスの感染を防御するリンパ球という細胞が、がん化した病気です。リンパ腫は頚部、腋下、鼠径などのリンパ節(リンパ球が集まるところ)にできることが多いのですが、全身いずれの場所にも病気が起こる可能性があります。眼の中に発生した場合は、ぶどう膜炎と同じような症状を起こします。好発年齢は60歳前後といわれています。
症状
眼内悪性リンパ腫はぶどう膜炎に類似したさまざまな病型をとるため、症状も多彩です。初期の症状は、霞みを訴えることが多くみられます。さらに進行すると目の前に小さなゴミのようなものが見える症状(飛蚊症)が出てくることがあります。病変の部位と広がり方によっては著しい視力障害や視野障害が起こることもあります。病変が出るのは両眼のことも片眼のこともあります。また一般的な非感染性のぶどう膜炎に有効なステロイドの点眼薬やステロイド内服薬の効果がないのもこの病気の特徴です。
検査・診断
眼内悪性リンパ腫と確実に診断をつけるためには、生検といって眼の中の病変部(硝子体という眼内のゼリー状の物質をとることが多いです)をとり顕微鏡で調べる検査を行う必要があります。眼内からとることのできる組織量は限られているので顕微鏡的に診断がつかない場合もあり、リンパ腫に特徴的な遺伝子変化を検出する方法(ポリメーラーゼ連鎖反応)も非常に有用です。
また、眼内リンパ腫では硝子体の特定のタンパク質濃度(インターロイキン10)が高く出ていることが多いため、その濃度測定を行うこともあります。眼内悪性リンパ腫と診断された場合はさらに全身検査が必要になります。脳内をはじめ中枢神経にリンパ腫を併発していることがあるためです。眼以外にリンパ腫があると生命予後に関わり治療方法が異なるため、頭部MRI(核磁気共鳴画像法)や全身PET(陽電子放射断層影)検査を行い眼内以外にリンパ腫があるかどうか検査します。
治療
悪性リンパ腫の治療は化学療法と放射線療法を併用します。悪性リンパ腫の病型と全身にどれだけ広がっているかで治療法も異なります。眼内悪性リンパ腫と診断されたら上述のように全身検査を行い、治療方針は血液内科の先生が主体になって行ってもらいます。眼科的には眼内に直接メトトレキサートという抗がん剤を注射することがあります。この注射で眼内のリンパ腫は短期的にみると劇的によくなることが多いのですが、根本的な治療ではありません。
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